第7話:学校での日常
翌朝、樹はいつも通りに学校へと向かった。
学校に着いた樹は一年三組の教室の扉を開けて中に入り、窓際の一番後ろの席に座った。
ここが樹の座席である。椅子に座りボーっと外を眺めていると。
「樹おはよう」
「……ん? ああ、一条か。おはよ」
「何かあったか?」
そう声をかけたのは
つまり男の天敵である。
「つっちーおはよう!」
「おはよう
そう言って一条に抱き着いた彼女の名前は、
「あ、つっきーだ。おはよう!」
「朝比奈おはよう」
「……何かあったの?」
「僕もそれを聞いていたんだ」
「つっちーもか」
二人は樹を見る。
(天宮のことも話せないしな)
「いや、そろそろ紅葉が始まったなって」
そんな樹の回答に、一条と朝比奈の二人は窓の外を見た。今は十月下旬と言うこともあり、ようやく色づき始めたところだった。
「そういえば秋だねうっちー」
「そうだね」
「そうだ! どこかに紅葉見に行こうよ!」
「いいね。どこにしようか? 結花は行きたいところある?」
「ん~、そうだな……あっ! 秩父の長瀞ライン下りで紅葉を見たい!」
そういった会話は他の所でやっていただきたいところだ。
丁度そこに教室の扉が開かれた。入ってきたのは――
「まっしーだ! おはよう!」
朝比奈はそう言って天宮へと手を振る。
そのあだ名はどうなのかと朝比奈に問いたい。
「朝比奈さんおはようございます」
天宮は聖女の様な微笑みで朝比奈に挨拶を返した。一瞬だけ樹を見たのだが、すぐに視線を逸らされてしまう。天宮はそのまま自分の席に向かった。天宮の席は――樹の右隣だ。
一条は樹の目の前、朝比奈は天宮の目の前となっている。だから一条と朝比奈の二人は、樹の近くで話していたのだ。
聖女様の隣である樹は男子から恨まれているのだが、いつも寝てばっかりなので危害はないと思われているけど……
キーンコーンカーンコーン
始業のチャイムが鳴り一限が始まるのだった。
授業中の樹はいつも寝てばかりだ。だが、しっかりと板書だけはする。ノート提出があるからだ。書いたら寝てまた書いては寝るの繰り返しなのだ。
そして授業が終わり昼食。
「樹、今日も一緒に昼食べない?」
「あたしもー!」
いつものように一条が樹に声をかけ、そこに朝比奈が混ざってくる。
いつも一条と朝比奈の三人での昼食となっていた。
(なんで美男美女のリア充カップルと一緒に飯なんだよ……)
いつも思う事だったが、思い切って樹は二人に尋ねてみることに。
「なあ。二人に聞いてもいいか?」
「どうかしたか?」
「なに~?」
「なんで二人で食べないんだ?」
その質問に一条と朝比奈の二人は顔を見合わせる。
「そりゃあな」
「ねぇ~」
「「樹「つっきー」が一人になるから」」
「うぐっ……」
樹の胸に二人の言葉が深く突き刺さった。
会心の一撃といってもいいだろう。
「お、俺は一人でも大丈夫だ」
「はいはい。それじゃ食べようか」
「だね!」
樹の机で食べ始めた。
チラッと隣を見ると、天宮は他の女子と一緒に食べていた。
そこに朝比奈が後ろを振り向き、天宮に話しかけた。
「真白ちゃんはいつもお弁当だよね? 学食は使わないの?」
その質問に天宮は朝比奈に振り向いて答えた。
「はい。学食だけですと栄養が偏ってしまうので、こうしてお弁当にしているんです」
「ほへぇ~。ってことは前々から思ってたけどお弁当は真白ちゃんの手作りなの!?」
「はいそうですよ」
キラキラと目を輝かせている朝比奈。
「一口。一口だけでもいいのでお恵みを!」
そんな朝比奈のわがままに、天宮は「ふふっ」と笑った。
「いいですよ。どうぞ」
そう言って、卵焼きを箸で掴み朝比奈へと上げる。
「あ~~んっ。ふむふむ。うんうん。これは……」
「どうした結花?」
固まった朝比奈に一条はそう問いかけた。
そして――
「美味しいよ! これはかつお出汁を使っただし巻き卵だよ! 最初のふわっとした触感とあとから口の中でにじみ出るよカツオの風味! 至高の一品だよ真白ちゃん!」
天宮の卵焼きを熱弁する朝比奈に、クラス中の視線が集まった。
「そこまで喜んで頂けたならよかったです」
「うんうん! 凄く美味しかったよ! ありがとう真白ちゃん!」
朝比奈は満面の笑みで天宮に礼を言うのだった。
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