10:結界
さて、続いて皆様お待ちかねの最後のレギュラーメンバー、オジョーさんの御登場です。
いやあ、初登場からこっち、ずっと応援メールが途絶えないんですよね。
流石は人気№2! しかも比率は男女同じくらい。
美人で、ああいうぶっ飛んだ人ですからね、まあ、判りますよ。ちなみに何度も言ってますが、オジョーはオとジョーの間をちょっと空け、語尾を伸ばしますんで、よろしく。
あれは確か――ヤンさんと会った二日後――おっと! まずはあの事を話さなくちゃ。
実はね、またもやとんでもない物が撮れちゃったんですね。橋に行った次の日にヤンさんとヒョウモンさん、委員長をうちに呼んでですね、録画してもらったものを見てもらったんです。
土曜日で、ヤンさんはお家がご存知の通り中華料理屋さんじゃないですか。
だから出前を持ってきてもらうついでにチェック、と。確かばーちゃんが肉丼で、委員長がカレーライス、ヒョウモンさんが担担麺で、僕は――なんだっけな? くそっ、お腹減ったし、寒いぜコンチキショウ!
で、えーっと、何が映ってたか、なんですが、橋の上から川面を、手前から遠くへとカメラを動かした時にですね、こう……川の真ん中に白い物が見えるんですよ。これ、察しの良いかたは判ると思いますが、途中から――五話くらいかな? OPに一瞬だけ入れてます。
「なんじゃこりゃ? 骨……か?」
ヤンさん僕を振り返るも、僕もさて、という顔をするしかない展開。
「拡大はできる?」
委員長の要望にばーちゃんが応えると、全員が、うーん。
僕とばーちゃんも昨日の夜、彩度やら明度やらをいじって観察したんですが、どう見てもそれはやっぱり巨大な骨に見えるんです。
太くて白くて、どこまでも長い背骨のような物が、川の真ん中に沈んでいるんです。
一体これは? と一応問題提起はしてみるものの、答えが出るはずもなく、ヒョウモンさんが、さっきこの川通って来たけど、こんなの無かったよ、とご報告。
お前ら、いつもこんなの撮ってるのか? というヤンさんの問いに、じゃあ、一応口外無用で、と謎宇宙と空の文様の鑑賞会。僕達三人は見飽きた物ですが、ヤンさんにヒョウモンさんはかなりショックを受けてたようです。
さて次の日の日曜です。この日は委員長と僕だけで撮影に出ることになりました。委員長曰く、ヒョウモンさんはショックが抜けてないとのこと。
まあ、それが普通でしょう。
というわけで、いつもの橋の上で作戦会議です。僕はカメラを回し始めました。
「今日はどうする? 今、抱えてるネタはあの川の大きな骨。それから――」
追ってくる口笛、落書きの確認、と僕が指を折ります。それから細かい噂、変なおまじないの数々。寺社仏閣で行ってない所もまだ十カ所近くあります。
「ねえ、この前の空の図形覚えてる?」
ああ、雷の時のアレか、と僕。すると委員長は小さい紙をポケットから取り出すと広げました。
それは町の地図を小さくコピーしたもので、委員長は続いて手提げバッグから透明な下敷きを取り出しました。そこには赤いマジックであの図形が描かれているのです。僕はすぐに委員長の意図するところを察し、ヘッドセットカメラのスイッチを入れ、手提げバッグを両手で持ちました。その上に委員長が小さい地図を置き、下敷きを乗せるのです。
「うん……こんな感じなのかな?」
委員長は下敷きをゆっくりと回転させます。円が欠けた部分に神社、しかも、一番大きいF神社、そして隣接するスケート場がはまりました。ここに片方を合わせると、もう一か所は繁華街の建物で、たしかオタクビルとか呼ばれている辺りです。ゆっくり回していくと今度は図書館の辺りがはまりました。その場合はもう一か所は『何もない山の中』になります。
「後は、どうやっても両方とも山の中ね。ってことは――F神社かしら?」
「うーん、委員長、これってどういうことなの? この円は、一体何だと思ってるわけ?」
委員長はずり落ちた眼鏡を鍵状にした人差し指でくいっと上げました。
「あたしの想像ってことでいい? 根拠とか理由とか一切無いけどいい?」
僕はカメラごと頷きました。
「結界……ってわかる?」
「えーっと、ゲームとか漫画で出てくる――バリヤーみたいな物でしょ? 外から色々と入って来ないようにする見えない壁、とか?」
今度は委員長が頷きます。
「この町は、ぐるっと大きなお寺や神社で囲まれた円の中にある。勿論、山とかがあるから、当然なのかもしれないけど、昔の人はそういう風に寺社仏閣を建てて結界を張った。更に円の中にも神社やお寺を建てて補強して、『悪い物が入って来れないように』した……どう?」
委員長はさっとカメラを取ると、僕の顔に向けました。この時、僕は初めて自分のあの顔を後で見ることになるのですが――まあ、皆さんが気に入ってくれたようで何よりです。
大昔の人が、そういう風に魔除けの目的とか、色々な理由で寺社仏閣を配置した。それはその通りでしょう。
でも、委員長が暗に言わんとしているのは、『誰かがその結界を意図的に壊し』、そして『だから、最近妙な事が起きている』という事です。ゲームや漫画ならすっと受け入れられる話です。でも、これは現実なのです。
なのに、僕はそれだ! とすっと思ってしまったのです。
納得した、と僕は簡潔に言いました。委員長は次の言葉を探しているようですが、結局口を閉じたままでした。どうやら隠し事に関してはまだ喋ってくれないようでした。僕は鞄からまとめノートを取り出しました。
「これはもう地図を作った方が良いね。寺社仏閣の位置、噂の場所を書き込んで――あ、今思い出したことがあるんだけど」
僕は委員長を手招きし、ノートのあるページを指差しました。そこにはポストに投稿のあった噂が書き連ねてありました。そのうちの二つが、図書館に関するものだったのです。
僕と委員長は顔を見合わせ、お互いに頷きました。喋らないと映像的に面白くないんですが、どうにもアイコンタクトとかが多くなっていけません。
まあ、ともかく、その日の行先は決まりました。
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