第27話:事情説明とカツ丼

「それで、何故樹と天宮さんがここにいるんだ?」

「そうだよ。二人とも接点ないでしょ?」


 一条と朝比奈が、樹と天宮の二人にそう言った。

 確かに朝比奈の言う通り接点は無かった。


「実は、天宮とは家が近所だったんだよ。それをつい最近知って帰りとか話すようになってな」


 樹は二人にそう告げた。


「……ならなんで学校では話してないんだ?」


 そこは察しろよ、と一条に言ってやりたいが、どうやら理解してないようだ。


「お前な……いいか? 天宮は学校で人気だ。俺が話したらどうなると思う?」

「狙われる」


 樹の質問に一条は即答した。

 隣の朝比奈もうんうんと頷いている。


「だからだよ……」

「なるほど。天宮さんは理解しているのか?」

「はい」

「なるほど」

「そうだ。つっきーとまっしーは付き合ってるの? こんな所に二人で居るんだからそうなんでしょ?」


 朝比奈は樹と天宮にそう言った。一条も朝比奈と同じように思っているようだ。

 朝比奈の発言に、樹と天宮は顔を赤くし、慌てて否定した。


「ち、違う違う! どうしてそうなった!?」

「ち、違いますよ! 私と桐生さんはそんな関係では!」


 樹は顔を横にブンブンと振り、天宮は両手を顔の前でブンブンと振って否定する。


「だってなあ?」

「だってねえ?」

「「親密そうだったし」」


 息ピッタリにそう言った二人に、樹と天宮はさらに否定した。それから付き合っていないことが本当だと、 分かり何とか納得してくれた。


「でもどうしてこんな所に二人が?」

「実は──」


 樹は事の顛末を二人に説明をした。


「そうだったのか。それでここに」

「な~んだ。期待して損した」


 何を期待していたのか問い詰めたい樹と天宮であったが、お腹が空いたので安田屋の人気メニュー、わらじカツ丼を注文した。

 樹はカツを二枚、天宮が一枚を頼んだ。


 注文を待っている間、一条が樹に聞いた。


「この後どこに行くの? 俺と結花は秩父ミューズパークのイチョウ並木を見に行くんだけど」

「お前達もか?」

「達ってことは、樹と天宮さんも?」

「ああ」

「はい」


 どうやら一条達とは行先が同じようであった。

 ならと、秩父ミューズパークに一緒に行くことになった。


「秩父ミューズパークを見終わった後は秩父神社に寄って帰るんだ」

「そうか。こっちは先に行ったから秩父駅でお別れだね」

「みたいだな」

「まっしーと離れたくないよ~!」


 朝比奈は席を離れ天宮に抱きついた。


「え、あ、あの朝比奈さん?」

「結花でいいってば!」

「え? わ、分かりました。では結花さん。離れてもらっても? 少し苦しいので……」


 苦笑いをする天宮に、朝比奈はしゅんとした表情になり席に戻った。


 それからこれまで行ってきた場所を話しているうちに、カツ丼が運ばれてきた。


「はい。わらじカツ丼お待ちどうさま」


 テーブルに置かれたカツ丼を見て、四人はゴクリと息を飲んだ。

 カツにかかったタレの匂いが鼻腔をくすぐる。

 そんな匂いに、四人の腹がぐぅ~っと音を立てて鳴った。


「食べようか」

「ああ。冷めないうちに」

「では」

「はい」

「「「「いただきます!」」」」


 こうして四人は、至高で最高のカツ丼を食すのであった。


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