第12話身長

「あれ?ゆう君、身長伸びた?」


「マジで?」


渚は、自分と比べた。


「ショック!ゆう君の方が身長高い!」


「やった!」


渚は、何故か涙ぐんでいた。


「何で泣くんだよ?」


「嬉しくて。」


「そっか。」


渚はいつもゆうより身長が高かった。

最近、モデルの仕事を始めたようだ。


「モデルは、バイト。」


「大変なんだろ?」


「まぁね。」


弱音を吐かない渚にしては珍しい。


「俺も、バイトしようかな。」


「ゆう君、お坊っちゃんだから無理だよ。」


「お前だって、お嬢様だろ!」


渚は、ニッコリ笑ってそうだねと言った。


「モデルとか、女優とかやっててむなしいならやめろよ。本気でやってる奴にいつか負けるぞ。」


「ゆう君は、たまに良い事言うよね。」


そうじゃねーよ、中学生の時、天才って言われてた渚が心配なんだよ。最後に勝つのは才能じゃなくて努力するかどうかだとゆうは、思っていた。


渚は、確かに妖艶で大人の女性になりつつあり、色気が出て来た。


でも、ゆうは、そういう女が普通の女の子に戻るのが難しいと懸念してた。


芸能界は、そんなに甘くない。


数ヶ月後、渚は芸能界を引退した。


連日、渚の事をワイドショーは取り上げていた。


学校にもたくさんのマスコミが来た。


ゆうは、渚を近所の河川敷に呼び出した。


「お前、スゴい女優だったんだな。」


「気が付くの遅いし。鈍感。」


「俺のせいか?」


「そうだよ。ゆう君に言われて目が覚めたのかもしれない。」


渚は、晴れ晴れとした顔をしていた。


「何だよ、スッキリした顔しやがって!」


「ゆう君は、わたしの未来の責任者だからね!頼んだよ。」


意味わかんねー。


だけど、ゆうは、静かに頷いた。




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