第五十一話 背負うもの
≪
≪
≪
今、ここ≪
「今夜は死ぬまで楽しもうぜェ!」
≪塔≫の男が、装甲を剥いで身軽になった姿で迫る。
「……!」
鋭く息を吸い、≪月≫の狂気の中にいる恭子さんが迎え打つ。
≪月≫は、スキル名を宣言することもなく白銀色の日本刀≪
≪塔≫が両手に逆手持ちする≪雷帝剣≫が、≪月≫の≪月刀≫と連続して交差する!
両者ともに高速で移動しながらの、激しい打ち合い。
僕もまた、そこへ≪鳳凰翼≫と≪炎熱剣≫を携えて飛び込む。
会話はできずとも、狂気の中に在っても、僕は恭子さんと連携することができた。
≪塔≫が≪月≫を揺らせば≪太陽≫が支え、≪太陽≫が≪塔≫を揺らせば≪月≫が追撃をしかけた。
「こいつはすげぇ、最高だッ!」
瞬く間に全身が黒い粒子を放つ傷だらけになる≪塔≫。
しかし≪塔≫の動きは、傷が増えれば増えるほど洗練される。
僕たちが彼を超えれば超えるほど、彼は僕たちに喰らいつく。
「戦えば戦うほど、戦いたくなるッ!」
この男の願いは、どこまで行っても戦い、戦い、戦いだった。
彼にとって戦いとは、手段でも、目的でもなく、全てなのだ。
「俺はもっともっともっと! 強く! 激しく! 戦いてェのさ! 」
その瞬間、打ち合っていた≪塔≫の大剣が急激に重くなる。
願いの強さが、何よりも物を言うこの≪
「……!?」
≪月≫が、重量を増した≪雷帝剣≫に吹き飛ばされる。
「とどめだァ!」
≪塔≫がそれを見逃さず、追撃しようとする。
≪雷帝剣≫が、≪月≫へと振り降ろされる。
「≪
僕は、その前に立ち塞がる。
≪炎熱剣≫で、≪雷帝剣≫を受け止める。
その後ろで、≪月≫が、恭子さんが、声をあげる。
「ぐっ……新士、君。すまない。私は、私は君の隣で……!」
そう叫ぶ恭子さんは、今も半ば≪月≫の狂気に呑まれかけているようで荒々しかった。
悲痛な声色。
恭子さんがそれほどまでに、僕と一緒に戦おうとしてくれていたなんて。
僕の目指した≪正義≫。
いつも強くて、何度も助けてくれた恭子さん。
その憧れに、ここまで思ってもらえたなんて。
「恭子さん、大丈夫です」
僕は、恭子さんを安心させようとそう言った。
けれど、それだけじゃない。
今なら、本気で言える。
≪
思い切り、カッコつけさせてほしいのだ。
僕のこの情けない背中で、恭子さんにどれほどの安堵を与えられるかなんて、わからない。
けれど、守りたい人に背中を見せる覚悟が、時には何より大きな力になる。
僕はそれを、この≪神々の玩具箱≫の戦いで知った。
何度も何度も戦ってきたけれど、守るために戦える。そのことが僕の希望だった。
期待されても、期待されなくても、守りたいと思えるもののために戦えることが、ぼくにとっての誇りなんだ。
僕が求めていたヒーローとは、それができる男のことなんだ。
これが僕の願い。
今だけは、僕を信じて下さい。
それが僕の、力になるから。
「僕が、相手になる!
「はっはァ! 良いぜェ! お前がイチバンつえぇ、最強の男だ!赤いのォ!」
僕は≪鳳凰翼≫と≪韋駄天脚≫で≪塔≫を押し返し、恭子さんから距離を取らせる。
「僕は≪太陽≫の契約者、
「片見、新士。覚えたぜェ! 俺が本気で戦える唯一の男の名だッ!」
≪
≪塔≫は、≪雷帝剣≫を構える。
一騎討ちだ。
ここで、僕たちの未来が決まる。
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