第33話

 朝早くオアシスを経った二人は、テーベの街に朝食の時間に着くことができた。北斗星号の背から降りたジョシュアは、ミオの隣りに並び、街の入り口からずらりと並ぶ市場を眺める。


「これは、想像以上だ」


 テーベの街は、阿刺伯国を流れる大河の下流に発達した大きな街で、北西にある王都で取れた食物や工芸品などが運ばれてくる。逆に、別の街の商人がそこでしか取れない品を持って来て売ったりしているので、交易が盛んだ。


 そして、現在は異国の商人も出入りしており、さまざまな言葉が入り乱れている。たった四年で変化が著しい街の一つだ。


 市場には、たくさんの人が行きかっていた。欧羅巴の旅人の姿も多い。テーベの街は、他の街に行くための中継地点になっているというのもあるが、大方は新王の結婚式を見るためにやってきた人たちだろう。だとすれば、今後は、結婚式に間に合うようテーベの街からどんどん北上していく。


 『白の人』一行は、もうテーべの街を離れ次に街に向かっているはずだが、それでも人は呆れるほど多い。


「変わった匂いがするな」


 ジョシュアが、干したイチジクやシナモンの小枝が吊るされている店を覗き込む。その隣には花屋があって、向かい側には毛をむしられた鳥が吊るされている。


「お、俺、……宿を探してきます。しばらく市場の見学などで、お楽しみください」


 ミオは、ジョシュアの傍を離れようとした。


 昨夜から、どうしても彼を意識してしまう。 


 旅の旦那様と口づけを交わすなど、最下層奴隷で『白』の自分の身にありえないことが起った。

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