第9章 3 週末、彼等は大忙し
今朝は朝から私の元へアラン王子から始まり、次から次へと登校中に男性陣から声がかけられまくるスタートとなった。
「お早う、ジェシカ。」
突然ポンと肩を叩かれる。ヒイイイッ!何の気配も感じられずに突然肩を叩かれた私は先程のアラン王子同様、悲鳴を上げそうになる。しかもその声は・・・。
「何だ?その露骨に嫌そうな顔は?」
やはり・・・生徒会長だった。
「お早うございます・・・ユリウス様・・。お願いですから気配を消して、背後から突然肩を叩くのは止めて頂けますか?はっきり言って心臓に悪いです。」
恨めしそうに私は言う。
「そうか、朝から俺に会えて心臓が止まりそうに成程嬉しかったんだな?相変わらず素直になれないな、お前は。」
どこをどうとったら、そのような解釈に至るのだろうか?もういよいよ生徒会長は脳の検査と難聴の検査を受けないと手遅れになるのではないかと余計な心配をしてしまう私。
「それで、明日明後日の休暇の件なのだがな、何故俺の誘いを断るのだ?」
そこへ・・・。
「生徒会長!馴れ馴れしく僕の女神に近付かないで欲しいな。」
おおっ!そこに立っていたのは眩しい朝日を前に一段と美青年オーラを放つ怪しくも美しいノア先輩!
「本当に生徒会長は乱暴な態度しか取れないんだね。いい?女性に対してはもっと優しく扱ってあげないと駄目なんだよ。ね、ジェシカ?」
ノア先輩は優雅なしぐさで私の右手を取ると言った。
「ねえ、ジェシカ。もう一度尋ねるよ。どうして僕の誘いを受けてくれないの?」
「そ、それは・・・。」
ノア先輩のオーラにおされつつ、返事をしようとした矢先・・・。
「あ!こんな所にいたんですね!生徒会長!副会長!」
背後から数名の男性の声が聞こえた。私達3人が一斉に振り向くと、何故か彼等は物凄い勢いでこちらへ向かって駆けてくる。えええ?!い、一体何なの?
戸惑う私をよそに、何故か生徒会長とノア先輩はそれぞれ学生達によって捕らえられた。
「こ、こら!何をする!」
暴れる生徒会長。
「は、放せってばっ!」
ノア先輩ももがく。
すると彼等は言った。
「いいえ、放しませんよ!いつもいつもそうやって逃げて!」
「もうすぐ、大事なイベントがあるのは当然分かってるでしょう?!」
「我々生徒会が一致団結しないと仮装パーティーを開けないじゃ無いですか!」
「あなた方がいないので、ちっとも準備がはかどらないんですよ!」
等と口々に言われ、2人は問答無用で連れ去られていった・・・。今のは一体・・?
やれやれ、でも静かになった。再び歩き出そうとした私を次に呼び止めたのはダニエル先輩だった。
「ジェシカ、おはよう。今日もとっても素敵だよ。」
笑顔で私の前に現れ、さり気なく肩に手を回すダニエル先輩。うっ・・私はその笑顔に弱い。思わず顔が赤くなる。
「お、おはようございます・・。ダニエル様。」
「フフ・・赤くなっちゃってやっぱり君は可愛いね。」
相変わらずダニエル先輩のデレデレモード。これはいつまでたっても流石の私も中々慣れない。
「ところで、ジェシカ。本当に明日は僕と一緒に出掛けられないのかい?」
悲し気に言うダニエル先輩に思わず心がグラリと傾きそうになるが、これではいけない。明日・明後日は大事な補講があるし、1人ダニエル先輩の誘いを受けようものなら、この先にとんでもない修羅場が待ち構えているような気がする。
「はい、すみません・・・。明日から2日間は大事な補講があるので。」
「ふ~ん。それじゃ僕も出掛けるの辞めようかな・・・。」
ダニエル先輩がそこまで言った時・・・。
「そうだ、ブライアント。お前明日出掛けられると思っているのか?」
ん?誰だろう?いつの間にか私達の前に3人の男子学生達が立っている。あれ・・でもこの人達、何処かで見たような・・・?すると、その内の1人の男子学生が私に声をかけてきた。
「やあ、また会ったな?」
あ、思い出した!サロンで飲んでいる時に会った人達だ。その翌日もダニエル先輩とランチの時間にばったり会ったっけ。
「何だ・・・君達か。」
うんざりしたように言うダニエル先輩。
「何だじゃないだろう?今年は俺達がイベントの実行委員に選ばれたんだから、ちゃんと責任を果たせよ。いつも会議に顔を出さないし、準備があるのに逃げ出しやがって。」
「え?ダニエル様、実行委員だったんですか?」
意外な事実。全く知らなかった・・・。
「そうなんだよ・・・。今回は運悪くくじ引きでイベントの実行委員をやらなければならない事になって・・ね。」
ダニエル先輩は心底嫌そうに言う。
「何言ってるんだ!俺達だって好きでやってるんじゃないぞ?ほら、行くぞ!今後の予定が詰まってるんだ。当然明日だって準備があるから外出なんて出来ないからな?」
そしてダニエル先輩も拉致?されていく・・・。1人残った私は再び歩きながら校舎へ向かう。これまでのパターンを考えると、アラン王子、生徒会長、ノア先輩、ダニエル先輩、グレイとルークは除外するとして・・・となると最後に残るのは・・・もう嫌な予感しか無かった。
昇降口を抜けて、教室へ入ると案の定だ。
「ジェシカお嬢様!お早うございます!」
まるで餌を与えてくれる主人の元へ走って来る犬のように猛ダッシュで私の所へ走り寄って来るマリウス。出た。究極M男のマリウス登場だ。
「お嬢様、明日は私とセント・レイズシティへ絶対に行って下さいますよね?魔法の補講訓練があると聞いておりますが、何も1日中訓練を受ける訳では無いですし。それにお嬢様が一緒に来て頂けないと仮装パーティーで私の着るドレスを買いに行く事が出来ません!」
まるで縋りついてくるような犬だ。ギョッとする私。ちょ、ちょっと・・・人前で何言ってくれるの?恥ずかしいじゃ無いの!
しかもクラスメイトの何人かに今のマリウスの話が聞かれたのか、薄気味悪そうな目で私達を見つめる学生が何人かいた。ああっ!聞かれてしまった!
この馬鹿マリウスめ!思わず抗議の目でマリウスを睨み付ける。途端にピシッとマリウスのMスイッチが入るような音が聞こえた・・・・気がする。こ、このままではま・まずい!
時計を見るとまだ授業開始まで15分はある。よし、まだ余裕がある!
「マリウス・・・ちょ~っとこちらへいらっしゃい。」
私は手招きをして教室の外へと連れ出す。すっかりマリウスは従順な犬のように私の後を付いて来る。もしマリウスに尻尾があれば、きっとさぞ嬉しそうに振っていただろう・・。
廊下へ出ると私はマリウスの左手を掴んで、屋上へと向かって行く。
お嬢様どちらへ?と若干興奮気味に呼びかけるマリウスを無視して、私は屋上のドアを開ける。
「マリウスッ!あんな教室の目立つ所で仮装パーティーのドレスを買いに行くだなんて大きな声で言わないでよ!クラスの皆に知れ渡ったらどうするの?!私達変人扱いされてしまうかもしれないわよ?!」
気が付くと私はマリウスを壁際に追い詰め、襟首を掴んでいた。マリウスの顔が眼前に迫っている。すると何故か顔を真っ赤に染めて目を閉じるマリウス。
「ねえ・・・?マリウス。それは一体何の真似・・かしら?」
私は顔を引きつらせながらなるべく穏やかに問いかける。
「お嬢様・・・さあ、どうぞ今すぐ私の両頬を平手打ちして下さい。そして、この間抜け、私に恥をかかせるなッ!このミジンコめッ!!と存分に罵って下さい。さあ、今すぐに!」
あ、駄目だ。これ以上何か言ってもマリウスを喜ばすだけだ・・・。
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