第331話 ドラパレ攻略⑦

 

 ワニのお腹から強制的に出される瞬間、私の脳裏に嫌な映像が流れる。

 だが、そこは流石ゲームと言うべきか、きちんと六階層の入り口へ飛ばされた。

 

 そのことにホッと息を吐く間もなく、私たちはドラゴンとワイバーンの中間の竜種ドーラフィールからの攻撃を受けピンチを迎えていた。


「バフ」

「雷で頼む」


 バフを回す中黒が雷を要求するのに答え、前衛にインヴィスはカリエンテ、ソウルはトニトゥールス、プロテクはウラガーンを付与。

 魔法職にはインヴィスはカリエンテ、ソウルはクラリタス、プロテクはウラガーンを。

 自分にも同じバフを入れておく。

 

「ぐあぁ、かてぇ」

 

 チカは回復なのに何故突っ込むのか……。

 いつものことながらこの疑問? 難問? は一生消えそうにない。


「チカ! お前回復優先しろよー」

「僕死んじゃうwww」

「ぎゃー痛いー」

「チカ、回復するでしゅよ!!」


 私たちのかりふうめいは、相変わらずぎゃぁぎゃぁとうるさい。けれど、逆にこれぐらいうるさい方が楽しいと私は思う。


 ドーラフィールが、首をもたげ大和に噛みつき攻撃を繰り出しながら尻尾を振り回す。

 その攻撃を受け、背後からのクリティカルを狙っていた宗乃助、春日丸、ミツルギが吹っ飛ばされた。


 壁にめり込むほどの威力があるのかと思う一方で、人数の割に戦う場所が、狭すぎる! もう少し開けたところまで引ければと焦る。

 

 私は辺りを見回し、場所を探す。

 けれど、私から見える範囲全てが切り立った崖に囲まれている。ここは、どうやら中腹らしき場所であり、どちらを向いても人一人がギリギリ通れるほどの細い道しかない。

 

 参った……人の多さがここに来て仇になるなんて……。まだ範囲攻撃は起きてないけど、いずれ範囲がくれば後衛も巻き込まれるだろう。

 どうにか広い場所をさがさないと……。


『宗乃助、ミツルギ後方待機で!』

『回復のMP五割』


 吹っ飛ばされた二人のHP残量は四割。回復POTを使っているが、紙装甲故にまたすぐに減るのは目に見えている。それを見咎めた宮ネェによって、待機が命じられた。


 このままじゃジリ貧も良いところだ。せめてもう少し拾い場所を……あ、いいとこに探索いけるのいるじゃん!!


「宗之助とミツルギは、周辺探索よろ」

「周辺でござるか??」

「広い場所に移動したい。ここじゃ、後衛にも攻撃当たりかねない」

「承知」

「ういっす」


 バフを回してる私が動けない以上、誰かが探索するしかない。それならちょうどいい二人を出そうと考えた私は、二人に周辺を見て回って貰うことにした。

 走り去る二人を見送り、再び個人バフを回す。


 宮ネェと小春ちゃんのMPがきつそうだと、黒たちの足元に濃縮のHP回復POTを置く。

 中ボスかもしれないドーラフィールは、その間にも十五メートル前後もある羽をバタバタと動かし続ける。


「こいつ見たことあると思ったら、俺が初日殺された奴だわー」

「あー、どっかで見たことあると思ったら俺も死んだ奴だw」

「あんたたち……なんで、初日に六階まで登ったの?」

「いや、ちげーよw」

「鉄男のせいww」

「ちょ、俺のせいにするのやめろ?w 入口教えただけじゃん」


 入口?? 亀以外に入口があるのかと私は、会話に聞き耳を立てる。


 鉄男たちの会話から、入口のおおよその見当がつく。

 鉄男が知っていた入口は、ランペティエから亀に向かう道すがら小さな祠があること。

 祠には小さなハープが置かれていて、それに触れ音を出すことで六階層へ直通で飛ばされてしまうとのことだった。

 祠は、カリエンテの時の鍵を使った場所と同じ設定なのだろう。

 

 流石にここにソロでくれば私すら死ねる。

 それは置いておいて、もしかしなくても今戦っているドーラフィールはカリエンテのガーゴイル的な存在なのでは……。


 そこまで考えてドーラフィールのHPを見ればミリも減っていない。全員のMPが三割を切っているのにだ。


「……あぁ、無理かも」

「どうした?」

「先生。これ多分、ガーゴイルと同じ」

「ガーゴイル??」

「げっ! カリエンテのとこのガーゴイルか!!」

「そう」

「うへぇ」

「帰ろうか……」

『宗之助、ミツルギ戻って』

「どうやって帰るんだ?」


 嫌な予想が当たってしまったと周りの名前を確認する。

 赤ネームは今のところいないためデスペナを受けても大丈夫だと判断を下す。

 私と同じように皆の名前を確認していた先生と眼が合い、互いにそれしかないと頷き合った。


「死に戻ろうか」

「流石にセーフティーなさそうだしな」

「仕方ないな」

『戻ったでござる』

『戻りました』

「うんじゃ、死に戻りで~」

「了解~」


 ドーラフィールの尻尾が振り回され、メンバーたちが全員薙ぎ払われる。壁にぶち当たりHPを減らしていく中、私もドーラフィールの尻尾攻撃を食らい弾き飛ばされた。

 一気に減っていくHPを目の当たりにしながら、次に会ったら絶対倒すと心に決めてもう一度と立ち上がる。

 次第に人数が減っていく。

 最後に残ったのはロゼと私だけだった――。


 うっすらとドーラフィールの雄たけびが聞こえ、視界が暗転する。

 久しぶりに死に戻りを経験したと心のどころかで悔しく思いながら、私たちのドラパレ攻略は終わりを迎えた。

 

 ふと意識が浮上する。

 瞼を瞬かせ、天井を見上げれば外観は、見慣れたヘラの神殿だ。


 死に戻ったにもかかわらず呑気に天井に壁画なんかあったんだなーと感想を抱いた私は、とりあえず起き上がるべく身体を起こした。

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