第38話
「……行ってらっしゃいませ」
この店で朝食を食べようと言ったジョシュアに向かって、ミオは答えた。
「行ってらっしゃいませって、君も行くんだよ」
「奴隷は、食事処の店には入れません」
ジョシュアの顔がまともに見れなく、鎖骨に顎をめり込ませて言う。
「さっきのこと怒ってる?」
「怒ってません。あれは、俺への罰ですから」
ミオは顔をあげないまま唇を押え、真っ赤になる。
「そう、よかった。なら、僕と一緒に朝ごはんを食べて」
「ですから、俺、奴隷ですので」
「隠してしまえばいい。ここ」
顔をあげると、ジョシュアが自分の額を指で突く仕草をする。
「奴隷は、印が見えるようターバンを巻かないと殺されても文句は言えません」
「そのときは、僕が必ず守るよ」
食事処が並んだ大通りから小道へと、ミオの手を引いてジョシュアが入っていく。そして人通りのない場所までくると、ミオのターバンを取った。
コンプレックスの真っ白な髪が零れる。
ターバンは太陽の光から頭を守るために巻くものだが、真っ白な髪が恥ずかしいミオは屋内にいても眠るとき以外は巻いている。
「やめてくださいっ。ジョシュア様、返して」
「僕のいいようにさせてくれるならね」
ジョシュアは、奪い取ったミオのターバンを頭上に掲げ、ヒラヒラと振った。
「やだ。人に見られるっ。早く!!早く返してください」
「それは、承諾ということでいいね?」
パニックに陥ったミオは、意味も考えずに頷いた。
額の印を隠すように、クルクルとターバンを巻かれていく。
「これで、異国の人間が二人ではしゃいでターバンをつけているようにしか見えない」
ジョシュアにそう言われ、触って確かめると、ターバンはいつもとは違う巻き方だった。
ターバンにも決まりがある。部族によって色が違い、身分によって巻き方が違う。巻かれたのは貴族の巻き方でジョシュアのと同じだった。
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