3話4Part 運命の曲がり角現象...的な?④

「おかえりー!!遅かったね!」


「或斗お〜!!」


「ど、どうしたんですか主様......」



 帰ってきて早々、瑠凪にくっつかれる或斗、当人にとってしてみれば信頼を寄せる主が半分涙目で抱きついてきたら困惑もするだろうが......そうなる要因である望桜からしてみれば、美青年に美少年が泣きつくというなんとも眼福極まりない眺めである。



「望桜がいじめるぅ〜!!」


「虐めてねえよ!ああ可愛い......」


「可愛いのはわかりますが、主様をあまり虐めないでくださいね?例え望桜さんが客人の立場だとしてもあまりに俺の目に余るような行為をされましては、俺としても手を下さなくてはならなくなりますから」


「あ、ハイ......以後気をつけます」



 ちょっとドスの効いた声で注意してくる或斗。或斗にとって主の色んな意味での身の安全の保証は、絶対的保守案件なのかもしれない。



「主様大丈夫ですか?」


「え?うん......だいじょぶだいじょぶぅ......」


「ほんとかなあ......」



 ソファで寝転がりスマホをいじっていた太鳳も起き出してきた。ここ数十分の中でも数回、2,3m動くのも面倒くさがる素振りを見せた彼女ですら瑠凪の泣きつく様に焦って起き出す。そういえば、或斗は瑠凪のこと"主様"って呼ぶの、なんでなんだろうな......



 ていうかさっきから妙に酒の匂いがするんだが。確か瑠凪がチョコを食べたあたりから......



「るったんるったん」


「なにぃ〜?」


「もしかして〜、ボクのウィスキーポムポム食べた?」


「たべたぁ〜......あったからぁ......だめ?」



 やっぱり酒が入ってた。にしてもウィスキーが入ってるとはいえ、あの小さなチョコを1箱食べたくらいで酔うなんて......やっぱり可愛いな、推しだわ。



「や、別にボクはまた買ってくればいいから構わないんだけど......大丈夫?」


「んえ、何がぁ〜?」


「舌足らずなニートの変わりに補足説明させて頂きますと、穀潰し的には問題はありませんが、主様の方は体調や意識等大丈夫ですか?との事です」


「だいじょうぶぅ......なんじゃない?」


「あるきゅんボクの呼び方変わりすぎじゃね?」


「貴様は事実穀潰しなニートだ。つまりどちらとも貴様を連想する言葉であり、呼び名として使っても問題ない」

 

「そっかあ!」


「だから貴様はいい加減働くあてを考えろ!」


「やだー!!」


「貴様!!」


「ボクは一日中家でゴロゴロしてたいのー!!!」


「ねぇ〜、或斗達はさっきからなにを喧嘩してるの?」


「さあな、俺が知った事じゃねえよ」



 瑠凪のキャラ崩壊が酷い......可愛いけど。



 にしてもこの3人は相当仲がいいな。"主様"って呼んでるあたり、やっぱり"ルームシェアしてる同居人"以外の繋がりがあるはずだ。でないとここまで仲良くはならない。色々聞くのは失礼だろうけど、いつ聞こうかな。



 ......もしかしたら、もしかするとこの2人は、喧嘩の延長線上でボロを出しそうだな。出してくれるといいな。



「なんで貴様はいつもそうだらだらだらだらするんだ!!」


「まーこれが僕の仕事ですからww」


「なわけあるか!!まったく......向こうに居た時といい引っ越してきた後といい、毎日毎日ぐーたらしてばかり......」


「怠惰性はるったんもでしょー?」


「馬鹿言え!!主様は絶対しなければならない仕事の約半分は自分でこなしてくれるが、貴様は1割しかやらないではないか!!」


「どっちとも五十歩百歩!!半分やろうが1割やろうが、全部やってる人のが偉いの!!」

  .

  「分かってるなら、城での書類整理もこっちに来てからの生活費稼ぎ等もきちんと10割やってくれ!!」



 ん?城?太鳳は仕事してないって会話で言ってたし、前に1度清掃のバイトで声をかけられて試してみた時に、太鳳の通う聖ヶ丘学園は課題がないことも確認済み、太鳳の性格上自分のしたいこと以外はやらなさそうだが......その言い方はまるで俺らと同じように向こうの世界から?まあ考えすぎかもだが。



 ......でもやっぱり引っかかるな。或斗達も向こうの世界から来たとか?まさかとは思うが......そのまさかか?



 そういえば対勇者最終戦の5日前くらいに、向こうの人......本気で誰だったかは忘れたが、最近異世界に移住しようとしている悪魔がいるって言ってたような......?俺の代の聖邪戦争の最終戦は約3年と割と短い期間で終わった。或斗達がここに住み始めたって言ってたのは......約3年前、時期ぴったり。と、いうことは......?



「或斗、俺が今から質問することに答えて欲しいんだが、もし違うなら違うってはっきり否定してくれ、いいな?」


「は、はあ......」


「お前らの元住んでたところは......"魔界"、であってるか?」


「......よくわかりましたね。その通り」


「!!......やっぱりな」


「......あるきゅん誘導尋問って知ってる?」


「誘導尋問......はっ、望桜さん、あなたもしかして......」



 或斗達は向こうの世界から来たという確証が得られた。そして或斗もまた俺の正体に気づいたようだな......いや、俺は元々日本の男子高校生·緑丘望桜、むしろ向こうで"13代目魔王"と名がついているから、むしろ正体はこっちの人間であったことだよな......



「ボクは会った時からなーんとなく気付いてたんだけどねえ......」


「13代目魔王、緑丘望桜!?」


「そうだ!俺は青森県出身の元男子高校生、そして13代目魔王緑丘望桜だ!」


「どうして俺達も魔界から来たって思ったんですか?」


「まずお前らがこっちに住み始めた"3年前"に、魔界では異世界に移住しようとしてる悪魔がいるって噂になってたんだよ」


「あいつら......」


「心当たりがあるんだな?そして今日、さっきのお前らの会話。城での書類整理って一体なんだ?向こうでなにか役割を貰ってると?」


「......その件については後日また詳しく説明させて頂きますね。とりあえず、俺達の本名は今教えときます。俺はアスタロト、元智天使で現毒驢族の頭領の悪魔です」


「そしてボクは下界の全精霊をまとめる精霊長であり悪魔のサルガタナスだよー!!一応あるきゅんの配下」


「そして主様......って、寝てますね」


「瑠凪......?」


 ソファの方を見てみると、規則正しい寝息をたてながら丸まって寝ている瑠凪の姿があった。バイトの時はいつも纏めてる長髪を今は後ろに流してるから、ちらちらと見え隠れする項が妙に色っぽい、可愛い。いや、人の目があるし嫌われたくないから襲わないけどね?でも2人がいない時にちょっかいぐらいは出すかも......?



 ......そういえばサルガタナスはともかくアスタロトって、高校生の時fwikipediaで調べたことがあるが、ベルゼブブの配下の悪魔だったはず......だがベルゼブブ......もとい鐘音は今本町の自宅で的李と家にいるはずだ、こっちで初めてあった時は1人だったし、鐘音に俺を連れ戻すよう言って顎で使えるような奴は少なくとも配下ではない。それに魔王の時も配下の悪魔はいたがアスタロトでは無かったし。



 ......とと、或斗が瑠凪のことについて話すみたいだな。



「主様はルシファー......元熾天使であり暁の天使長......そして7罪の"傲慢"の肩書を持つ大悪魔です」


「ルシファー......って、あの悪魔か!たしか地獄の長......?」


「まあそうですね......地獄というより魔界?でも長ではありますが1代目魔王様ではないですよ」


「1代目魔王にも敬称を使うんだな?」


「当たり前ですよ、位がかなり上ですから」


「そゆことね」


「と、ゆーことだから......改めてよろしくね?望桜くん?」


「よろしくお願いします」


「んお?お、おお......よろしくな!」



 瑠凪にやったようなこと謎のよろしくを2人に返されたな......まあいいか



 こうして、大悪魔3人が新たに知り合いに加わりました......兵庫って悪魔を引き寄せる街かな?



 ────────日が陰りはじめた頃の、とある本町の歩道にて......



『魔力......この辺りで魔力の反応があるわ......2日かけてやっと見つかった』


『間違いないな』



 魔力と相反する力である聖なる力·神気をまとった、ドイツ語下界語を話す2人の人間が街を見回しながらなにかを探していた......




 ────────────To Be Continued─────────────







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