第45話
結局、ミオもジョシュアも一歩も引かず、きっちり半分ずつ受け取るということで話がついた。それでも、目の回る金額だ。数年、何もせずに暮らしていける。買おうと思ったらラクダだって買えてしまう。
「分配も終わったし、砂漠キツネを見に行くとしよう。ミオさんは、用事は終わったの?」
聞かれて、曖昧に頷く。
ジョシュアが旅の準備を始めたのでミオもそれに倣う。
だが、床に座って荷物を掻き分けているだけで頭がガンガンした。自分の荷物を探って革袋を取り出すと、滋養剤を口に含んだ。すぐには効かないだろうが、飲まないよりましだ。
飲んだことで安心したのか、眩暈に耐え切れずミオは荷物に突っ伏した。音を聞きつけたジョシュアが駆けつけてきて、すぐさまミオの首筋を触る。
「すごく熱い。もしかして、ずっと我慢していた?とりあえず横になって」
抱きかかえようとするジョシュアに、ミオは革の小袋を見せた。
「これを飲みました。少したったら効いてきますから、大丈夫です」
ジョシュアは小袋の中身を取り出して匂いを嗅ぎ、一粒をぺろっと舐め、すぐに眉間に皺を寄せる。
「奴隷が飲む滋養剤です。今の店主はとても良い人で、奴隷全員にこれを配ってくれるんです」
「今後、飲むのは止めた方がいい。いい品ではなさそうだ」
「それでは、旅が出来なくなってしまいます」
「僕は、君に無理をさせたくないんだよ」
「すぐによくなりますから。なので……」
そこで、ミオの言葉は止まってしまった。ジョシュアがミオを寝台に寝かせると、手を取り甲に口づけたのだ。
「ミオさん。どうか、自分の身体を大事に」
ジョシュアの息がかかって、ミオの手がぴくぴくと動いた。
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