第29話
ミオは、ジョシュアが水脈を探しているのではと考えた。
阿刺伯国ではカナート造りは黒いサイティを身につけた人間がほぼ独占している。彼らは黒の部族と呼ばれて、カナート工事を依頼すると高い値段をふっかけてくるので、なかなか阿刺伯国に水が行き渡らないのが現状だ。
四年前に欧羅巴に国の門を開いた革新的な王が、今度はカナートの最新技術を英国から取り入れようとしているのではと思ったのだ。
だが「仕事?どうだろうね」と、ジョシュアはそっけない。
「手に黒い水が付いてしまって匂いが取れない。少し酔ってしまったらしいから、水を浴びるとするよ」
ジョシュアは天幕を張った場所まで戻ると、黒い水の匂いが染みついたサイティを脱いでオアシスに向かった。
寝間着とタオルを準備し、ミオは浜辺で待つ。トランクから出しておいてといわれたタオルは、涼し気な花の香りがしない。
水浴びを終えたジョシュアは、ミオにタオルで拭かれるままじっとしていた。表情が浮かない。
ジョシュアの腰にタオルをきゅっと巻き付け、ミオは言った。
「何かお辛いことが?こんな俺ですが、お役に立てますか?」
「優しい子だね。そんなことを言われたら、僕は遠慮がなくなってしまうよ」
「何なりとお申し付けください!!」
するとジョシュアは手で口を覆い、ミオから視線をそらした。
「……を、……だろうか?」
「え?申し訳ありません。聞こえませんでした」
視線の先に回り込むと、ジョシュアはますます顔を反らす。
「ジョシュア様。何なりと」
「じゃあ、ハグを……求めてもいいだろうか」
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