第一章 異世界生活 第十六話 VS魔弾スナイパー

13:00

私は森林の入口で仮眠をとっていた。この大自然の風は気持ち良くて、寝るのには最適だった。もっとも、仕事ではなかったら、もっと寝ていたいのだが。

今回の仕事は、行商人の車列の襲撃の手伝いだった。私がいなくても出来るのだが、護衛に外から来た傭兵がいるとの事で、依頼者に呼ばれたのだ。奴らのルート、時間を調べてくれて、同業者と依頼者の私兵をくれて、気前が良かった。更に報酬額もこれまでの依頼より高く、仕事の難易度が高いことが分かった。

私的には、これまでの仕事は正直言ってつまんなかった。護衛する奴らは皆張りがなかった。魔術を撃ってきても、届かず、それどころか、見つけることが出来なかった。正直言って退屈だった。しかし、今度の敵は私と張り合う武器を持っている。張り合いのある敵だ。私が心から戦いたかった敵だ!そう私は喜んでいた。

15:00

『クノ、聞こえるか?』

同じスナイパーのローファから無線が来た。

私は、目を覚まして、無線を繋げた。

「何?ローファ?」

『依頼者からの報告だ。あと三十分後、行商人の車列が来る。』

「了解。編成は作戦通り?」

『ああ、お前の狙撃で、馬車を転がす。俺達もサポートする。茂みで伏せている私兵は狙撃後、馬車の方へ突撃する。』

「了解。準備するわ。残り五分になったら連絡を。」

無線を切って、横に置いてある狙撃銃に近づいて、伏せて、銃のチークパットに頬を付け、スコープを覗いた。

この狙撃銃はM80A5という対物ライフルで、前の憲兵銃より威力のある12.7ミリを使っていて、人を真っ二つに出来る。

8倍スコープに、バイボット、チークパットを付けている。

この大口径のライフルで奴らと戦う。

スコープは調整済み。あとはタイミング良く狙撃するだけだ。

『クノ、残り五分だ。』

「了解。みんなの準備は?」

『いつでも大丈夫だ。』

「了解。車列は?」

『もう来てる。後三キロだ。』

同じスナイパーのキースが報告した。

「どいつを撃てばいい?」

『真ん中の馬車を頼む。』

「了解。」

そうこうしていると、

『来たぞ。』

左に向けると、車列が来ていた。

真ん中の馬車の運転手に狙いをつけて、息を吸って、真ん中の少し右を狙って、息を吐くのと同時に、

ドウン!

引き金を引き、二秒後、運転手の頭に命中。

更にローファとキースが狙撃して馬を撃ち、

馬車を転ばせた。

『ハハハッ!馬車が転んだぞ。見物だな。』

馬車は数十メートル転がって、道から外れた。他の馬車や車両は止まって、前後の車から銃を持った傭兵が出て来た。

『あいつら、狙撃されたことを知って、車に隠れやがった。ガンナーもだ。』

いい動きだ。ただ立っているだけでは的になってしまう。

『真ん中に人がいるみたいだ。どうする?殺っちまうか?』

ローファが言った。

私は狙撃しようと引き金に指をかけた時、煙が広がった。

『煙幕だ!』

馬車の周りに煙幕が張られ、見えなくなった。

『ダメだ。見えない。キース、いけるか?』

『こっちも見えない。』

「私も見えないわ。」

煙幕を張られたら、動きが分からなくなり、無駄弾を撃ってしまう。

『煙が晴れたら、私兵を突撃させよう。』

『いい考えだ、キース。クノ、それでいいか?』

「分かった。奴らの腕前を見てみたいわ。様子を見よう。」

『了解。』

『了解した。』

さあ外から来た傭兵よ、お前たちの力を見せてみろ!

スコープを覗きながら、そう心で叫んだ。



15:40

頭が朦朧としていた。何が起きたのか………

そうだ!狙撃されたんだ!

目を覚ますと、他のみんなが気絶していた。

衝撃で意識を失ったんだ。

俺は急いでみんなを起こし、状況を説明した。

「了解。レギー、みんなに指示を。」

加奈子が言った。

「今外に出るのは危険だ。スナイパーが狙っている。」

「じゃあ、どうする?」

カイムが言った。

「仲間に煙幕を張らせる。クラックス、聞こえるか?」

『はい、隊長。無事ですか?』

「ああ、そっちは?」

『隊長の馬車以外は無事です。ですがスナイパーが狙って、身動きが取れません。』

「こっちにスモークを焚けるか?」

『はい。それでしたら可能です。』

「了解。俺が合図したら、スモークを焚け。その内に外に出る。」

『了解。』

「聞いたか?俺の合図で外に出るぞ。いいな?」

「了解。」

「分かった。」

「了解!」

「合図を!」

全員の確認を得て、

「スモーク!」

合図してすぐ、煙幕が張られた。

「今だ!降りろ!」

俺達は急いで馬車の荷台を降りて、左側の岩に隠れた。仲間はその近くにいた。

「状況は?」

「スナイパーに狙わせていて、身動きが取れません。あと、車の奥に何人か隠れていました。」

「なるほど、狙いは行商人じゃなくて、俺達か。零。ハンヴィーに隠れて、近くの敵を始末しろ。」

「了解。加奈子、付いて来て。」

「分かった。レギー、気をつけて。」

二人は左のハンヴィーに向かい、隠れた。

それまで狙撃されなかった。

「クラックス、対物ライフルはあるか?」

「部下が持っています。」

俺は途中で狙撃にぴったりな高い場所を見つけた。

「そいつをここに、カイムたちは俺に付いて来い。」

クラックスが対物ライフルを持っている隊員を連れて来た。

「待ってろよ。」

俺は馬車の近くにあった、ココナッツみたいなものを取って、上に投げた。

すぐに、

バシュ!

ココナッツが粉々になり、ココナッツの中の汁が飛び散った。

位置は大体奥の森近く、距離約500メートル、スナイパーはおそらく複数。

俺は敵の位置、数を予想した。

「クラックス、みんなに森近くに制圧射撃を命令しろ。そのうちに移動する。」

「了解。みんな、やるぞ!」

支援隊は遮蔽物に隠れて、制圧射撃を開始した。

ダダダダダダンダダダダダダダダダダダダン

ダダダダダダダダダンダダダダダダン

ドドドドドドドドドドン

パラララララパラララララパララララ

「今だ!」

俺達はその間に前の高い坂に移動し、その後ろに隠れた。

「エリ、魔法が使えるよな。」

「ええ。」

「防御魔法で前に張れるか?威力を確かめたい。」

「分かった。」

「おい、対物ライフルを出せ。クーフェ、お前は………………」



16:00

『どうだ?』

『待てよ………うわっ!撃ってきた!』

奴らの銃弾が私達に向かって飛んで来ている。当たりはしなかったものの、ほぼ特定されているようだった。

しばらくして、

「奴らが射撃をやめたわ。」

奴らが射撃をやめたようだった。静かになって、

「さっき、奥の坂に隠れた奴らを確認したけど、何がしたいのかしら?」

『さあ、分からない。』

私達は彼らの情報を知らないため、どんな攻撃を仕掛けるのか分からなかった。

すると、

『おい!私兵が攻撃されている!』

ローファがそう言ったため、確認した。

一番右の車から射撃している二人の少女を発見した。私兵は反撃していたが、次々と撃たれて死んだ。

『マジか!二人がかりであっさり倒したぞ。』

ローファが驚いた。

『面白い!始末してやる!』

キースが狙撃しようとしたが、その前に二人は車に隠れてしまった。

『クソ!隠れやがった!』

キースが悪態を付いた。

「落ち着いて。まだチャンスはあるわ。」

『そうだ、キース。我慢しろ。』

『わ、分かった。………ん?今、何か光っ』

ドウン!

奥から銃声が聞こえた。

「!!」

『クソ!おいキース、大丈夫か?』

『………………』

「キース?」

キースのいた場所に顔を向けると、

「!!」

『キース!!』

頭がグチャグチャになっているキースを見つけた。

「まさか………狙撃!?」

ここから、奥の坂まで約500メートル離れている。そこから一発で仕留めるとは…

『クノ、こいつは強いぞ。』

「ええ、張り合いのある敵ね!面白くなってきた!」

私は撃ってきた所に一発狙撃した。

二秒後、

防御魔法、魔方陣が張られて、防がれた。

「クソ!」



16:05

「手前の敵は零達が倒した。」

俺達が移動している間に、茂みに隠れていた敵は零達によって倒され、あとは奥にいるスナイパーだけだった。

その間に俺はスナイパーの位置を確認していた。

「いた。500メートル、右。」

「え?敵の位置が分かるの?」

エリが聞いてきた。

「一瞬、スコープの反射光が見えた。」

「お前、目がいいんだな。」

「軍時代に鍛えられた。目はいい方だ。おい、銃を坂の上に置け。」

隊員が、

「分かりました。少佐。」

と言った。

「お前、元陸軍か?」

「はい。あなたの戦功は聞いております。」

「もう一回、守護神の力を見ることが出来るぞ。」

「楽しみです、少佐。」

「元だ。」

そして、隊員は狙撃銃を置いた。

M98Bバレットか。こいつはシールズ時代、結構撃ったなぁ。またこいつを撃てるのか。

「あとはボルトを引けば撃てます。」

「ありがとう。みんなのところに戻れ。」

「幸運を、少佐。」

隊員は下がった。

俺は伏せて、バレットを構えた。ボルトを引き、スコープを覗いた。

「クーフェ、観測を頼む。森の方を見てくれ。」

「分かった。イーグルアイ!」

すると、クーフェの目が青色になった。

これで敵の位置を探しているのか。魔術スゲー。

「イーグルアイは、目に魔力を溜めて、視力を倍にします。更に、人の探知も出来ます。」

「何か見えたか?」

「右に一人確認。何か構えています。」

「確認。狙撃する。」

スコープを覗き、照準を定め、少し息を吸って、吐くのと同時に、狙撃した。

ドウン! 

バレットの338,ラプアマグナム弾が放たれ、

わずか2秒の旅を経て、スナイパーに命中。

頭から血しぶきが広がった。

「命中。」

「………すごい!」

クーフェがそう言った。

ボルトを引き、空薬莢を落とす。

カチャンカチャン キンキキン

「殺ったか?」

カイムたちが聞いてきた。

「ええ、一発で命中したわ。」

代わりにクーフェが答えた。

カイムたちは感心した。

「エリ、敵の攻撃が来る。防御魔法用意。」

「分かったわ。フォースシールド!」

俺の前に魔方陣が展開され、その数秒後、

ガン!

魔方陣に弾が当たった。魔方陣に弾が食い込んでいる。

「凄い威力ね。あと二発で壊れるわ。」

「弾は12.7ミリ。対物ライフルか。」

すると、零から、

『スコープ光を確認。倒した奴の少し左上。』

「了解。」

すると、零達がいるハンヴィーに、弾が当たった。

『うわっ!こっちを狙ってきた!』

『レギー、もう一人スナイパーがいる。左奥の岩の上。』

ガン! ガン!ガン! ガン!

零達のいるハンヴィーに、敵のスナイパーが攻撃している。

「左の奴から狙撃する。」

そして、照準を合わせ、息を吸って、

ドウン!

発射。

二秒後、岩ごと削って、左から撃っていたスナイパーに命中。血しぶきが上がり、岩に付いた。

「命中。次をやる。」

ボルトを引き、薬莢を落とす。



クソ!ローファもやられた!もう私しかいない!

私の注意を引くために車を撃っていたローファもすぐに狙撃され、死んだ。

こうなったら、

「ファイヤーアロー!」

私の周りに火の矢を出し、撃っている方に放った。



「火の矢が飛んで来る!伏せて!」

クーフェがそう言って、弓を出し、上から飛んで来る火の矢に、

「ウォーターアロー!」

水を纏った矢を放ち、すべての火の矢を撃ち落とした。

「ふぅー。」

「伏せろ!」

クーフェが慌てて伏せた。

ガン!

魔方陣に弾が命中した。あと少し遅れたら、クーフェが狙撃されていた。

「下がってろ!」

俺は最後のスナイパーに照準を合わせた。

すると、そのスナイパーが立ち上がって、対物ライフルを構えた。

いいだろう。勝負だ。

俺も立ち上がって、バレットを構えた。

照準を定め、息を吸って、吐くのと同時に、

ドウン!

撃った。その二秒後、俺の顔の左側に弾が貫通し、魔方陣が破壊され、弾が通り過ぎた。幸い、弾で擦らなかった。

相手のスナイパーは倒れているが、生きているようだ。手を上に上げている。

「俺が確かめて来る。全員周囲を警戒。俺だけ奴のトドメをさす。」

俺はバレットを置いて、相手のスナイパーのいる場所に向かった。



自分が撃たれたのは初めてだった。弾は内臓を貫通し、私のお腹を削った。口から血が溢れ、咳き込む。そして、地面に後ろから倒れた。

ああ、空、きれいだな。

突然そう思った。なぜかは分からない。空がこんなにもきれいだとは思わなかった。

手を上に挙げてみる。手は血まみれで、赤くなっていた。

ああ、こんなにも血だらけだなんて。

ローファもキースも狙撃され、私兵もやられた。そんな集団に賞賛を送りたい。特に私達を一発で倒した奴に。

そう思っていると、誰か近づいてきた。

私は直感的に私を狙撃した奴が来たと思った。そして私の視界に人が入った。日陰になっているおかげで、そいつの姿を見ることが出来た。

そいつは見たことがない軍服に、防具を着た、私と同じ位の少年だった。



俺は魔弾スナイパーの姿を見ることが出来た。そいつは20歳になる前の赤髪の少女で、腹の周りが血だらけだった。緑のカッパに、ズボン、そして、上は下着だけだった。

こんな少女が魔弾スナイパーの正体だとは思わなかった。横にM80A5が転がっていた。いろんなところに血が付いていた。

「き……きたね………私の………死神…」

女が話しかけた。

「お前が魔弾スナイパーか。女のスナイパーだとは思わなかった。」

「たとえ………女でも…殺し屋に………なれる………常識よ……」

内臓をやられている。長くはもたない。

「あんたが………私を………撃ち抜いた……スナイパー………ね………」

「ああ。」

「よく見ると………あんたは………地獄を見た………………目を………している………」

やはり、同業にはすぐばれるか。

「私も………見たわ…地獄を………」

「俺は、お前ぐらいの少年兵をたくさん殺したことがある。女のスナイパーは久しぶりに見たな。」

「あんた………元軍人………ね……」

「………………」

「戦場で、いろんなところを………見たのね………」

俺はこの女の話を聞いた。

「私は………元は………普通の市民………だった………ある時、私の………村が………戦争で焼かれ………家族が………死んだ………村のみんなも………死んだ………その後………私は殺し屋に………育てられて………」

「そのまま殺し屋になったのか。」

「そうよ………その殺し屋に………狙撃技術などを………学んだわ……それで………食べていけるように………」

この世界は地球より残酷だ。親や、戦争などで殺し屋になったり、娼婦になったりするなど不幸な人生を歩む子供達が大勢いる。そして、最後は残酷な死が待ち受けている。

「殺しで………狙撃していく内に………私の心が………どんどん………なくなっているように………感じた………人じゃあなくなった………みたいに………」

その話だけで女が悲惨な人生を過ごしたことが分かった。アフリカでも、テロリストに教育された少年兵が、目的も無く、ただ命令されただけで殺す機械になってしまった少年兵は多い。最近は、少女達も戦争に参加して、戦って、命を落としている。理由は家族の為、親友の為、兄弟の為に戦っていることが多い。たが、その多くは、男を楽しませる道具になったり、少年兵達に強姦されたりと、

残酷な運命に遭う少女達が多い。

「お前が………私を………解放してくれた………ありがとう………これで………家族の元へ………行ける………」

「………」

「お前にひとつ、頼みがある。ガハッ!」

女の口から血が出た。

「………楽にしてくれ………」

俺は拳銃を抜き、女の頭に向けた。

「お前、名前は?」

「名前は………ない………いや、クノ………私はクノだ………」

「クノ、お前はちゃんと墓で眠れる。俺が作ってやる。お前は自由だ。だから、安心しろ。」

女の顔が変わった。

「本当か?………よかった………ありがとう………私の死神………」

「死神じゃない。俺はレギーだ。」

「レギー………ありがとう………」

「………」

バン キンキキン

………………………………。

「レギー、終わったか?」

………………………………。

「レギー?どうしたの?」

………………………………。

「レギー?何で泣いているの?」

「おい、どうした?」

………………………………

「………クノ、さようなら。」

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