第144話 最強は夢想する㉓
天城でのひと悶着を終えてニーケに再会し、クエストアイテムであるスクロールをゲットした。街に帰還すると同時に先生が大和をお迎えに行ってくれたようで、クラチャが一気に賑やかになった。
そんなクラチャをBGMにしながら、アテナの図書館を目指し移動する。数時間前に来たばかりの大図書館の内部に入り、さっきと同じ第三図書館を覗き込んでみれば全く同じ位置にクィンスさんは佇んでいた。
アイテムボックスからニーケに貰ったクエストアイテムであるスクロールを取り出し彼女に話しかける。
【 お疲れさまでした。これが例のスクロールですか? 】と言いつつ彼女がスクロールを受け取る。
スクロールを開き中を覗き込んだ彼女は、そのままスクロールを眺め
【 素晴らしいわ! これでやっと解読ができるわ! 】
と言い、またも書き写す作業が始まるのかと思いきや……今回は少し違った。
クィンスさんの説明によれば、本来の解読とはその魔法を読み説き知る事だと言う。
そのため、持ち帰った魔法陣の大きさや色、形などを口頭で伝えるだけで済んでしまった。
最後に【 解読の極意と使い方について 】の説明を受ける。
その中に大変興味深い話しが出て来た。
それは魔法陣の転写についてなのだが、私なりに割愛して説明すればこんな感じになる。
1.スクロールに書かれた魔法陣を解読して、どんな形、色で書かれているのかを知る。
2.魔法陣の形色が分かれば鑑定し魔法名を知る。
3.スクロールに書かれた魔法陣を
4.書き写した魔法陣を、専用のクリスタルを用意するかもしくは、スクロールに転写する。
要は、代行の解読、鑑定、製本、彫刻orフィニッシャーをそれぞれ使う事で、一度書きさえしてしまえば何度も転写が可能になると言う事のようだ。
フィニッシャーと言うのは、羊皮紙を専門で作る職人のことで転写専用の羊皮紙は自力で作る必要があるのかもしれない。
転写専用の羊皮紙か……これがあれば、製本とか凄い楽になる気がする。一度書き写しさえすれば、後は転写するだけ……いいな~欲しいな。
そんな私の考えを読んだようにクィンスさんが、ただしと付け加えた。転写専用の羊皮紙は非常に高価な物な上、使用回数に制限があると……。
転写専用の羊皮紙を手に入れるには、羊皮紙専門店で購入するか自分で生産するかのどちらかだそうだ。
自分で生産した場合、その出来あがりのランクにより使用回数が決まるのだそうだ。
大変ありがたいと言うか、役に立つお話を数時間に渡り聞いたところで
【 おめでとうございます。解読の技術を獲得しました 】
【 解読・製本・鑑定・彫刻の極意を学んだため、転写が可能となりました。 】
【 製本・彫刻が解読・鑑定の極意を得たことで
全ての職業に対応可能となりました。 】
と、システムログに流れた。
鉄男の言っていた通り、本当に今後renで全て対応出来る事がわかり無駄にならなくて良かったと思った。
そして、ふと気付いたのだが……renでやれるのは良い。だけど、魔法書、スキル書、スクロールは必ず1つは必要になるのではないかと……。
結局一度覚えさせてしまったものは、再び書き写す作業が必要になるのでいいかと安易に考えた。
とりあえず、サブに覚えせた魔法書を何個か転写専用の羊皮紙に書き写してみようと思いたち、図書館を後に羊皮紙専門店に向かう。
アテナの大通りにその店はあった。
羊皮紙独特の匂いが漂うその店で、少し小太りの店員さんに話しかけ転写専用の羊皮紙について聞けば、購入専用のウィンドウが立ちあがる。
そのウィンドウの中で、転写専用の羊皮紙――製本を覚えただけでは表示されていなかった項目をタップすれば使用回数と値段が書かれていた。
5回用は、7M
10回用は、12M
50回用は、57.5M
100回用は、110M
おおよそ1回あたり1.4M~1.1Mの出費になるわけか……。
うーん。10回用を買ったとして1冊50M~100Mの魔法書を購入する。
9冊作って元が取れるのは78Mぐらいまでの魔法書か……これはかなり厳しいな。
なぜ9冊かと言えば10回目は新しい転写専用の羊皮紙に写すために取っておく必要があるためで……そもそも、転写専用のスクロールに転写専用のスクロールで転写が出来るかがわからない。
どちらにしろ1度試してみる必要がありそうだ。それに、10回では元を取るのが厳しい事を考えると100回か50回分と数多く使えるものを買うのが良いだろう。
思考を終え、100回分を2枚と50回分を6枚購入した。
作るものは既に決めている。さくっとハウスに戻り倉庫に転写専用の羊皮紙を預けるとキャラチェンジした。
これまで製本をさせていたキャラになり、執事に向かい倉庫から転写専用の羊皮紙を受け取り部屋に戻ると早速魔法陣を書き写す――が、しかし書こうとた途端、ブーと言う警戒音と共に使用できませんと出てしまう。
まさか……まさか、このキャラで製本してrenで羊皮紙に書き写さないと使えないオチ? ていうか製本した魔法書って羊皮紙に書き写せるんだっけ?
これは危ない気がする……そう不安に思いながら、とりあえず写そうと思っていた魔法を製本する。
製本する魔法は、サンダー スピア。この魔法書は、取引所の現在の価格で約90M前後で取引されている。
クラン資金代わりに魔法書を20冊入れる。残りは私の個人資産ように売りさばくつもりでこれを選んだ。
製本を終えて再び倉庫に羊皮紙と出来立ての本を預け再びrenにキャラチェンジする。執事の元へ走り、製本したサンダー スピアと転写用の羊皮紙を取り出し自室に戻った。
机の上に製本したサンダー スピアと転写用の羊皮紙を広げ願いながらペンを持ち解読、鑑定を使う。
すると転写用の羊皮紙の上にサンダー スピアの魔法陣が浮かびあがった。それと同時に、魔法書は消滅するように消える。
転写用の羊皮紙の上浮かび上がるウィンドウに製本用の羊皮紙を重ねウィンドウ右端に表示された複写を押せば回数が減るのと同時に、サンダー スピアの魔法陣が製本用の羊皮紙に書き写された。
それを丸め紐で止めて製本をタップすれば、見事に魔法書が出来あがった。
「おぉ! これはいいw」
一人感嘆の声をあげ、次に転写専用の羊皮紙に書き写せるかを試す。
結果だけを言えば、転写用の羊皮紙には写す事ができなかった。魔法書が消滅した時点で、出来ない可能性を考えていたので問題はない。
転写専用の羊皮紙で出来る事は、一つの魔法もしくはスキルを転写するだけのようで、一度専用の羊皮紙に魔法もしくはスキルを写してしまえばそれを書き換えるなどはできないようだ。
魔法書は製本もしくは販売された本の魔法陣をそのまま製本用の羊皮紙に写せば本にできる。
だが、スキル書の場合、スキル書専用のクリスタルを必要個数買うもしくは作るところから開始になる。
そのクリスタルを作るにしても買うにしても……またそこで出費か
うん、出来ない事にしよう。
そっと、スキル書の制作を諦める。
そして、サンダー スピアを量産するとその日はログアウトした――。
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