第19話:デートの打ち合わせ

 土曜日になり、天宮と約束した打ち合わせ当日。


 出て行く際に菜月に問い詰められた樹だったが、男友達と遊びに行く、と言って誤魔化した。

 天宮の家に行くと言ったら、菜月は絶対に着いてくるはずだからだ。


 樹は天宮のマンションへと向かっていた。

 前日の夜、樹は色々とプランを練っていた。二人で決めようとは言っても、ノープランで話を進めるわけにはいかない。


 それからマンションに到着した樹は、天宮の部屋番号を入力してインターホンを鳴らす。


「──はい。天宮ですけど」

「俺だ。今着いた」

「桐生さん。ちょっと待って下さい。今開けます」


 少しして入口が開いた。


「どうぞ」

「ありがとう」


 樹はエレベーターに乗り天宮が住む十階へと向かった。到着しインターホンを鳴らす。

 扉越しからパタパタと足音がして玄関の扉が開き天宮が顔を出した。


「お待ちしてました。どうぞ入って下さい」

「お邪魔します」


 中に入り天宮に言われるがままソファーに腰を下ろす。


「丁度11時ですし昼食を作りましょうか」

「そうだな。それじゃあまた指導お願いします」

「はい。とは言っても簡単な料理になっちゃいますけどね」

「簡単な方がこちらとしてはありがたいけどな」

「ふふっ、相変わらずですね」


 微笑む天宮の表情は今でも慣れない。

 そんな樹であったが、天宮の指導の下料理を作り始めるのだった。


 結果だけ言うと前回と同じような出来であった。

 天宮は、四十点ってところでしょうか、と言っていた。

 そして、樹と天宮はソファーに座りデートプランを話す所であった。


 ここは男の樹がプランを練るのが役目なのだが、樹と天宮は付き合っている訳ではない。なのでお互い同意の上でのデートプランを立てるのだ。

 付き合っていたのなら、樹は悩みに悩んでデートプランを立てていた事だろう。


「その、こ、紅葉を見に行く際のプランを立てましょう」

「ああ。それで一応はこちらでプラン練って見たのだがどうだ?」


 樹は天宮に一枚の紙を渡す。樹のプランはこうだ。


 朝、秩父鉄道に乗り長瀞へ。

 そこで川下りをして紅葉を楽しむ。紅葉を楽しんだ後は昼食を取る。次に歩いて宝登山神社を観光。最後にバスで秩父ミューズパークでイチョウ並木の紅葉を見るといった感じだ。


「神社は近くだったからだけど……どうかな?」

「私も考えてありますけど、同じく宝登山神社は入ってますね」

「そうか」

「はい。ですが秩父ミューズパークってなんですか?」


 天宮は知らないようだ。

 秩父ミューズパークとは市営の公園である。そこには『旅立ちの丘』と言う場所があり、卒業ソングとして有名な『旅立ちの日に』にちなんだ名前である。

 ここからは秩父の夜景が見れ、朝だと雲海も見れる事がある。

 樹は今回、時間があれば夜景を見たいと思っていた。

 別に告白をする訳でもなく、ただ単に一度見てみたかったからである。


 それらを踏まえて樹は天宮に説明をした。


「そうだったのですか。私も小学生の時に歌った記憶があります」

「どうだ? 天宮さえ良ければそのまま夜景を見てみたいんだけど」

「構いません。私も秩父の夜景を見てみたいです」


 樹はホッと胸を撫で下ろした。

 だが、天宮の行きたい所があるか聞かないといけない。なので樹は、天宮に行きたい場所があるかを尋ねるも無いとのことなので、それからルート等を話し合ってプランを立てるのだった。


「今日はありがとうな」

「いえいえ。紅葉楽しみにしてますね」

「おう。それじゃあまた学校で」

「はい。また学校で」


 こうして樹はマンションを後にするのだった。

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