第152話 最強は壊滅を齎す⑦ 元クラメンの秘密会議
renが珍しく早めに落ちた後、ある街のあるクランのハウス内会議室で元殲滅の破壊者クランのクラメン達による会議が開かれていた。
参加者は、全部で27名。
現在もゲームを続けている元クラメン全員が、集合していた。
「それでは、会議を始める。今回の会議の場所提供者である生ジルくん。説明を頼む」
「いやいや、名前まちがえてるからね? 俺、雪継だからね?w」
「いいからさっさとやれよw 生ジルwww」
「生ジルはやばかったなぁw」
「あれは、草生えたわw」
議長である先生に呼ばれ、生ジルじゃなかった……雪継が立ち上がると説明よりも先に名前を訂正する。
雪継の生ジル呼びに反応したのは、元クラメンで、その後亀田に移籍したものの一人が楽だとソロ活動をしている暗殺者の
現在
それから、源次と同じくソロを好んでクラン解散後どこにも入らず、単独行動をしている戦士の
「酷い。こいつら皆鬼だw」
「酷いとか言いながら、よろこんでんじゃねーよw」
「本当に雪ちゃんは、マゾよねw」
「あー。あれだ、雪に説明ふったのがまずいんじゃね?」
鬼だと言いながら、芝を生やす雪継にニヤニヤした表情で武者修行中の
「あ、やっぱり?」と発言した先生が、じゃぁシロ頼むと俺にその説明役を振ってきた。
めんどくせー。まぁ、仕方ないやるか……。
注目する参加者たちに説明するため、ため息を零し立ち上がる。
「じゃぁ説明するわーー」そう言って俺は説明を始めた。
今回の議題は、renのドッペルについてで、今回のドッペルは過去にrenがクランを解散させるきっかけを作ったやつに似ていると俺たちは思っている。
その時の犯人と言うかクラメンな訳だが……。そいつはrenの強さと人望に惹かれrenの狂信者となっている人物だった。
毎日毎日執拗にrenに声をかけrenの行動を読みストーカーのような行動をするようになり、遂には自分がrenだと思い込みクランからrenを排除しようとした。
その行動だけならばまだマシだったのだが、そいつはrenを排除するため当時のクラメンにまで作り込んだ嘘を吐くようになってしまった。
結果……それを信じたクラメンたちが、何もしていないはずのrenを責め悪態を吐きながら脱退と言う悲惨な状況が出来上がる。
俺や先生たちが、そのことを知ったのはrenが殲滅の破壊者からクラメン全員を強制脱退させた後だった――。
ログインしてクラチャで挨拶を流そうとしてクランから脱退していることを知った俺は、急いでrenに密談を送る。
けれど、renは密談を拒否していて……一切密談が通じない状態だった。それで仕方なく全茶で呼びかけるも、renからの密談が届くことは無かった。
何も話そうとしないrenを心配したキヅナと卑弥子が、リアルでrenに会いに行く。
そこで、何故クランを解体したのかの理由を聞き出した二人は、クラメン全員にその理由を教えてくれた。
その後約一年もの間renは、誰とも会話をしなかったらしい……。
というわけで、再び同じような状況にならないよう相手の情報を得るために、こうして元クラメンで最後までクランに所属していたメンバーを集めた会議を開くよう雪継に頼んだ。
「――つーことがあってな」
「あの時は、リアル連絡がとれるキヅナと卑弥子が居たから理由わかったけど、今回は誰もリアルで連絡とれないから……」
「なるほどな、ミッシェルの可能性はあるのか?」
「多分違う」
「ミッシェルはキヅナ。
兄貴がリアルで締めたらしいから多分もう病ゲーには現れないとおもうぞーw」
「んー心配では有るけど……クランにいない俺らじゃ出来ること少ないわいね」
「であるな。renに世話になったである。
だから協力できることはするであるが、現状我々では密談を送って励ますぐらいしかないのである」
俺の説明を引き継いだのは宮ネェだ。
その宮ネェの言葉に、セシルが過去にrenを追い詰めた人物と同一人物なのかと聞く。
それに対し、俺は今回のドッペルとミッシェルの発言などを比べ、違うと答える。それを援護射撃するようにチカが答えた。
会議参加者が頷いたのは、語尾がわいね口調の現アース所属の
確かにクランの違いがある今、皆に協力を求めた所で出来る事は少ない。それを分かった上で、情報提供を頼むつもりでいるのだ。
実際ここにいるメンバーのほとんどは俺を含め、renに初心者狩りから守られたメンツばかりなのだ。
初心者狩りと言うのは、ゲームをはじめたばかりの初心者だけを狙いPKすると言う卑怯なプレイヤーの集団の事で。
そいつらの狙いは、ゲーム開始時のみ配られる”女神の涙”――取得経験5倍+取得金額5倍のアイテムで24時間限定でその効果が得られるポーションだ――を殺し奪うためだったらしい。
今ではそのアイテムがドロップしないように仕様変更されているが、クローズやオープン当初そのアイテムは死ぬことでロストしたり、落としたりしていた。
それに対し、人一倍レベ上げが早かったrenは、一人でレッドになった初心者狩りにPKKを仕掛け撃退したり、他にも標的になった初心者たちが狩り行く時に狩り場まで一緒に行き護衛したりしてくれていた。
それがきっかけで、renをマスターにクランを作る事になって、結果が強制解散だった訳だが……まぁ、そんなrenに憧れたプレイヤーも多いし、三カ条なんかが出来るきっかけにもなったんだけど……。
「励ましとか任せるでござるが、拙者たちはドッペルに関する情報が欲しいでござるよ」
「そうでしゅねw あたくちたちでは分からない部分が多くあるでしゅから、皆に声をかけたでしゅ」
「なるほどな……」
「ふむ。それとなくクラメンに聞いてみるわ」
「そう言う事なら、俺たちでも協力できるな」
「あたしも協力するわ~w」
さっきまでの難しい表情から一変、頼もしい表情で次々に頷き協力を約束してくれる元メンバーたち。そんな彼らに「頼む」と先生と宮ネェが頭を下げる。連絡先については、宮ネェ・先生が請け負うと言う事を伝え会議は終了した。
久しぶりに会うメンバーたちが、そのまま雑談に入る。
renの装備やスキルについての話や、グランドロール戦についての話など……あちらこちらで様々な話題の会話が繰り広げられ、もう収集がつかなくなった。
まー俺は困らないからいいかと楽しそうな声を聞きながら一人思考する。
もう、あんな風に理由も分からず無言でBANされるのは嫌だし、楽しいクランが解体されるのは嫌だ。長年一緒にやってきたメンバーとこうしてまた一緒にPKして、馬鹿やってそう言うのが楽しいから――だからもう間違えない。
これはあくまで俺の希望かもしれないが、他のメンツも同じ気持ちだろう――。
少しだけ過去を振り返り決意を固めたところで、俺も楽しそうな会話に参加した。
解散する際、アースの会議室を出て来たメンツの凄さにアースのクラメンが酷く驚いていたらしい。
代行――生産系ではゲーム内でナンバーワンを誇るクラン新宿二丁目の小雪ちゃん。
攻城戦で未だ無敗を誇るSilvalGardenのマスターロゼなどが、自分のクランの会議室から出てくれば驚くのも分からなくはない。
ドッペルの情報が齎されたのは、その後しばらくしてからだった。
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