第162話 最強は壊滅を齎す⑭

 ドン引きするロゼや周囲に、ニヤニヤ笑ったクラメン達が実に楽しそうな様子で悪ノリを始める。


『ここ程度なら、ren一人でも余裕で走って戻って来るでござるよ?w』

『だよなーw なんたって、善悪60Fのボスソロで食うしなーw』

『renちゃんほど、ソロ向きな子はいないでしゅよw』

『まぁ、renだしねw ロゼ心配要らないわよw』

『カリエンテもその内ソロで食うかもしれないw』

『マジで? 善悪ソロなのかよw』


 宗乃助の言葉を皮切りに、キヨシ・さゆたん・宮ネェ・シロが擁護? とは到底思えない言葉を次々言い始めロゼたちを更に引かせた。

 別に善悪のボスぐらいなら誰だってやり方次第では狩れるだろうに……。

 そう思いながら、行動を起こすべく立ち上がる。


 クラメン達が立ちあがり『行って来る』とロゼたちに伝え入り口に向かう。

 その道すがら雑魚が湧くかのでは? そう警戒していたのだが……一度倒してしまえば湧かないようだ。一度も雑魚にで会う事無く、入り口に到着した。 


[[ren] 雑魚湧かないみたいだし、暇なら戻っておいていい]

[[大次郎先生] とりあえず調べて来てw]

[[宮様] いってら~w]


 なんて会話をして、通常のログアウト出は無く緊急ログアウトボタンを押せば現実に戻った。

 ギアをつけたままパソコンの前まで移動して、さっそくウェブを開く。右端にある履歴からさっき調べたページを全て開き読み漁った。


 その結果、カリエンテのヒードン フレア バーストの魔法の効果範囲はカリエンテから約100Mぐらいで、から発生する。

 そして、カリエンテの瞳が変化してから発動まで5秒。使用後20秒は固まり動けなくなり、スキルディレイは5分だと予想されると書かれていた。


 きっとここまで調べるのに、このサイトの運営者並びに関係者たちはかなりの経験値を犠牲にしたことだろう。

 攻略に有用な情報を掲載してくれたサイトの運営者に感謝を覚えつつ、引っかかりを感じた魔法の効果範囲についての項目について考た。


 謎かけのようにカリエンテの身体と書かれている。

 そして、同じ場所に掲載されていた映像を見る限りカリエンテはこの魔法を使う際、微動だにしていない。


 カリエンテ自身も動く事この魔法に被弾するのだとすれば……私たちも動かなければいいのでは? 閃きのような考えに、もう一度映像を見直した。


 だが、動いていないプレイヤーがヒードン フレア バーストを受け死んでいる事が確認できてしまった。

 ならなんで身体と書いたんだ? うーん……わからない。

 時間も無い事だし、後で皆で考えよう。

 そう考えて映像とウェブのスクリーンショットを数枚撮影してギア用のハードに送り、再びベットに戻り起動ボタンを押して病ゲーへ戻った。


 ログインするとそこは、ヘパイストスの神殿だった。


[[ren] ただ]

[[キヨシ] おー。おかえりーw]

[[風牙] おか。どうだった?]

[[シュタイン] おかであるw]

[[ren] 先生~。

    SSと映像送るから全員に拡散して]


 先生の返事を待たず、持ち帰ったSSと映像を先生にメールで送信した。その後すぐに移動速度があがるバフを自身かけ、イフリート火山に向かい全速力で走った。

 

 私が火山中腹の入り口に着くまでに先生によって、ロゼを始め全員にウェブのSSと映像が回ったようだった。


 クラメンと合流しPTに加われば、黒からPTL――PTを組んだままゲームをログアウトした場合、このゲームでは落ちた人だけがPTを抜ける形になり、もし落ちた人がPTLだった場合はPTLが次にPTに入った人に移動する。そのため黒が私をPTに加え――PTLを返した。


 クラチャではなくPTチャットで、皆が話し合っている。そんな中、ロゼたちに合流すべくチャットをしながら移動を開始する。


『キヨシ……意味わかんないw』

『カリエンテの身体の周囲って部分表記ミス?』

『ディレイ5分か……』

『動画見る限り、立ち止まるではダメであるな』

『何か理由があるとしたらなんだろうな?』

『こんなんじゃわかんねーよ!』


 キヨシの「突っ込めばいい」と言う発言にティタが首を捻る。その会話が無かった事のように、カフェオレが表記ミスではないかと言った。

 するとロゼかと思われる発言の後、私と同じように考えたらしい博士があぁ、ダメだと言いたそうな声音で自分の案を否定した。その後も皆が色々と発言を繰り返しPTチャットが混線する。


 その会話を見ながら、私も気になったあの言葉の意味を思考する。

 クラメンも各々考えてはいるようだが……何かしらヒントがないとやはり難しいのだろう。これは! そう思える案は出ない。


 そこでハッと召喚した時の事が思い出された。

 召喚したカリエンテはいつも必ず、私を自分のお腹の下に隠す。

 もしかしたら……カリエンテのお腹の下に隠れるのが正解ではないか? そう閃いた。


『良く分からないのです』

『あぁ、こう言うの俺苦手だわw』

『拙者もお手上げでござるよ』

『もしかしたらだけど、カリエンテのお腹の下なんじゃないの?』

『ダメだわいねw』

『それどういう意味?』

『ren詳しく!』

『ちょっと詳しく聞かせて!』

『カリエンテ召喚した時、必ずカリエンテは私をお腹の下に隠す。

 だから、カリエンテのお腹の下に隠れれば死なない可能性はあるかも?』

『なるほど! 試してみる価値はあるかもな』

『それなら固まる意味も分かるのである』

『やってみようぜ~。ダメ元だしww』


 閃いた事をPTチャットで伝えたところで、ロゼたちと合流した。私たちの姿を認めたロゼが立ち上がり『よし、行くか!』そう皆に声をかけ点呼を呼び掛けた。

 全員いることがそれぞれのPTLにより報告され、移動が始まった。


 歩き始めて五分ほどで、ロゼが立ち止まり道が別れる事を伝えた。


『うんじゃま、気をつけろよw』

『バイバイでしゅ』

『ノシ』

『じゃーなー』


 軽い感じでロゼと別れ、そこからは紹介された茉鬼さんのPTが私たちの前を歩き道を進んだ。


 道の広さはさっきより狭くなり、マグマの色合いが濃くなっていて、グレート フレアー ハウンドやグレート フレアー バードと言った見た目が諸に炎で出来ましたと言うような雑魚が1分置きに襲って来る。

 その全てが強化されているようで、処理に時間がかかるようになった。


『チッ。めんどくせーな』

『あぁ、ここ狭い! 俺、狭いの無理!』

『狭い上に雑魚が多いの面倒ねw』

『生ジル落ち付け。閉所恐怖症か?w』

『さゆ、キヨシ、カフェオレ範囲使うな。単体魔法にしとけ~』

『閉所恐怖症じゃないけど……狭いと動きにくい!』

『後ろの方のPTも見えるなら遠距離は攻撃に参加して』

『ユーサ! そこだと死角だからこっち引いて!』


 雑魚の硬さに範囲ではなく単体魔法を使うように先生が指示を出し、それに答えるように三人が魔法を即座に変更した。

 ロゼたちの方も戦闘中なのか、色々な声が飛び交っていた。

 こちらは処理を終わらせ、漸く扉に辿り着く。


 扉の見た目はただの岩だった。ただ、その岩肌にはドラゴンが口から苛烈な炎を吐き出す絵が描かれていた。

 そのことから、私たちの扉が烈火なのだろうと予想する。

 

『ここで、マスターたちが来るの待ちますね。

 同時に開けないと開かないんですよ』

『k』

『後5分ぐらいでつくからちょい待ってて』


 待ち時間が出来たのでその間に装備などの耐久を戻すよう伝え、私自身も耐久などの確認を行った。

 そうこうしている内にロゼたちが扉に到着したと報告が入り、カウントを千桜が行いカウント0と同時に茉鬼さんが手に持った鍵をドラゴンの口へ差し込んだ。

 

 するとゴゴゴッと轟音を立て岩がゆっくりと右へずれ道が開かれる。そこには、中央部分に巨大な六芒星が書かれた水晶があり、東京ドームのような広さのドーム状の広場が広がっていた――。


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