イニティウムタウン

<イニティウムタウン>


その町は、そう名付けられていた。<始まり>を意味するラテン語<イニティウム>から命名され、住人達は町の名前として単にイニティウムとも呼んだ。


現在の人口は、百人あまり。構成としては、メイトギア人間が二十八人。DNAをコーディネートされたクローンが三十三人。コラリス、コライン、コルツェウィ、コルドレイ、コレルフ、コルトロイス、コルシックスが生んだ人工不顕性感染者の乳児が十人。メイトギア人間が生んだ人工不顕性感染者の乳児が三人。メイトギアが四十数体という形だった。出産を控えているメイトギア人間も何人かいるので、その数は今後増えていくものと思われる。


一見しただけなら普通の人間と何の区別もつけられずに日常生活を送る住人達が暮らすそれはもう、町の中心に大きな商業施設があるという点を除けば普通の田舎町という風情であった。


生活物資は複合商業施設に残されていたものを再利用したものが多かったが、それと同時に、服などについてはメイトギア人間の手によって家内制手工業的に生産も始まっていた。壁の外では農耕も始まり、そちらはCLS患者や患畜の襲撃もたまにあることもあってメイトギアが従事し、農作物の生産も開始されている。ちなみに、CLS患畜が現れた場合は捕獲して食肉として加工することになる。まあ、メイトギアはその為の疑似餌とも言えるだろう。


そんなイニティウムタウンの中で、サーシャは自分と同じくらいの年齢にも見える子供達と楽しげに遊んでいた。あや取りをしたり、おはじきをしたり、ケンケンパをしたり、ゴム飛びをしたりと、本当に普通の子供として毎日を送っていた。


そのサーシャ達の様子を見守る、二つの人影があった。コゼット2CVドゥセボーと、アリスマリアHであった。


「いやいや、実に順調のようだねえ。結構結構」


アリスマリアHが満面の笑みを浮かべながらそう言うと、コゼット2CVが、穏やかな笑みを浮かべて、


「はい。これもすべて、博士のおかげです」


と答えた。以前は表情筋モジュールが故障していたり、情動を司る部分のソフトウェアにも不具合を抱えていたことで能面のような仏頂面しかできなかったものが、博士に修理してもらったことで本来の機能を取り戻していたのだ。


サーシャの為にこうして町まで作ってくれて、自分のことも修理してくれて、コゼット2CVはアリスマリアH(メルシュ博士)にとても大きな恩義を感じていたのだった。


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