ストーリー

 あなたの書く小説は、美しいとすら呼べるほどの完全な法則性に従って崩壊し、最後まで書き上げられることはない。


 なぜだろう?

 それはストーリーが無いからだ。


 あなたの小説にあるのは、空虚な舞台と、そこに蠢く数人の登場人物だけである。ストーリーが不在なのだ。ただ、いくつかのイベントが白々しく起こるだけ。もちろん小説を書いている最中はストーリーがあると思い込んでいるのだが、よくよく読み返してみると無い。無いからこそ――矢のようにまっすぐに世界を貫くストーリーが無いからこそ、だんだんとあなたの小説は行き詰まり、ゆるやかに崩壊してゆき、ついには一字も書けなくなってしまう。


 この解決策はひとつしかない。

 ストーリーを描けるようになることだ。ストーリーを描けるようになるべく、あなたの創作活動における『テーマ』を模索しなければならない。


 しかし、とあなたは思う。


「しかし、テーマとかストーリー性というやつは、絶対に不可欠なものなのだろうか?」


 逆に言えば、テーマがなくてストーリー性もない――ただ舞台と登場人物だけがそこに在るだけの――小説を成立させることはできないのだろうか。





 膨大な創作メモを見つめながら、あなたは今日も時間を空費している。


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