レオノーラAM308

さらに続けて三棟目、四棟目の収容棟が完成し、リルフィーナが確保したCLS患者も次々と収容していった。それらにも当然、コラリスらと同じ処置を施し、それでもなお生き延びたものには、<コルヴィア><コルフュンフ><コルセクス><コルスィーベン><コラクト>と名付けていった。


コルヴィアは、六歳くらいの幼い少女のCLS患者だった。体液の循環を心臓に頼らず全身の筋肉を細かく動かすことで行っていたCLS患者は、酸素や栄養が十分に全身に行き渡らない為に動きが緩慢で、しかも体の一部が壊死し腐敗していたりしたのだが、コルヴィアには他のCLS患者に襲われた時についたと思しき傷はあるものの壊死した部分は見られなかった。この為、十分に体が小さいと比較的体液の循環がスムーズに行われる故に壊死まではいたらないものと思われた。


コルフュンフは、二十代から三十代くらいの成人男性のCLS患者だった。コラダムと同じで比較的損傷が少なかったことで心臓の動きが回復しても出血が少なくて済み、生き延びたのだろう。やはりコラダムと同じく精子の採取が行われ、妊娠の実験の為に使われた。


コルセクスは、五十代から六十代くらいの男性で、まずは経過を見るだけにとどめられた。


コルスィーベンは、三十代から四十代くらいの成人女性で、採取された卵子がコルフュンフの精子と人工授精させられ、やはり妊娠させられた。


コラクトは、十一歳から十二歳くらいの少年だった。なので当然のように精子の採取が行われ、今後の実験の為に保存されている。


ちなみに、コライン以降の名前は、偽生(Counterfeit Life)+ドイツ語の数字の英語読みという形でつけられていた。その辺りにはあまり拘りがないらしく、センスも感じられなかったが、どうせ自分が区別できればそれでいいので、博士本人は気にしていないようだった。


メルシュ博士がリヴィアターネに降下して一ヶ月余り。着々と研究の為の準備が整っていく。三体目のメイトギアはレオノーラAM308という、要人警護仕様のモデルを持たない純粋な民生用で、緩くウェーブがかかりふわっとした印象の亜麻色の髪そのままにふわっとした柔らかい印象のある、見た目だけでなくその仕草や振る舞いにも愛らしさを感じさせるメイトギアだった。メルシュ博士がそんな彼女につけた名前は<エレオノーラ>。CLS患者の世話係として起動させたのである。


彼女の主な役目はCLS患者に食事を与えることと、各個室の清掃、及び健康状態の管理であった。


「は~い、お食事ですよ~」


空腹になり動き出したCLS患者に対して小動物や魚を食事として与え、かいがいしく世話をする姿は、一見すると微笑ましくも見えるのだが、CLS患者の異様さとも相まって、得体の知れない不気味さも、見る者によっては感じてしまいそうな様子なのであった。


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