第208話 最強はアップデートを楽しむ㉚
白影の方の雑魚モブの処理が終わり、蛇へ再びの総攻撃を仕掛けていた。
蛇の毒の解除は…………まぁ、何とか出来ているようだ。黒のタゲもしっかりしてるし、大丈夫そう。
MPは全体で六割、結構今ので減ったようだが氷と聖のソウルが入っているためそのうち回復するだろう。などと、攻撃を仕掛けるボス回りの近接ATKの群れを見ながら周囲の状況を確認した。
これなら、私も攻撃に加わっていいかもしれない。なんて事を考えながらボスに向かおうと一歩踏み出した時――。
なんと、ボスが予想外の行動に出る。
それまで大人しく――はないけど、ある程度通常通りの攻撃行動を――していたボスが、周囲にジャンプで飛び回りプレイヤーを狙い始めたのだ。狙われたプレイヤーは、周囲の近接ATKや回復、遠距離職などで本当にランダムで攻撃を加えていない者も狙われている。ボスに狙われたプレイヤーは、何もできずその場でサンドバックになりHPを削られていた。
うちからは宮ネェ、キヨシ、聖劉が犠牲になり二枚しかいない回復が一枚になってしまう。
[[ren] 宮ネェ、起こす]
[[宮様] ごめん。お願いするわ]
[[キヨシ] 俺も起こして~]
[[大次郎先生] こんな攻撃あった?]
[[黒龍] やべぇ、タゲとれねぇ~無理だ]
[[聖劉] ちょ、一撃はそうでもないけどあの速度で連打されると
流石に無理ww]
[[ren] 復活スクだけどいいの?]
[[ベルゼ] 拳かぁ! 俺に張り合うの? 俺負けない……っ]
[[キヨシ] いい]
[[聖劉] アカネじゃないし問題ない]
急いで宮ネェに復活のスクロールを使い起こす。この復活のスクロールは雑貨に一枚5000ゼルで売られているものだ。課金アイテムではないので経験値や装備に関しての保証はないが、町からここまで戻るよりは時間的にもメンバーの――主にチカのだが――精神的にも楽だろうと使った。
そんな思考を繰り返してキヨシ、聖劉を復活スクで起こしている間に、ベルゼがボスにタゲられる。
ボスと向き合い拳で語り合うベルゼ。その後ろで、チカが必死にベルゼへ回復を飛ばしている。その甲斐もなく、ベルゼが沈むかに思われた――その時、チカ懇親のフルヒールがベルゼを包む。
が、結局ベルゼは、ボスに攻撃に耐えきれず……
[[†元親†] ごめん。ベルゼェェェェ]
[[宮様] renバフいけるかしら?]
[[ベルゼ] これはチカのせいじゃない。俺が、クソ弱いだけだ]
[[ren] ベルゼ起こしたら入れる]
[[†元親†] ベルゼ、イケメン。惚れそうw]
決め顔――死ぬ間際に決めた顔――でそうカッコイイ事を言うベルゼに、チカがキュンキュンとハートを飛ばしている気がする…………あぁ、腐った世界だ。
決め顔のベルゼを起こすべきか一瞬だけ悩み、復活スクロールを取り出し「ベルゼ」と名を呼び放り投げた。
それからすぐさま起き上がったベルゼを目視して、PTバフの更新をかける。その後、個別のバフを死んだ各々に入れた。
ボスのタゲが定まらないせいか、それとも追尾しているだけか、アップデート前までのキマイラとは違う行動をするボスに対し全員が焦りの色を強くする。
ボスを追いスキル攻撃を繰り出す近接ATK達にまずは自分たちの行動がいかに危険か教えなければ、近接ATK達が動くたび鶏とヘビの攻撃の範囲内に回復職が入ってしまっている。
ヘビだけであれば残りHPから考えても、遠距離だけでも十分に削れる。それにボスのこの攻撃がいつまでも続くとは思えない。ならばタゲを貰った者が死に戻りで街に戻らない事――この場の人数をできるだけ減らさない事を優先するべきだ。
まずは周囲を落ち着かせることを最優先に考え、PTチャットに指示を出す。
『近接は無理に追わないで、それに釣られて回復が動くのもダメ。自分の立ち位置がボスの範囲に入ってるって気付いて!
遠距離職は、ヘビ優先で攻撃。
先生、復活スクの予備に確認して、出来る限りその場で復活させて。既に死に戻りしてる人は各クラン判断でよろ』
『わかった。全員renの指示通りに。ロゼ、小春、雪継は自分のクラメンの在庫と死に戻りの数、確認して』
『k』
[[ren] 先生、とりあえず死んだら復活スク使わせて
今、人数減るのは良くない気がする]
[[大次郎先生] わかった。ボスのランタゲについて
なんでもいいから気付いたことある人いる?]
『了解よ~ん』
『了解』
[[鉄男] ん~。はっきりと詳細は思い出せないけどどっかのweb記事で
キマイラのHP均等に減らさないとランタゲとか書いてあった
ただ、討伐はできてなかったけどw]
[[大次郎先生] ふむ。どうする? 切り替えてみるか?]
[[宮様] とりあえず蛇もう終わりそうだし、このままゴリ押しで
いいんじゃないかしら? 全滅したら、次それで
試してみるのはダメなの?]
[[黒龍] 今更変えたところで、均等は無理そうだなw]
[[大和] だね。装備の耐久とか考えるとこのままゴリ押しの方がいいと思う]
[[大次郎先生] わかった。このままゴリ押しで行こう]
[[ren] 宮ネェ、チカは、今の位置キープで
ボス追っていくバカは殺していい]
[[宮様] 了解よ]
[[シュタイン] そんなバカいるであるくぁあああああああ]
[[†元親†] わかったーw]
[[宗之助] 博士、南無南無-人-]
[[白聖] 博士……笑わせんな。草生えたわwww]
[[風牙] ヤベェ。ウケルw]
[[さゆたん] 博士起こすでしゅよwww]
PTチャットで全体に聞こえるよう指示を出し、先生に必要な分の確認を取ってもらう。死に戻りしてしまったメンツに関しては、各クランの判断に任せる旨を伝え指揮権を先生に戻した。
博士が成すすべなくボスの犠牲になったのは仕方がない……ってことにする。その死に方とタイミングが最高で、状況を顧みずつい笑ってしまった。
そんな博士がさゆたんに起こされるのと同時にバフを入れる。
何度も繰り返しバフを使う羽目になったためMPPOTを大量にガブ飲みしているが……このままではPOTがヤバイ。
『とりあえず、このまま遠距離中心で攻撃優先して、近接はできうる限りでいいから飛ばすスキル使って』
ゴリ押しが確定して、先生が再びの指示だしをしていた。
いずれこのままではMP的にジリ貧になる可能性が高い。私のPOTも無限ではないため余計に不安が押し寄せる。
何か方法はないかと周囲を探しボスを見るも何もない。これは摘みかな……若干諦め気味に、思考を切り替える。
不意に
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