第60話 継承

 さて、そんな果てのない召喚&送還行事に疲れきった私たちだったが、ある日私たちは何十回目の召喚を行った。もはや誰も期待していない。私はラノベを書きながら、クオリアは本を読みながら、苺は寝ながら(寝そべっているという意味ではなくガチで睡眠をとりながら)、セラが召喚をするのと同じ空間にいた。ちなみにセラも要領を覚えたのか、床に座りながらだるそうに呪文を唱えている。


 そんな中、ぱーっと光が輝いて魔法陣の中からまた新たな人物が現れる。

「な、何だこれは!?」

 現れた男はいつものように周りをきょろきょろと見る。そして雰囲気で何かを察したのだろう、突然こほん、とせきをする。

「そうか、ついに我が異世界に召喚されたか。我が力に目をつけるとはいい目をしているな」

 ああ、中二病パターンか。とはいえこのパターンも何度か見かけたので特に目新しさはない。


「ああ、じゃあちょっと力使ってみてくれる?」

 私は視線を手元の紙に向けながら投げやりに尋ねる。召喚された男も何か雰囲気を察したらしい。

「な、何で召喚しておいてそんな適当なんだ! くそ、我が力を見せてその認識正してくれるわ。出でよ我が闇の力!」

 突然彼の手から黒色の闇属性魔力が奔流のようにあふれ出す。横でごろごろしていた私は思わず本能的に危機感を感じた。

「バリア」

 私がバリアを張った次の瞬間、魔力の奔流がバリアを包み込む。苺やクオリア、セラも思わず防御魔法を使っている。


 魔力が消えた後、思わず私は姿勢を正して彼に向き直った。

「おお、なかなかやるね」

「何か召喚した奴に上から目線で見られるとイラっとするな」

 まあ確かにその気持ちは分かる。ただ私も最初の方はまじめな面接を行っていたので許して欲しい。

「では魔力もあるっぽいので面接に入ろうかな。あなたはどんな気持ちで異世界に召喚されてきましたか?」

「いや、いきなり召喚しといてそれはなくね? こほん、だが我の力でこの世界を支配してくれる……ふはは」

 男は無理やりそれっぽいキャラを作ろうとしている。


「実は今この世界、こういう状況で。はい、ラノベっぽくまとめといたんでちょっと読んでください」

 ついに説明すら面倒になった私はこれまでの経緯をラノベっぽくまとめることで説明を放棄するという名案を思い付いた。召喚されてくる人の六~七割がラノベ読者であるため、大体これで受け入れてくれる。今回の彼もその一人だったようで、私が本を渡すと熱心に読み始めた。時折、

「何かこの戦闘描写雑だな」「セラとミルガウスとクオリア、似たようなキャラこんな何人もいるか?」「クライマックスっぽい魔王戦の後長くね」

 などと内容についての独り言が聞こえて若干イラっとしたが何とか我慢する。二つ目の発言についてはむしろセラが拳を振り上げていたが。


「ま、大体状況は分かった。要は我が魔王として君臨し、世界に安寧をもたらせばいいという訳だな」

「そうそれ。実力を持っててなおかつそれを理解して実行してくれそうな人いなくて困っていたんだよね!」

「いや、正直お前が始めたことなんだから責任もって自分で魔王やれよと思わなくもないが」

 こいついちいち正論言ってきて腹立つな。とはいえ、正論を言ってくるやつということはまともなやつということでもある。

「という訳で魔王やってみない? 飽きたら後継者を召喚してみてもらって構わないから」

「くそ、もっとこう俺じゃなきゃ出来ないからとかそういう理由でやりたかった……こいつらでも出来たのに面倒だから俺がやらされるだけかよ」

「うん、これでも感謝はしてるから」

 こうしてめでたく次期魔王は決定した。時間がかかったせいですごいぐだぐだになってしまったがそれでも平和裏に譲位(?)出来たみたいで良かった。

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