第261話 最強は城主を目指す⑮
見える視界の外枠と言えばいいのか、周囲が赤い警戒色に染まりフラグベースのダメージと攻撃した者の名前がデカデカと表示されている。
クラメンたちが移動するために置いた森のフラグベースが攻撃を受けている表示なのだが、常に点滅するから少しうざったい。
『「SG、二丁目、アース移動済んだら教えて。うちのメンバー派遣する。ren、そっちに宗之助達遊撃とばす」』
(宮様) 残り3割よ~
(ロゼ) フラグB場所着。
白影、来ない奴は切り捨てろ。
(小春ちゃん) 着いたわよ~ん。松雪嬢どうなの~ん?
(ren) k。こっち跳ぶ人、迎え行くまでフラグベースから出ないように。
(白影) 分かった。以降移動する奴には、フラグBに飛ぶように指示する。
(雪継) 俺も着いた~。
(松雪) 全員移動完了しましたわ。オネエ様。
これよりフラグベース破壊をお願いしますわ。
(宮様) 皆、二丁目のやって頂戴。
副マスたちはそれぞれにチャットを使い分けながら指示を飛ばしているらしく、同盟チャットへの返事が少し間を開け返ってきていた。
【 クラン Bloodthirsty Fairy のフラグベースが破壊されました。 】
ブラグベースが破壊されたシステムログが、視界いっぱいに表示された。その表示が消えるよりも早く、取り出した新しいフラグベースを前回と同じ場所に展開させる。
(松雪) 残り2割ですわ。
(ren) BFフラグ立った。
遊撃移動してトランスパレンシー入れる。
(宗乃助) 飛ぶでござる。
チャットが見えたタイミングで、宗乃助、風牙、ミツルギさん、春日丸がフラグベース内に姿を見せた。
私がトランスパレンシーとバフを入れると四人はその場を走り去り散開。残った私は次に移動できるはずの小春ちゃんの元へ一人向かった。
ぽたりぽたりと水音の上がる排水路を北に向かって進み、右へ二回曲がる。すると苔の生えた井戸の底らしき場所に出れば、水色に白のフリルの付いたミニスカメイド姿の小春ちゃんがポツンと佇んでいた。
『お待たせ』
『あらん、renの所はもう終わったのね〜ん』
『うん。ここで待機は何人?』
『とりあえず各クラン2人ずつ配置するからワンパーティーになるわねん』
『わかった』
各クランのフラグベースに二人ずつ配置してくれるつもりらしい小春ちゃんに感謝しつつ、森の方が破壊されるのを待つ。
その間に、先生と内部に侵入した後のリーダー決めと班分けを確認、相談しておいた。
(松雪) オネエ様、破壊されましたわ。
(小春ちゃん) えぇ、確認したわ〜ん。
『「アースとSGのフラグベース破壊して、これ以上待つ時間が惜しい」』
(宮様) わかったわ。
(松雪) 微力ながらお手伝いいたしますわ。
フラグベースを立て終えた小春ちゃんに、フラグベース内へ入る許可を貰い中へ入る。そこには既に、移動してきたらしいプレイヤーたちがいた。
今回選ばれたメンバーは、八人とも二次職の装備ながら、その名を一度は聞いたことがある職人たちだ。
軽く自己紹介をして貰い、トランスパレンシーを追加すると二人を残してうちのフラグベースへと移動する。二分かからず到着したフラグベースでうちの担当をしてくれる二人に立ち入り許可を出した。
その二人を残し今度はアースのフラグベースへ向かう。そうして、全てのフラグベースを回り元の四人に戻ったところで、偵察に向かっていた宗乃助たちと合流する。
(ren) PT解散するからマスター拾って
『「バフ確認。PTごとにまとまって移動開始。クラマスが所属する予定のPTはクラマス拾って」』
(白影) 了解
(千桜) 了解だわいね
(松雪) 畏まりましたわ
同盟チャットを確認してPTを解散する。間をおかずPT勧誘がさゆたんから届きPTへ入った。今回はどうやら遠距離支援に回れと言うことらしい。
バフを入れ直し宗乃助を先頭にして警戒しながら排水路を進む。マップを見ても相手はまだ配置についていないのか、敵を示す点すら無い。
あの騒がしいキヨシと博士がいるPTに参加したはずなのにPTチャットは静かで……。流石に今回はみんなも真面目に進軍してるんだな~。なんて感心していた。。
それなのに! 先生に呼ばれクラチャを開けば……初っ端にキヨシの「会社の帰りにトイレに行ったら、ノックされて入ってます~って返したんだよ~」と言う話から、何故か相手が本物の同性愛者で、ホテルに誘われた。という話が視界に飛び込んで来る。
そんなキヨシにチカがノリノリで「脱処女、おめ〜。気持ちよかった?」と聞き、博士が回りくどい言い回しで局部ついての話とヤリ方の説明していた。そこから更に会話がカオスになって行く。その会話の合間合間で先生と二人真面目な話をする私のみになって欲しかった。
博士が何故知っているのか、知りたいような知りたく無いような……ってそうじゃない。なんで戦場でその話題を選んだの? キヨシ。そんなに身内を疲れさせて楽しいか?
『はぁ〜』
『どうした?』
怒りの余り思わず大きなため息が出てしまう。大きすぎてPTチャットに表示されてしまったが、致し方ない。どうかみんながスルーしてくれますように。
なんて思ったのも束の間、ロゼが速度を落として、横に並ぶと深刻そうに『何かあったか?』と聞いてくる。
そのせいで全員の足が止まり、視線が私に集まった。
いや、ただ落胆して怒ってるだけで深刻なことでもなんでも無いよ。そう言いたいが理由を聞かれては困る。
戦場でこんな会話が繰り返されていただけだなんて軽く言える内容じゃないし、私に言葉で言いたくない! 何で私はこんなことで悩まないといけないんだろう? これも全てキヨシとチカと博士のせいだ……後で巻き込んで殺そう。
溜まった鬱憤を晴らすように脳内で八つ当たりした私は溜飲をさげつつ『いや、うちはうちだなって思っただけ』と言葉を濁す。
そんな私の言葉にいち早く反応したのはやはりクラメンたちで、宗乃助が壁に激突、ミツルギさんが乾いた笑いをあげ、風牙が肩を揺らした。
そして、春日丸だけが『理由は聞いてやるな』と私を庇ってくれた。
『「全軍盾を先頭に突入準備、殿は近接ーー暗殺者と弓で対応すること。カウント!」』
緊迫した先生が声を張りあげ、指示を出す。
カウントが5秒前から始まり、数字が小さくなっていく。0の代わりに「全軍突入」と言う言葉が指揮チャットに表示される変と同時に怒号が響いた。
地下にいてもわかるほどの声をあげて、先生たちが外城門に突入をかける。
予想よりも早い突入に地下排水路を移動中の私たちの方が焦りを感じた。
『急ぐでござるよ』
宗乃助に頷き、小走りに排水路を駆け抜ける。怒号が聞こえて五分、排水路入口を混乱に乗じて這い出た私たちは、本体と合流した。
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