第13話:天宮からのお誘い

 何事もなく二日が過ぎた。

 そんな日の放課後の帰り道。


 ピロリッ


 樹のスマホからメールの着信音が聞こえた。

 画面を見ると天宮からであった。

 メールを開き内容を確認すると、どうやら夕飯のお誘いのようだ。


 天宮の家にお邪魔した際に誘われたのだ。

 樹には断る理由もないので、行くとメールを返した。

 すると直ぐに返信が帰ってきた。


「返信早いな……」


 そう思いながらも樹は内容を見ると、どうやら買い物に付き合って欲しいそうだ。

 夕飯をご馳走になるのだから、そのくらいは構わない。

 場所は近所のスーパーだった。

 樹は天宮に、直ぐに向かう、とメールを返しスーパーに向かった。

 その際に楓にも夕飯は要らないと送っていた。


 到着すると、すでに入口付近で天宮が待っており、こちらに気づき手を振っていた。

 俺も手を振り返す。


「すまん、待たせた」

「いえいえ。二人分となるとそれなりに量がありますので……」

「そうだ。二人分になるんだ。半分──いや、少し多めに出すよ」

「別に構いませんよ。こちらが誘ったのですから」


 そうはいかないのだ。

 作ってもらって更には教えて貰うのだから、樹だってそれくらいはしたい。

 天宮にそう説得すると、折れたのか了承してくれた。


「わかりました」

「おう」


 二人でスーパーに入り食材を選んでいく。

 ふと思ったのか、天宮が樹に尋ねた。


「嫌いな物はありますか?」

「基本ないな」

「それでしたか。なら良かったです。それと今日食べたいのはありますか?」

「んー、簡単に作れて尚且つ美味い料理を俺に伝授してくれ」

「ふふっ、わかりました」


 そう言って天宮は次々と食材を入れていく。

 食材を見た樹は何を作るのか予想が出来ないでいた。

 分からない樹は天宮に何を作るのかを問う。


「天宮、何を作るんだ?」

「今日は唐揚げにしてみようと思います。簡単に作れますからね」

「唐揚げだと……!?」

「え? はい。そうですが……ダメでしたか?」


 樹は首をブンブンと横に振って否定した。


「大好物だ。これは楽しみだ」


 唐揚げと聞いて自然と頬が緩む樹。そんな樹を見て、天宮は微笑んでいた。

 それから少ししてスーパーを出た樹と天宮。

 もちろん袋は樹持ちだ。


「半分以上も出して頂いてありがとうございます」

「気にするな」


 そんなこんなで天宮の自宅へマンションへと着いた。


「さあどうぞ。上がって下さい」

「ああ。お邪魔します」

「では直ぐに着替えてきます……覗きはダメですよ?」

「しないからな!?」

「ふふっ、分かってますよ。桐生さんは紳士ですからね。材料はそこのテーブルに置いておいて下さい」

「はいよ~」


 そう言って天宮は着替えに向かった。

 樹は材料をテーブルに置いて、前と同じようにソファーでぐてーっとする。


 今日は唐揚げと聞いて、いつもよりテンションが高い樹。天宮が作る唐揚げなら相当美味いだろう。

 内心ワクワクしながら待っていると、天宮が戻ってきた。

 今回の服装は部屋着用だろう、薄い茶色をしたワンピースであった。

 ワンピース越しでも分かる華奢な体つきだが、出るとは出て引っ込む所は引っ込んでいる。それに可憐さと清楚さが相まって──と考えていた樹の顔は少し赤くなった。


(いかんいかん! 今は唐揚げに集中しなければ!)


 そう自身に言い聞かせた樹は。頬を両手でパンッと叩き気合いを入れた。


「あ、あの何をされて?」

「気合いを入れたんだ。これから唐揚げを作るんだからな」

「そうでしたか。張り切っていても怪我はしないようにお願いしますね?」

「任せろ」


 そんな樹を見て不安になる天宮であった。



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