第60話
夜が更けてきた。
今夜もまた、ジョシュアはなかなか帰ってこない。
ミオは怒られるのを承知で、街の入り口まで出かける。
「君は、本当にもう」
オアシスから戻ってきたジョシュアが、街の入り口で待つミオを見て、北斗星号から飛び降りる。
今日もすぐに砂漠キツネを見ることができ、もう一か所オアシスを回ってきたので、遅くなってしまったらしい。
やはり、昨晩と同じで、なんとなくジョジュアの表情が浮かない。
「この少年は、もう従者の域を超えているな」と青いサイティを着た案内人が呟き、二人を置いて去って行く。
ミオは、ジョシュアに胸にきつく抱きしめられた。
「部屋で待っていろと言ったよね?」
と熱の籠った声で言われ、表情が浮かない理由を聞くタイミングをまた失った。
「お帰りが、待ちきれなかったんです。……体調は……良くなりましたから」
ジョシュアは、ミオの顔を覗きこみ、口元に笑みを浮かべる。
いつもは饒舌なのに、今に限っては何も言ってくれない。
北斗星号を宿の厩舎に預けると、ジョシュアは先に部屋に戻るように言った。
落ち着かない思いで、ミオは一人部屋の中をうろうろする。
中庭で水を浴びたジョシュアが部屋に戻ってきて、トランクの中から、ドロップの缶を取り出すように言った。
「好きな味を選んでいいよ」
紫色のドロップを選んで、手のひらの上に置いた。
「これ、罰ですか?俺が言いつけを守らず部屋を出たから」
「いいや。可愛く僕を煽った仕返し、かな?」
ドロップを口に含まされたと同時に口づけが始まった。
最初、様子を伺うかのような控えめな口づけだったが、やがて熱を帯び始めた。
緩んだ口の端から甘い唾液が流れていく。
薄く目を開くと、ジョシュアがじっとミオを見ている。
「ん……っん……ああっ」
感じている顔を見られていたことに強烈な羞恥が生まれ、鼻から息が漏れる。
ドロップがどんどん溶けていき形が無くなったころ、互いの息はすっかり甘くなっていた。
膝から力が抜け、床に座り込みそうになる。
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