第194話 最強はアップデートを楽しむ⑰
クランLvを上げる為に儀式に近いレイド討伐を近々やる事をクラメン達に伝えた。PKになる事はゼンさん、ヒガキさん以外の皆が既に承知の上だった事から説明は皆に任せる。やる事がなくなっや私は、クランハウス内のリビングでのんびり抹茶のラテを飲みながら鉄男が戻るのを待つことにした。
もう既に胃はタプタプ状態だ。三杯もの抹茶ラテを飲んでしまい、もう一杯に手をつければ確実にリバースする。なんてことを考えながら、キッチンで必死にコーヒーを量産するヒガキサンを眺めた。
丸顔の職人的な顔をした髭面の爺。羽織はかまに双剣を背に背負った姿で短い手足を動かす姿ななんとも本物のドワーフ職人のようだ。そう言えば、出会った時も新撰組の羽織はかまだった。まー土下座されたのはビックリしたけど、良い人で良かった。
[[ゼン] マスターいますか?]
[[鉄男] 戻ったぜ~w]
[[宮様] ちょっとキヨシ、それあんたの注文品じゃない!]
[[ミツルギ] 採取辛いっすww]
[[ベルゼ] ここらへんもかなり取れるよ、鋼]
[[ren] いる]
[[ティタ] おかえり。どうだった?]
[[キヨシ] え? これ俺のだよね?]
[[ゼン] えっと、ちょっと相談したい事があるんですけどいいですか?]
[[村雨] ミツルギ、ファイトー!]
[[鉄男] 分かったぞ! 2日後の22時32分前後に沸く]
[[黒龍] ゼンがrenに相談か~w]
[[宮様] 違う! それ注文品だから、あんたのまだ出来てないわ!]
[[ren] ハウスのリビングにいる。聞かれたくないなら部屋に戻る。
どうする?
鉄男、ありがとう。ついでに、ロゼと雪継、小春ちゃんに連絡しといて]
[[風牙] 2日後か!]
[[宗乃助] 黒やめるでござるよ。今週は先生が……居ないでござる]
[[聖劉] PK楽しみだねw]
[[ゼン] リビングで大丈夫です。すぐ行きます]
[[†元親†] 両手剣磨いとこw]
[[大和] はっちゃけ過ぎないようにねw]
[[白聖] ワリワリやろうぜw]
[[さゆたん] メテオぶちこむでしゅw]
鉄男から分かったと言う返事を貰い、ゼンさんにリビングで待つ事を伝える。相変わらずの混戦状態だ。ミツルギさんはどうやら自分で採取して、武器を作るつもりらしい。被らないといいな……。そして、その手伝いをさゆたん、ベルゼ、村雨あたりがやっているのだろう。
黒たちは多分狩り中だと思われる。何もしていない時よりも口数が少なく、文章が短いからそう思った。
二日後の夜十時半には七星竜が沸くようだ。気負い過ぎてLAを逃すなんてことが無いように注意しようと自分の中で自分に言い聞かせている間に、ゼンさんがリビングに顔を見せた。
「えっとですね。マスターの手持ちの魔法書があれば、その中で買えそうなものは買いたいと思って」
「あぁ! そう言う事」
「はい。ご迷惑じゃなければ売って頂きたいなと……」
「なるほどね。予算は?」
「とりあえず、150Mはあります!」
「わかった。倉庫に入ってる魔法書持ってくるから覚えてないのから選んで」
「はい」
そう告げて執事に向かう。
ゼンさんは三次職キヨシとさゆたんと同じ職したんだった。魔法書はかなり高価で手が出にくい物だけど、自分なりにお金を貯めたらしい。
けど、150Mじゃ、いいとこ三冊買えるかどうかだなぁ。クランの為でもあるし、ただで上げてもいいけどそれだと流石に甘やかしすぎって言われそう。魔法覚えた所で、魔法の強化もするだろうから、お金は絶対必要になる。
なら、少し安めの値段で売ることにしよう。
自分の中で結論がでたところで、ひとまず執事から三次職の魔法書を取り出す。
メテオ、アイスランス、フリーザー、リフレクション、サンダーストーム、、ブリザード、などなど20種ほどを倉庫からアイテムボックスに移した。
「おまたせ。とりあえず、机の上に全部出すから好きなの選んでw」
「はい」
そう言って魔法書をひとつずつ取り出した。全部机に並べ終える頃にはゼンさんの嬉々とした表情が引き攣り強張っていた。
「一応手持ちはこれで全部だね。足りないのがいくつかあるけど、そこは手に入ったらでいいかな?」
「い、い……はい」
何か言いかけ諦めたらしい彼が、机の上に置かれた魔法書を吟味し始める。その様子を眺めながら、相場を調べるため取引所を開いた。
立ち上がった長方形のウィンドウを覗き込み、有る程度の相場を頭に叩き込む。
今回出した魔法書は、ほぼほぼ50M~60M前後で取引されている。フリーザーとサンダーストームは少し値が上がり、70M代が目立つ。メテオに関しては、うち以外では雪継、小春ちゃん、あたりが売りに出すだけで他は見ないことから、1G~700Mと幅広く買い取り希望が出されていた。
メテオは、クラメンなら無料でいいだろう。クラハンで出たものだし、さゆたん、キヨシの二人にも無料で渡してある。そこを問題視するようなクラメンも居ないと思うし大丈夫なはず。
ある程度の情報が手に入り、取引所を閉じると同時に真剣に魔法書を選ぶゼンさんに話しかけた。
「ゼンさん。メテオは無料で持って行っていいよ」
「えっ! いいんですか?」
「うん。メテオはクラハンで出した物だから、キヨシやさゆたんから料金貰ってないからゼンさんも持って行っていい」
「うわー。ありがとうございます! 嬉しいです!」
三毛猫の耳がピクピク動きゼンさんがふわりと笑う。その表情はとても豊かで、つい頭を撫でてしまいそうになり、慌てて彼の前へメテオの魔法書を差し出した。
どうやら本当に嬉しかったらしく、魔法書を両手で受け取ると胸の前で抱きしめていた。その後、ゼンさんは三冊の魔法書を選んだ。
フリーザー、アイスランス、サンダーストームの魔法書が私の前に差し出される。
「これにしました。いくらですか?」
「PK仕様w」
「はい。キヨシ君とさゆたんさんに相談してたので……ヘヘ」
「なる。なら、クラメン価格で100M」
「や、安過ぎますよ!」
「後、これもおまけで付ける。余った分で魔法強化するなり装備強化するなりしたらいい。 ぶっちゃけ覚えるだけなら、ゼルさえあれば誰にでもできる」
「……アンディーシブ。ありがとうございます。絶対、役に立つように頑張ります!」
「うん。頑張って」
正直な話、魔法強化が一番しんどい。金銭面的にも精神的にも。最低でも+12以上じゃ無ければ対人では使えない。三次職カンストになって日が浅いゼンさんには、これから嫌というほど強化を頑張って貰うしかない。
今日はなんだかんだとヒガキさんとゼンさんをよく観察出来た気がする。クラメンになって結構立つのに、今更感半端ないけど……まぁ、良いか。
加入から二人の様子を見ていた私の個人的な感想としては、二人は自分に出来る事を一生懸命やろうとしてくれている。そんな二人だからこそ、クラメン達が協力する。
どこかほっこりした気分で、タプタプのお腹に飲みかけの抹茶ラテを流し込んだ。
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