第4章 9 彼は主要キャラでした
「あら?ダニエル様。そちらの女性は・・・?」
どうやらソフィーは私が背中を向けて座っているので、誰なのか分からないらしい。
うう・・・。何故よりにもよってここにソフィーが現れる?でも仕方無い。振り向いて挨拶しようとする前に焼芋さん・・・もとい、ダニエル先輩は言った。
「ああ、この人はジェシカ・リッジウェイだよ。君の良く知ってるね。」
意味深な台詞を言うと、何故かダニエル先輩は私に近付き、腕を掴んで立たせると肩を掴んで引き寄せた。
「あ、あの?!」
突然の事に驚く私。なのに私の声が耳に入らないのか、ダニエル先輩は言った。
「ソフィー。見ての通り、僕達これから2人で食事に行くんだ。悪いけどもう僕に付きまとわないでくれないかな。ハッキリ言って迷惑だから。」
えええっ?!ち、ちょっと仮にも相手はこの小説のヒロインですよ?美少女ですよ?
「あ、あの。ダニー様。私もご一緒しては駄目でしょうか・・・?」
ええ?ダニエル先輩を愛称で呼んでるの?二人は近しい間柄なのだろうか・・?
松葉杖を握りしめ、必死の眼差しでダニエル先輩を見つめるソフィー。
「嫌だね。僕はジェシカと二人きりで過ごしたいんだ。それに君にダニーなんて呼ばれる筋合いは無いよ。」
冷たい声で言うダニエル先輩。うわっ!言っちゃったよ!この先輩。鬼だ、鬼のような人だ。優しい人だと思っていたのに・・・私の中でダニエル先輩のイメージがガラガラと音を立てて崩れて行く。ほら、ソフィーを見てよ。下を向いて震えているじゃないの。流石に気の毒になってくる。
「そ、そんなダニエル様。私、何度もお話しましたよね?ジェシカさんは・・・。」
ソフィーは何か気になる事を言いかけた。え?私が一体どうしたと言うの?ダニエル先輩に何か私の事を話していたの?心当たりがあるような無いような・・・き、気になる・・・!
「悪いけど、僕には関係ない話だし、第一君の話は一切信じられないよ。」
ソフィーの言葉をぴしゃりとはねつけるダニエル先輩。ねえ、一体先輩はソフィーに私のどんな話を吹き込まれたと言うのですか?
「ジェシカさん・・・。貴女ダニエル様にまで・・・?」
その時である。ソフィーが小さく呟いた。え・・・?何が言いたいの?
だが、ソフィーは俯いているからその表情は伺えない。
「さ、行こうか?ジェシカ。」
はい?!何?その甘ったるい声は?その優しげな眼差しは?!今迄の冷たい態度は何処へいった?!
ダニエル先輩は私の肩を抱くと、さっさとソフィーの側を通り抜ける。その時はっきり私は聞いた。
「どうして・・・。いつも貴女は私の・・・。」
私はカフェテリアを出る直前に振り向いた。ソフィーは何故か私の事を非難するような目で見ていたのだった・・・。
私とダニエル先輩はサロンに来ていた。食事に行こうと言っていた割に、連れて来られたのはサロン。お酒が好きなのですかと尋ねると、酒はあまり好きではないが、やむを得ず来ただけだと何だか訳の分からない事を言う
私達の前には度数の強そうなウィスキーにおつまみのチーズ、ピザ、ウィンナーとスティックサラダが並んでいる。ちなみに私の飲み物はソルティドック。
そう言えばサロンに来るのはノアに絡まれて以来だ。あの時、もしルークがいなければどうなっていた事か・・・。
「やっぱり君は変わっているよね。」
ダニエル先輩はウィスキーを飲みながら私に言った。一瞬驚いてグラスを取り落としそうになる私。
「何故ですか?」
今迄私の周りには変わり物の男性ばかりだったが、男性の方から変わり者と言われたのは初めてだ。
「だって僕とこうして今2人きりでお酒を飲んでいるっていうのに別の事を考えているからさ。しかも・・・その様子だと男の事だね。」
じっと私を見つめているダニエル先輩。
「な、何故分かったのですか?!」
ま、まさかこの先輩の魔法の能力は人の心を読む能力が・・・?
「そんなの様子を見ていれば分かるよ。心ここにあらずって感じだから。」
「す、すみません・・・。少し前の出来事を思い出してしまって・・・。」
「ノア先輩の事だろう?飛んだ災難だったね。君も厄介な男に目をつけられたね。」
え?!何故ダニエル先輩が知ってるのだろうか?もしかして・・・。
「あ、あの・・・先輩。もしかしてあの時ここに居たのですか?」
「うん、いたよ。」
何ともなしに言うダニエル先輩。えええ?!それなら何故助けてくれなかったの?
私は顔に不満が出ていたのだろう。
「何?その顔は。言って置くけど僕を責めるのはお門違いだからね。」
「何故ですか?」
余りの冷たい言い方に私は少しむっとして思わず言い返してしまった。
「だってその頃の僕は君の事を知らなかったし、相手は僕より学年も上のノア先輩だよ。どうして君の事を助けに入れるのさ。でもあまりに先輩の行動が行き過ぎと感じたら流石に止めに入ってたと思うけど。」
あまり信用できない話だが、取り合えず私は黙って聞いている。
「それに結局、別の王子様が助けに入ってくれたじゃないか。彼、アラン王子の従者だろう?王子という恋敵がいるのに彼は君にベタ惚れなんだね。」
え?誰が恋敵だって?おかしな事をいう先輩だ。ひょっとしてルークの事を言ってるのだろうか?
「別に王子は私の事を好きでも無いし、ルークだって私の友人の1人ですよ。」
私はカクテルを一気にあおると言った。
「君、本気でそんな事言ってるわけ?」
何故か目を丸くして驚くダニエル先輩。当たり前だ。だってアラン王子の恋のお相手は私では無くソフィーなのだから。ん・・・?待てよ。だったら何故ソフィーはダニエル先輩に懐いて?いたのだろう。
「まあ、いいよ。別に僕には関係ないからね。」
ダニエル先輩はおつまみのピザを食べると言った。
「ところで、ジェシカ。」
あ、初めて名前よばれたよ。
「はい、何でしょうか?」
「君・・・ソフィーと何かあった?」
またまた妙に気になる事を言う先輩。
「どういう事ですか?」
ズイイッと身を乗り出して私はダニエル先輩の顔を覗き込む。
「うわ・・・。ねえ、君。もしかして、酔っぱらっている?」
嫌そうに私から離れるダニエル先輩。
「お?珍しいな。ブライアント。お前がサロンに現れるなんて。しかも・・何だよ。女連れか?初めてじゃないか?女連れなんて。」
「本当だ。珍しい事もあるもんだ。」
「お前、ついに女嫌い辞める事にしたのか?」
その時、数名の男子学生が現れてダニエル先輩に声をかけてきた。
ダニエル先輩は露骨に嫌そうな顔をしながら言った。
「僕だって来たくて来たわけじゃ無いし、好きで誘った訳じゃない。どうしてもあの女の事で相談しておかないとならない事があったからさ。ほら、だからあっちへ行ってろよ。」
何だか失礼な事を言われているような気がするけれども、何も言うまい。
先輩はシッシッと友達たちをまるで犬のように追い払ってしまった。ん?待てよ。
彼等は先輩の事をブライアントと呼んでいた。ブライアント・・ダニエル・ブライアント・・?。
「ねえ?どうしたのさ。急に黙り込んで。」
突然ダニエル先輩に話しかけられた。水色の髪、深い緑をたたえた瞳に中世的なその美貌・・・。間違いない、ダニエル・ブライアント。彼はこの小説のメインキャラクターの内の1人だ・・!
「い、いえ。な・何でもありません。」
私は動揺を隠す為、追加で注文してあったマルゲリータを一気飲みした。
「ねえ、そんなにお酒飲んで大丈夫なの?」
流石に心配してくれるのかダニエル先輩は私に声をかける。
「いいえ。私、この程度では酔いませんので。」
と言うか、飲まずにいられない。こんな状況でシラフでなんかいられない。
「ジェシカ、さっき君にこのサロンへ来たのはやむを得ず来たと話したよね?」
「え、ええ。そうお話されていましたよね。」
私はさっきの話を思い出した。
「僕が学食へ行かなかったのはソフィーに今から君に話す内容を聞かれたくない為だ。」
突然ダニエル先輩は意味深な事を口にした―。
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