タイトル.28「難攻不落のミッション(前編)」
「おい、アイツ……」「依頼を次々根こそぎ奪いやがって……」
「おかげで賞金は総舐めってところか」「しかも、なんというか」
ヒソヒソ話が聞こえる。
見た目からして喧嘩腰が似合いそうなゴロツキの連中だ。正面切っての強面フェイスだというのに連中は、とある人物を前にヒソヒソ話。
「おっほほ……皆さん、俺達に羨望の目を向けちゃってぇ……揃ってファンになっちゃったってわけですかねぇ~」
ここはヒミズの本拠地の中でも有名なレストラン。
その奥の席。ヒミズでも名高い連中のみが足を踏み入れる事が許される常連御用達のテーブルソファー席がある。
「ちょっと気になるというか……ご飯に集中できませんよ。これじゃ」
そこに腰掛ける四人の人影。
まずは”
「シルフィ。席を変わろうか? コッチなら視線はあまり気にならない」
「紳士だねぇ。盾のお兄さん~」
「テメェら、飯の時間くらい静かにしろってんだ」
アキュラを囲うのは用心棒として便利屋の世界へと足を踏み入れた三人。
問答無用縦横無尽・自分勝手が取り柄の自称ヒーロー【カルラ・カミシロ】。
この世界でいえば神様のような存在・風の神霊の末裔が一族の誇り【シルフィ・アルケフ・スカイ】。
その盾に貫けるものはない。不動の騎士【レイブラント・ハリスタン】。
その三人はいずれも腕の立つ連中であり、ヒミズでは屈指の戦闘力を持つアキュラに引けを取らないレベルの強さだ。
誰もがアキュラに近づくことを恐れるようになった。
新人は見つけ次第潰しにかかるかイビるかの二択しかありえない。ここヒミズの環境は死刑囚が集う流刑地に匹敵する無法地帯である。
だが誰もが、アキュラとその面々にチビって動けなかった。
「どいつもこいつも、足ガクつかせてビビってやがるな」
アキュラ率いるフリーランスは昼食の時間だ。
アキュラは好物のクリームパフェを一口ずつ。
カルラがハンバーガー、シルフィがサンドイッチ、レイブラントがコーヒーとそれぞれ軽食を楽しんでいた。次の仕事に備えて。
「また強そうな奴が新しく入ったもんだからな。ネズミは龍に喧嘩を売らないってことだ」
「その言い方だと、俺は大して強そうな見た目じゃないって言い方ですな~?」
不満げにカルラはハンバーガーを口の中へ放り込んでいく。
『そうやって、食ってかかるような余計なおしゃべりが多いから品がさがるのだ、御主人』
「黙ってろっ」
余計なおしゃべりさえしなければ少しはマシに見えるのも事実だろう。
強者は多くを語らない。表情と背中で語るのみだと聞いたことがある。
カルラの実力は本物ではあるものの、格好つけの発言が彼の質を大きく下げているのは良い例であろう。
「アキュラ。その言い方では、俺は厄介払いの案山子のために雇ったようにも聞こえるが?」
「3割方はあるな。どうしても女一人だと舐められまうからな。アンタみたいな色男は一人でも欲しかったのさ」
「軽々しい」
レイブラントは不満げにサンドイッチを食べ終える。
「タダの案山子だったら声をかけねぇよ。見掛け倒しだったら見向きもしないさ。中身も見てるよ。中身も」
「あははは……あ、このサンドイッチ美味しい」
気が付けば賑やかになったものである。
次の仕事は何処へ向かうのかはまだ決めていない。
この食事を終えたら適当に情報集めやら、依頼書が大量に張り出された街中に移動するやらで色々とやるつもりだ。
「なぁ、オマエら」
そんな空気の中、誰もが近寄れないオーラの界隈を平然と潜ってくる人影が。
「ここ最近、腕の立つ便利屋だとか言われているフリーランスって面々を探してるんだが、知らないかい?」
サングラスとマスクで素性を隠す謎の人物。
黒いトレンチコートの男がイソイソと声をかけてきた。
「あぁん? オレたちじゃん?」
「おお、これは好都合」
「何の用だい?」
「何、俺はこういうもんでね」
男が手渡してきたのは一枚の名刺。
企業のロゴと名前が書かれている。役職名には中間管理職。
「……見たことない企業だな?」
「当然。表舞台では活動しないもので」
どうやら裏の世界では有名な企業の人間だそうだ。
「話と言うのは単純な事」
単刀直入。トレンチコートの男は告げる。
「“アンタ達に仕事を依頼したい”」
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