27話3Part 友情③
「あんた達、これ一体何したの......?」
「ただの攻撃魔法だ」
ゲートでくたばった海獣の元に飛んですぐ、聖火崎から怪訝そうにそう訊ねられたので望桜はすっと答えてやった。
望桜の返答を受けて、聖火崎とその隣にいたルイーズは体表が痛々しく溶け焦げた海獣をまじまじと見ている。その合間に、時々望桜と瑠凪の方を振り返りながら。
望桜はその様子を見ていてふと、ある事についての疑問を抱いた。
「そーいやお前ら、ガルダは?あいつもここにいたろ?あいつはどうしたんだ」
「あー、今は葵雲が相手してるわ。私達はあんた達がこっちに来たから下りてきただけ」
「よく逃がしてくれたな......?」
「私も不思議だわ。普通、戦闘中は敵を易々と自分の視界から出したりしないもの。たとえ、出ようとしてる敵に攻撃の意思がなかったとしても」
そう言って、聖火崎はガルダと葵雲がいるであろう空を見上げ、望桜もそれに続く。
すると、そこまで遠くはない距離で葵雲とガルダが戦っているのが見えた。
......その様子は命懸けのものというよりかは、訓練のような、はたまたただのじゃれ合いのように見えるレベルでどこか真剣さに欠けていた。
「......もしかしたら彼女、あんまり戦闘慣れしてないのか、そこまで本気で私達のことを殺しに来てないのかもしれないわ」
「......なるほどな」
聖火崎の憶測は、望桜もおおよそ正しいと思った。
戦闘中に敵を自分の視界内......つまり、自分が行動を把握できる範囲から出すなど、兵隊や騎士等戦場に身を置く者から言わせれば言語道断である。
魔王時代、あんまり戦場に顔を出さずに安地から指示を出していた望桜ですら、それはないだろうと思うレベルで常識を逸脱した行動だ。
「......ねえ鐘音」
「何?」
聖火崎は、ルイーズを挟んで反対側にいる鐘音にふいと声をかけた。
「あなたの上には、どんな位の、どんな人が何人くらいいる?」
「は......?」
聖火崎からの問いに、鐘音は眉を
「あなたはおおよそ、
「うん、まあ」
「え、え?第拾参弦聖邪戦争の後?」
一言ずつ交わされた聖火崎と鐘音の会話に、望桜は繋がりそうで繋がらない言葉を反復する。
「あれ、あんた知らないの?」
「俺はお前らに急かされてポータルですぐ逃げて日本に飛ばされてから、それ以降のウィズオートの動向とか魔王軍残党がどうなった〜とかあんまり知らねえんだよ〜......」
「あ、そういえばそうだったわね。なら、順を追って軽〜く説明してあげるわ」
聖火崎は、そう言って鐘音の方を指さした。
「魔王軍の分布はラグナロク......だから、中央都と四方、群島を合わせて6つに分かれてたのは魔王だったあんたなら覚えてるわよね。そこから、南方が真っ先に壊滅して、そこから西、東、群島って続けて落とされた。そこまでは知ってるでしょ?」
「ああ。把握してる」
「そう、そこまではいいの。その後よその後」
この直後に聖火崎が言った事に、望桜はかなりの衝撃を受けた。
「あんた達がラグナロクで私達に討ち取られたことになった時、まだ北の鐘音......ベルゼブブが率いてた、魔王軍の北方制圧部隊は残ってたのよ」
「......は、ええええええ!?」
「はあ......」
聖火崎の言った事に大声を上げて驚いた望桜をちらと見て、鐘音は大きなため息をついた。
「いや、私も詳しいことは知らないけど......知らないのよ?でも、北の制圧部隊から捕虜的なのを取った?みたいなことをヘルメスから聞いたことがあったから〜、誰かな〜とは思ってたんだけど......まさか、部隊長のベルゼブブが捕まってるとはね〜......」
聖火崎の視線は、鐘音と望桜とを行ったり来たりしている。
「え、お前捕まったのか!?」
「戻れない理由があったんだってば......だって僕、ゲート術使えないし、かといってポータルスピア使えるほど魔力受容量少なくないし......でも何で勇者いなくて元帥だけだったのに捕まったんだろ僕......はあ......」
望桜の驚いた様を見て割と本気でしょげ始めた鐘音に対して、
「なんか悪かった!!」
望桜は思い切り頭を下げた。
「まあとにかく、そういうことがあったのよ。それで?あんたの上には誰がいるの?」
「あー......まあ、元帥は全員、かな。あとは大臣とか皇帝とか?かな。だからそんなに人数はいない」
「ふーん......」
「でも、勇者軍内での信用なんてそもそも少なかったし、何なら今日のでなくなったと思うよ」
「......、......なるほどね」
聖火崎は鐘音の説明を受けて、こくりと頷いてから上空で葵雲と戦っている(?)ガルダの方を見た。
その時、
「......、............?」
「......ん?」
「......まさか、ね......」
葵雲がピタリと動きを止め、どこか一点を見つめて固まってしまった。
聖火崎と瑠凪もそれを不思議に思い、聖火崎は葵雲が見ている方向を同じように見つめて首を傾げ、瑠凪はどこか怪訝そうな表情を浮かべて2人の見つめる方向を睨んでいる。
「ちょっと、どうしたのよ」
「............」
ガルダも思わず攻撃の手を止め、葵雲に向けて苛立ちつつも心配しながら声をかけている。
その直後に、
「っ、聖火崎っ!!」
「っ!!」
葵雲が見つめていた方向から、黒色の物体が轟速で聖火崎の元に突っ込んできて、辺りには不吉そうな黒色の
葵雲の警告と同時に、聖火崎は瞬時に聖剣を顕現させてそれを受けたが、
「ぐっ!!」
物体の勢いに負けて後方に勢いよく弾かれた。
気絶している海獣に勢いよくぶち当たり、海獣の血と思しき体液に塗れた聖火崎は、自身が先程までいた位置に人影が佇んでいるのを目撃した。
そして、その人物の周りには白い羽がひらひらと舞っている。人物の姿は、黒い
「あ、やばい......」
......あれは、味方ではない、よな......そう、望桜が考えていると、聖火崎がどこか慌てた声を上げたので、望桜は反射的にそちらの方に向き直った。
「聖剣、折れちゃった......」
「は?」
望桜の視線の先でしゃがみ込んでいる聖火崎の手にあったのは、
「......は?」
無惨にも真っ二つに折れてしまっている、聖剣·リジルの本体、
──────────────To Be Continued────────────
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