第58話

 ミオはブランケットを握りしめた。


 先のことなど知れている。過酷な肉体労働する奴隷は普通の人より命が短い。それ以上に『白』は短命だ。ジョジュアとの関係が進んだところで、それは変わらない。


 やがて、脳裏に浮かんだのは、サライエの海辺にある土産物屋だった。


「俺、装飾品になりたいです」


 ジョシュアの首にぶら下がりたい。


 あと何日続くのかまだ分からないが、この旅はいずれ終わる。


 そして、別れの日がやってくる。


首に下げる装飾品ぐらい小さくなれれば、ずっと彼の傍にいられる。


「装飾品?何を言っているんだい?」


 食料を並べ終わったジョシュアは、「ミオさんには、してもらわなければならないことがあるのに」と言いながら、ブランケットの下に手を滑りこませ、さらにはその下のミオの夜着を捲った。


 ジョシュアの指は、ミオのつま先から脛、そして腿へと向かっていく。


 内股の柔らかい部分を擦られた。


「え?……ん。あの、何ですか?」


 くすぐったさと、気持ちよさと、恥ずかしさが、同時にミオを襲って来る。


「ちょっとずつでいいんだ。関係を進めていきたい。つまり、抱擁や口づけの次の段階」


「はい??」


 声を裏返すと、ジョジュアがいたずらっぽい笑みを見せた。


「その行為は、体力を使う。体調は万全にしておいてもらわないと困るんだよ」


 股の付け根まで侵入していたジョシュアの手は、ミオが反射的に足を閉じると、すっと抜かれた。


 軽く頭を撫でられ、「だから、僕が用意した食材を食べもう一眠りして。中途半端な回復で仕事をしようとするなら、僕との関係を進めたくないんだとみなすよ。じゃあ、行ってくる」

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