第69話 最強は覇者を志す⑥
鍛冶屋に到着して、防具の耐久を新品の状態まで戻し、トーナメント戦に参加すべくNPCまで戻れば先ほどの倍はいるんじゃないか? と思えるほどの人数が棒立ちしている。
不思議に思いつつも、クラチャの方を見れば皆どうやら戦闘中の様で無言だ。聞けないのであれば後で聞けばいいか……。
などと思いつつ、NPCへ話しかけ職不問、場所ランダムへとエントリーする。それと同時にクラチャをオフに設定しておく。
視界の画面上に、マッチング中と表示される。次はどんな相手なのだろう? と期待しつつ待てば、1分ほどで視界がブラックアウトすると、石柱の乱立するエリアへと移動した。
画面中央上部にある、名前、職、HPバーを確認する。
今回の相手は、同じドラマスだ。
同じ職の人がいるとは思わなかった。早くやりたい! 逸る心を抑え、楽しみにワクワクトキメキながら、まずは柱へと走り身を隠す。
それと同時にディティクションを打ち上げ周囲に敵影が無い事を確認すると、再度柱を移動しつつ、自身へバフを入れ柱に到着すると同時にトランスパレンシーをかけた。
視界中央のカウントが、同職との戦いが楽しみ過ぎていやに長く感じる……。まだかまだかと思いつつ、相手である蓮へと徐々に近づいていく。
蓮もまた、私を探すよう移動しているらしく互いにトランスパレンシーを使っているためか、居場所が分からない状態となっているようだった。
こういうのもまた楽しいな……そう思い。勝つための作戦を練る。
ドラマスの特徴を考えれば、近接に近い魔法職だ。サイレンス(+25)かバインド(+18)を使用し刀もしくは魔法で叩き潰すのが一番いいだろう。
そうなるとまずは、姿を晒して……相手に無防備だと思わせ、設置型の魔法におびき寄せるべきだ。
それに、相手が突っ込んで来てくれれば後手に回る事はないだろう。そう判断を下し、その為の準備をはじめる。
ディティクションを打ち上げ、エフェクトが上がると同時に、バインド(+18)を撒きその場を離れトランスパレンシーを入れる。その後、少し離れた場所でまたディティクションを打ち上げ、先ほどと同じように今度はスロー レンジ(+5)を撒いておく。
更にトランスパレンシーを入れ移動したところで、カウントが0になり傍近くでディティクションが打ち上がると相手である、蓮が私から12メートルほどのところで姿を現した。
ヒューマン男の軽装備姿の蓮が、詠唱を始めると同時に何かの魔法を打ち込んでくるもレジストする。ログを見れば、サイレンスだった。
お返しとばかりにブレス オブ アローを詠唱し彼へと打ち込み、ジグザグに走りフレイムサークル(+20)を設置する。
ひとまず三か所に設置魔法を設置し終え、彼へと攻撃を開始する。まずはサイレンス(+25)を詠唱し、叩き込むもヤハリレジられる。
ここまでは予想通り……。
二刀を取り出し、切り込んでくる彼の刀を杖でいなし、バックステップで下がり設置したバインドへと誘導する。
刀をいなされ、体勢を崩しながらも果敢に切りかかって来る蓮を、身体を捻りギリギリでかわす。
「くそっ」
攻撃が当たらないことに苛つきを覚えたらしい彼が、そう言葉を零すとスキルを使用したのか刀に青いエフェクトが上がる。
エフェクトを見る限り、ソウトウオオナミに良く似ているが……現状色だけで判断できない。
使用するスキルを判断するよりも先に、回避行動を優先させよう考え動いた。右後方へとバックステップを踏みその場を離れた刹那、蓮は刀身を引き抜きスキルを発動させた。
型を見る限り、どうやらソウトウオオナミで間違いないようだ。
スキルエフェクトが消え、彼が硬直するタイミングを狙い走りよりつつ、アーマー ブレイク(+25)を入れる。二度レジられ三度目で漸くエフェクトが上がる。
即座に、杖から +28オニキリ×オニマルクニツナへ持ち替え、ソウル オブ カリエンテ、ファイアーウェポン(+25)をかけ切りかかった。
ハローウィンイベントでゲットした、刀身が赤く染まった二刀を使う。
攻撃力に違いはあんまり無いけど……刀身の色が禍々しい……これは封印かな……。
そんな事を考えるも、今回はこれを使う。
硬直が切れ、慌てて刀でいなそうとする相手との戦闘が楽しすぎて、ニヤっと口角が歪む。
両手に持つ刀がそれぞれ、左右別の動きで蓮へと襲いかかり切りつける。
初撃時、どうやら出血のデバフが入るようで、持続的なダメージとしては有効だなと考えた。
アーマー ブレイクの効果が入ってるため、彼からのダメージの二倍近いダメージを与える。
右手の刀が、腰へと深く刺さりそのまま胸までを切り裂いた。間髪置かず左手の刀が、ガラ空きの彼の太ももへと攻撃を加えた。
ダメージを負いながら、負けじと彼も果敢に攻めて返す。
心地よい撃ち合う音を耳に捕えつつ、切り結ぶ。相手のHPが残り三割となる。
一気に攻撃をしかけようと足を踏み出した刹那、バックステップを踏み体勢を整え直したい相手が距離を取ろうと動いた。
「残念……」
そうひと言零し、フレイム サークル(+20)を発動させた。彼が移動した先は、前もって私が設置型魔法を撒いていた場所だった。
焦りで判断力が鈍っていたのかは不明だが、避けたが為に彼は、余計なダメージを負う事になった。
残りHP二割ほどとなった彼へ追撃を仕掛ける。二刀から、杖へと持ち替え、マジック オブ アブソール(+25)、エレメンタルアップ(+15)、ソウル オブ ウラガーンへとバフを更新し、ブレス オブ アローを叩き込んだ。
二刀のデバフ出血とフレイム サークルの火傷による持続的HP減少ダメージを負っていた蓮はその攻撃で残りHPを吹き飛ばし、倒れ灰色となった。
会場にブザー音が鳴り。
【 ren win 】と頭上に表示される。カウントがはじまれば、蓮から「お疲れ様です」と声がかかった。それに「おつ」と一言返し今の戦いを振り返る。
同職との戦闘は、三次職になって初めてだった。非常に楽しく、もっともっと殺りあいたいとさえ思えた。
「また、殺ろう」
白チャでそう伝えると同時に視界がブラックアウトすると街へと戻った。
街に戻り、クラチャをオンにすれば……相変わらずの様子だ。
[[†元親†] ひゃはぁー]
[[宮様] じゃ、彼は宗と一度闘技場で戦って貰うでいいのね?]
[[大次郎先生] ん~。とりあえずren戻ったら聞こうか?]
[[ren] 戻り]
[[黒龍] ドラマス同士の戦いすげーなぁ]
[[ティタ] あの武器何? どこ産?]
[[さゆたん] 勝利でしゅ!]
[[キヨシ] さゆ容赦無さすぎ……痛すぎだー!]
[[白聖] おか]
[[ren] かぼちゃ?]
[[ゼン] 禍々しい赤でしたねww]
[[宗乃助] クランの名前に良く似合うでござるよw]
[[ティタ] あぁ、あのクソイベね……]
[[黒龍] あれはマジ酷かったww]
[[大次郎先生] あぁ、renちょっと話しあるからPT誘ういい?]
[[ヒガキ] おかえりなさい。凄くカッコイイよかったです]
[[ren] k。かぼちゃフンドシ……]
どこ産って……とティタの言葉に笑いつつ答えれば、蘇るボスでの罠……そして、かぼちゃをかぶったフンドシ姿のドワ。そんな楽しい思い出を思い出して居れば、そんなドワこと先生からPT勧誘が飛んでくる。
承諾を押しPTへ入れば……増えてない? トーナメントに行っている間にどうなったのか、先生と宮ネェ以外に知らない人が五人もPTにいる……。
[[ティタ] フンドシwwwww]
[[ren] 人数増えてる?]
『おぉ! 本物だ』
『ren様だ……』
『マジだ。すげぇ~』
『ハジメマシテ!』
『まじもんだわw』
などと、自由に話し始める見知らぬ人に、私の警戒心がマックスまであがる。チラっと傍に居る先生へ視線を向ければ、ふっと視線を外された。そのまま宮ネェを見れば、両手を合掌させた状態で眉根を下げる仕草をする。
[[ren] 説明]
[[大次郎先生] あー。なんかミツルギさんの知り合いみたいで……]
[[宮様] 断り切れなかったのよ。ごめんね?]
丸投げした自分の行動を棚に上げ、ここが街中でなければ、カリエンテぶっ放しているところだと思いつつ、先生に話をするようクラチャで促し、状況を宮ネェから密談で聞いた。
宮ネェの説明によれば、私が鍛冶屋へ行った後、PTを組んだ先生と宮ネェに、ミツルギさんが他にもいると言い始めどうせなら一度で済まそうと言う話になり呼ぶように言ったそうだ。
一応、同じ条件で加入テストを受けてもらう事を既に承諾はしているらしいことから、微妙な気分になりながらも納得した。
『マスター来た事だしとりあえず、今後の説明をはじめますね』そう言って、先生が今後、彼らが誰と対戦するのかを説明しはじめた。
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