閑話 魂魄改造による人間魔術兵器製造計画 霧崎氷太

前書き

 先進国において日本は最も魔術が未成熟な国家と言っていい。もし魔術的に攻撃された場合、雨木家の三種の神器以外に存在しない。原因はいくつか考えられるが、それらは一朝一夕で解決するものではない。数十年単位で解決すべき問題である。

 だが、占術による未来予測の結果、今後数十年の間に魔術戦争が発生する可能性はそれなりに高い事が判明した。その為、早急に対抗手段を用意する必要がある。三種の神器は使用者を止める手段が存在しない為、可能なら使用したくない。そこで、極めて高い戦闘能力を持つ魔術師を製作し、兵器として運用する。

 私は数百回の実験を繰り返す事により、従来の外部に上乗せする方法に加え、魂魄自体を改造する方法を開発した。これにより、従来法のみに比べて極めて高い演算能力と記憶力を有した個体を製作可能になると考えられる。


第一次

内容

 試作機の素体には、愛人に産ませた娘の氷華を使用する。魂魄増設可能範囲は魔術師としては中程度であり、一般的な魔術師の子息に施術を行った場合の指標に適していると判断した。

 今回は魂魄改造を行った個体が成長した時の能力の測定が主な目的である。その為、魂魄の崩壊や、成長出来ずに死ぬリスクが低下する様に、改造は控えめにする。

 魂魄内部の原型は残し、余剰空間に演算用組織を設置する。それに加え、予め物理法則の変化に対する耐性を持たせておく事で、学習効率を上昇させる。

 それに加え、以下の処置を行う事で兵器として有用な人格の形成を促す。

 興味関心に関する部分を削り、代わりに魔術に関する興味を増幅する。これにより、魔術以外の事に対する意欲が失われ、放っておいても積極的に魔術の学習を行うようになると考えられる。

 また、上位者に従わない兵器はどんなに強力でも欠陥品である。今回製造する兵器は強力な物になる可能性が高く、反抗された場合は非常に危険だ。その為、一度本人が使用者だと認めた相手には逆らえない様に設定する。また、誰かに従いたいという欲求を植え付けておく事で、容易に使用者だと認められるようにする。これにより、コントルールが容易な兵器として運用可能になると考えられる。


追記

 ついでに容姿が美しくなるように設計しておく。いざという時に政略結婚の駒としての価値が上がるよう、また、失敗して廃人になった場合、せめて慰み物ぐらいにはなるように男好きする容姿になるようにする。

 通常、肉体をDNAレベルで大幅に変化させると魂魄との乖離により違和感が発生する可能性が高いが、魂魄の方を合わせれば問題無い。


結果

 自主的に魔術の学習を行っており、興味の誘導は有効だったと結論付けられる。学習能力が極めて高く、7歳の時点で現代魔術を学んでいる。また、演算能力が高く、術式構築速度には目を見張るものが有る。


考察

 知識量、演算速度共に非常にレベルが高い。今後戦闘経験を積ませる事で、最終的には二十三魔人クラスの戦闘力を有すると考えられる。魂魄の改造は戦力の増強手段として有効である事が証明できた。

 ただし、完成には時間がかかる上、上位五名に匹敵する突出した戦力になると断言する事は出来ない。その為、更に強力な兵器の製造を行う必要が有る。


第二次

内容

 今回は実験ではなく兵器の製造が目的である。極めて高い魂魄増設可能範囲を持つ個体を発見したので、それを素体として使用する。魂魄改造には関係無いが、従来法によって向上する性能も高い方が良い。通常は幼少期に魂魄改造を行うのがセオリーだが、この素体はその差を覆す程の素質がある。

 今回は魂魄内部を漂白し、生命維持に必要な部分を除き全てを演算用組織にする。

 人格への措置は前回と同じ物を行う。今回は魂魄の原型が残らない為機械の様な人格になるが、兵器として運用する上では問題が無い。

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