第37話:樹は朝比奈に頼る

 朝比奈はスマホのバイブレーションで反応し確認すると、どうやら樹からの相談であったようだ。


『朝比奈に頼みたい事がある』

『どうしたの?』

『天宮の誕生日を知りたい』


 樹の方を振り返る朝比奈。その顔はニマニマとしていた。そんな朝比奈に樹は前を向くように目線だけで、支持する。


(ちぇっ)


 つまんなそうに前を向く朝比奈。だが、朝比奈はようやく樹が行動に出たことに、内心でガッツポーズを取った。


 だがなんの為に天宮の誕生日を聞くのか、そこを樹に尋ねた。


『どうしてまっしーの誕生日を聞くの?』

『それは、日頃の感謝を込めてプレゼントでも渡そうと思っていたんだ。頼めるのはお前しかいないんだ』


 再び樹の方を振り返ると、手を合わせて懇願していた。

 朝比奈は戻りスマホで打ち込む。


『いいよ♪ 任せて!』

『助かる』


 そして昼休みになり、朝比奈は昼食を食べ始める天宮へと話しかけた。


「まっしー、あかねっち一緒にお昼食べよ~」

「結花さん。いいですよ」

「結花、いいよ~」


 そんなこんなで天宮に机をくっつけて食べ始める三人。


「樹、購買に行かないか?」

「……だな」


 席を立ち一条と共に購買へと移動した。

 その際に朝比奈と目が合い口パクで、「ま、か、せ、て」と言っていたので、樹も「頼んだ」と同じく口パクで返した。


「結花さんどうしたのですか?」


 不思議そうに思った天宮が尋ねるも朝比奈は、気にしないで、と笑みを浮かべて返した。

 少しムスッとする天宮であったが、朝比奈と陽ノ下は気づかなかった。


「樹、結花に何か言ったのか?」


 購買に向かいながらの道で一条は樹にそう問うた。

 別に一条には隠す意味もなかったので、正直に話すことにした。


「実は――」


 樹は一条に天宮の誕生日を知らないことと、もし過ぎていなかったのなら日頃の感謝を込めて何かプレゼントを渡そうとしていたことを話した。

 それを聞いた一条はニヤニヤとうざったらしい笑みを樹へと浮かべていた。


「……なんだよ?」

「いや別に? 樹もそう言うことをするんだなぁって思ってな」

「喧嘩売っているのか? 売っているなら買うぞ?」

「悪い悪い」


 謝る一条は続けて口を開いた。


「そうだったのか。だから結花に聞くように言ったのか」


 樹は頷いた。

 そんなこんなで二人は購買で昼食を買い食べながら話すのであった。


 一方その頃、天宮たちはというと。

 朝比奈は自然な形で会話の流れを誕生日の方へと持って行った。


「あかねっちって誕生日いつだっけ? 多分聞いたことない気がする」

「言った事ないね。私は六月二十日だからもう過ぎちゃったよ~」

「そっか~、何か誕生日プレゼント上げようとしたけど」


 シュンと残念そうにする朝比奈。


「結花は?」

「私? 私はね~十一月十八日だったの。つっちーから誕プレ貰っちゃった!」


 聞かれた朝比奈は嬉しそうに話をする。

 それからどんな誕生日プレゼントを一条から貰ったかを自慢した朝比奈は、本命である天宮へと尋ねる。


「まっしーはいつなの?」

「私も気になる~。いついつ?」


 朝比奈と陽ノ下の二人は天宮へとズイズイっと迫る。

 少し気圧されながらも、天宮は答える。


「私は十二月二十四日です。丁度クリスマスイヴの日ですね」

「まっしーもうすぐじゃん! でもその日は結局つっちーとデートになっちゃったから祝えなくでごめんね」

「気にしないでください」

「天宮さんもうすぐだったの。でも私もその日は予定があって……ごめんね」

「陽ノ下さんも大丈夫ですよ」


 三人の会話は喧騒によって消えていった。

 そこに丁度、樹と一条が教室に戻ってくるのであった。


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