第19話 最強はクランのLv上げを目論む②

 懐かしさから、宮ネェとの思い出を思い出したが、ここへはクエストをこなしに着たことを思い出し、マップでNPCの位置を確認する。

 【 デメテル 】の街にある北の塔へと向う。

 背景でしかないはずの町並みを楽しみつつ、のんびりと歩く。

 と、クラチャでティタから全体チャットを見ろと言われチャットを表示に切り替えた。


{[白聖] お前が、喧嘩売ったんだろ?ww}

{[宮様] シロ、煽らないの。落ち着きなさい}


 なにやら、喧嘩? と言う単語が見えるが……。意味がわからない。

 そこで、クラチャで詳しい内容を聞いた。


[[ren] 全チャ見た。意味不]

[[ティタ] ん? もしかして、renさ、アクセルにブロックしてない?]

[[ren] あぁ。話すだけ無駄]

[[ティタ] とりあえず解除して]

[[ren] k]


 ティタに乞われて解除してみれば、全チャでアクセルが粋がっている。

 やっぱ、見る価値ないなと思いつつも全チャを静観する。


{[アクセル] 元々、renつー奴がわりーんだよ! 

       俺らが狩ろうとしてたボス引っ張ってたんだからよ!}

{[白聖] 一撃でもお前らが入れてたのか?}

{[アクセル] 見つけたもん勝ちだろ? 前だってそうだった}

{[大次郎先生] 前っていつのこと?}

{[アクセル] そんなんオープンの時に決まってんだろ}

{[宗乃助] 拙者クローズドからやってるでござるが、聞いたことないでごさるよ}

{[白聖] 俺もクローズドからいるけど、知らねーなぁ。俺は、巨乳以外認めない!}


 ちなみにだが、クローズドとはクローズβテストの事であり、新作ゲームの発売前に抽選で選ばれた、200名のユーザーがお試しとしてプレイすることができるものだ。

 そして、オープンとは、オープンβのことであり、発売が決まり、抽選で選ばれた3000人規模のユーザーがお試しとしてプレイすることができる。と言う違いがある。


 クローズドからやってる古参ばっかりの、クラメンにオープンからっていい訳は通用しない。

 明らかな嘘を、堂々と公言して憚らないアクセルに対し、馬鹿なんだなと再確認する。

 

{[アクセル] 嘘ついてんじゃねーよ}

{[大次郎先生] シロ、巨乳関係ない。黙って}

{[宮様] 私たちの

    ボスを見つけたものが優先ってことになってたって事かしらね?}

{[さゆたん] それなら納得できるでしゅね。

       いちゃもんつけてる事に変わりはないでしゅがw}

{[アクセル] お前らマジで頭いかれんじゃねーの?}


 色々、言い合いをしているようだが……華麗にスルーしておく。街中を抜け漸く、クエストNPCのいる塔へと到着した。

 塔の最上階にいるNPCまで、石造りの螺旋階段を使って登る。物語とかだと、途中抜けてたりすることもあるのだが、流石にこのゲームでそう言った罠はない。


 その間も、全チャでの煽りあいは続いている。他のプレイヤーからも、ボスは攻撃を加えて初めてその権利があるだとか言っている人もいるのだが、アクセルがやっていたパラレルワールド内での病ゲーでは、きっとそうではなかったのかもしれない。などと考えつつ、クエストNPCへ近付き話しかける。


 ウィンドウが開き、クエストを選択する。

【 約束の証Ⅱが欲しいだと? そんな簡単に渡せる物じゃないと判って言っているのか? そうだな……では、お前の力を試そう。農園で採取出きるという黄昏に染まるオレンジを持ってきてくれるなら約束の証Ⅱを渡してやろう。 】


 NPCからの要求は、黄昏のオレンジということだ。

 これもまた、自力採取するのは非常に確率が悪い。そう考え、自力での採取は諦め、その場で取引所の――裁判官の小槌の形をした――マークをタップする。


 取引所は、露天に比べ品物の数は多いがその分値が張る。

 理由としては、運営に取引所利用料として、販売された額の30%を差し引かれるからだ。登録するプレイヤーは、その分を上乗せするだけではなく。便利な取引所を利用するプレイヤーの足元をみているのだ。


 ウィンドウが開き、販売と購入の項目が現れる。今回は、購入のためそちらをタップする。

 すると画面が切り替わり、武器――を選べばドロップダウンリストが表記される。例えば、片手剣、短刀、両手剣などだその中から自分が望む項目をタップすれば、欲しいものが新しいウィンドウで表示される――防具、雑貨、魔法書、スキル書などの新たな項目が表示される。

 

 その中で一番したにある食材を選ぶ。

 すると、肉、野菜、穀物、飲料、果物と項目がでる。果物を勿論タップするれば、新しいウィンドウが開き一覧が表示される。

 検索バーに、クエスト用の【 黄金 】と入力して虫眼鏡のマークを押せば、名前に黄金と付く果物のリストにウィンドウが変更された。

 

 スクロールしながら探せば、直に【 黄金のオレンジ 】を発見する。値段は1個で、2M……。


「高っ!!」


 思わず声が出てしまう。

 どうにかこうにか冷静を装い、採取する時間を、狩りの時間に換算すれば元は十分に取れると無理矢理自分.を納得させた。

 

 黄金のオレンジ右の籠マークをタップすれば、【 購入しますか? 】と言う確認が表示されyesを押すと、アイテムボックス内に【 黄金のオレンジ 】が追加された。

 それを確認して、ウィンドウを全て閉じると、目の前にいるNPCへと話しかけ完了させた。

 受け取った【 約束の証Ⅱ 】がアイテムボックスに入っているのを確認して、【 ヘラ 】へと戻るため移動を開始する。

 

 私が【 黄金のオレンジ 】の値段に驚いている間にも、全チャは進んでいる。急ぎ足で歩きつつどう言う煽りあいがあったのかを見て楽しむ。


{[白聖] だからさ、お前どこのオープンやったわけ?}

{[黒龍] オープンからやってる奴が偉いなんて決めてんなよ?

    頭おかしいのお前だろ}

{[アクセル] はぁ? 馬鹿なんじゃねーの?}

{[大次郎先生] シロ、黒相手にするのやめとけ……どうせ消えるんだから}

{[ティタ] 馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅ~}

{[キヨシ] ていうかさ~。何がいいたいの? 意味わかんねーんだけど}

{[ミナちゃん] ていうか、一人を多数でいじめて楽しいですか?}


 白熱する全チャに水を差すようで申し訳ないのだ、アクセルに対して何を言っても意味がないと私が諦めるほどだ。放置するに限るとクラチャで伝えてみる。


[[ren] 面倒だから放置すればいい]

[[黒龍] そう言うわけにはいかねーよ。こういう奴は凹ませなきゃ気が済まねぇ]

[[白聖] マジ、こいつオープン、オープンうるせー]


 黒は、負けず嫌い……。シロは、オープンと言う言葉がイラっとしているようだった。

 そこで、私が考えた先ほどの仮説をクラチャに流す。


[[ren] 考えるに、彼の言うオープンとは、病ゲーのことで間違いないんだろうと

    思う。但し、パラレルワールドの病ゲーであって、この世界の病ゲーでは

    ない。だから、一概にオープンテスターではないと否定はできないよね]


 そう伝えれば、クラチャも全チャも大量の草が生えた。

 結構自信があった仮説だったのに酷い……。いっそのこと、全員殺そうかな?

 などと、落ち込み逆ギレ気味になりつつ【 デメテル 】から【 ヘラ 】へと転移した。


 本日4回目の大神殿で、変態イケメンNPCへと近寄り話しかける。

 クエストアイテムを渡して、クランLvを2に上げた。


【 おめでとうございます。Bloodthirsty Fairy クランのLvが2上がりました。 】

【 新しいクランスキルを覚えることができるようになりました。 】

【 サブクランマスターを任命できるようになりました。 】


 どうやらクランスキルを覚えられるようになったらしい。

 それと、サブマス任命もできるようになった。

 これで、面倒なクランのあれこれは全て、サブマスにする先生と宮ネェに丸投げできる……。

 そう考え、一人大神殿でひっそりとほくそ笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る