26話7Part Fake World Uncover⑦
「......やばいっ、潜って!!」
「わかっごぽごぷごぷ......」
葵雲は聖火崎に合図を出すと同時に聖火崎の体を水中に引きずり込み、その直後、
ドッ!!ッオオォォォォー......ンン......
魔力による大爆発が起き、辺りは一気に火の海となった。
プラズマが消失する前に、海獣に触れてしまったのだ。
ザプッ、キェア、キェアアアアアアアアアアアアアア!!!......
起きては欲しくなかった大爆発だったが、幸か不幸か海獣に幾分かのダメージを与える事に成功したらしい。
超至近距離でプラズマの大爆発を受けた海獣は、穏やかな夜の海の雰囲気を
「っぷは、よかった、人いなくて......はあー......」
「げほっげほっ、あ゛ー......ってかこれ、ウィズオートの海水みたいになってるじゃない......向こうのに比べたらだいぶ弱酸性だけど」
「わ、ほんとだ〜」
弱酸性(鉄の表面が溶けるくらい)の海水に浮かびながら、ふと2人は海獣の方を見上げる。
海獣が急に、ぱたりと静かになったからだ。
「あー、えーっと......」
海獣も同じように2人のことを見つめていたので、葵雲は困ったように「あー」だの「うー」だのと呻いている。
「......これはー、どういう......」
そうこうしてるうちに、海獣薄紫色の瞳が光を発し始めた。それと同タイミングで大きく開かれた口には、大きな魔力反応。
「あ、あははー......やばいかもー......?」
海獣は、心做しか怒っているように見える。
「ねえ、ちょっとこれやばそうなんですけど!!」
聖火崎がそう言った時には、既に海獣の口は2人の目の前にまで迫っていた。
「
パンッ!!!
キェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアィオアアアアアアアアア!!!
「っし!!」
「ないすー!!」
あんぐりと開け放たれた口に飲み込まれる直前で、聖火崎は聖弓を瞬時に顕現させ、海獣の内部目掛けて聖矢を思い切り撃ち込んだ。
聖矢は海獣の
海獣は、より一層大きい悲痛の叫び声を上げて大きく後ろに
「むこうも攻撃する気になったみたいよ!!」
「わかってる!!」
ひとしきり叫んだ後、海獣は2人の事を忌々しげに睨みつけている。
「ここで止めとかないと、大変なことになるからね!!」
葵雲はそう聖火崎に喚起しながら、とある景色を思い浮かべる。
......フレアリカや我厘、天仕、来栖亭らと共にいつの間にか放り込まれていた"偽物の日本"。
その日本では、今戦っている海獣とはかなり見た目等が違っているが、同じように海から出てきた謎の巨大な海獣によって、東京から岐阜辺りまでの街も森も山も何もかもを根こそぎ潰され、大パニックが起きていた。
"偽物"の世界でどこまで再現できていたのかは分からないが、現実で起こったら間違いなく逃げ遅れる人や、逃げられても多くの物を
その世界で本当にそれが起こっていたのかは不明だし、確認する前に大天使聖·ウリエルこと、
......繰り返すが、目の前の海獣は、"偽物の日本"で大パニックを起こした海獣とは似ても似つかない。
とはいえ、100mを超える大きな蛇がいきなり海から出てきて、しかも街にまでやってきたら......
......悪魔である僕にとっては好都合だけど、ゲーム屋さんとかパソコン屋さんとか、あとドッキリモンキーとかなくなったら困るし......的李に怒られるのも嫌だもん......!
葵雲は首を横にふるふると振った後、聖火崎と共に、強い敵意を向けてきている海獣の方に向き直る。
キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
「
「
聖弓と魔力弾が派手な音を立てながら次々に海獣に襲いかかるが、海獣にはやはり傷1つつかなかった。
「うわっ、とっ!?っぶないわね!?」
海獣が噛み付こうとしてくる速度が巨体の割には異常な速さで、飛行能力に長けた葵雲は大丈夫だが、聖火崎の方は途中からはもう、1発打ってから避けるの反復作業だけで手一杯だった。
「せっ、よっ」
打って、避ける。葵雲による攻撃と自身の聖矢が織り成す爆撃の音をBGMに、繰り返す。
「くらえっ!!っぶな!!」
打っ て、避ける。
「せやっ!!あ、相変わらずの硬さっ、わっ!?」
打って、避ける。
「そらあっ!!」
「聖火崎!!後ろ!!」
「え?」
打っては避ける、を幾度となく繰り返した直後に、聖火崎と同じように攻撃をし続けていた葵雲からふいと警告の言葉が投げかけられた。
聖火崎の口からそれに反応してぽろっと声が零れた、その時だった。
「いっ!?」
背中に重たくて鋭い衝撃が走り、足を伝って何かが滴り落ちていくのを聖火崎は察知した。
「出られたからって、油断したね」
後ろから聞こえてきた聞きなれた声に、聖火崎は少し驚きつつも納得したような表情を浮かべた。
「
......何故、自分達は、あの空間から出て、今目の前にいる海獣を倒したら、今起こっている事態が全て収束すると思ってしまったのか。
聖火崎が後ろを振り返って真っ先に視界に飛び込んできたのは、燃えるような赤色の髪と、対照的に暗い闇を
「っ!!」
「っと、いい判断」
自身の背中に深く刺さった、鐘音の硬質化した手......いや、もはや爪と化した指を手早く引き抜いた聖火崎に、鐘音は短く感嘆の言葉を述べる。
そんな鐘音の爪からは、聖火崎の血に混じって透明の液体が垂れていた。
「それ......」
「僕は
「へ、え......魔界の種族どうこうは知らないけど、あなたが虫を操る能力を持ってるのは知ってるわよ。ヘルメスからの
「......それだけしか、聞いてないんだ?」
「はあ?」
鐘音の煽るような物言いに、聖火崎はわざとらしく声を上げた。
普段は物静かで見た目の割に大人びている鐘音の顔には、珍しく子供っぽい悪い笑みが浮かんでいる。
「......まあ、いいや。次は本気でいくよ......っそれ!!」
その笑みをふっと崩し、鐘音は自前の虫の羽のような翼を
「ふっ、ぎ、」
風を切るような音と共に突っ込んできた鐘音の爪を、聖火崎は聖弓とは別に聖剣·リジルを顕現させて防ぐ。
爪と剣が擦れ合う耳障りな音が鳴り、神気と魔力が周囲にぶつかり合いながら漂っている。
「あれ、この程度?」
「あんたが刺したんでしょうが!!」
初めは拮抗していた鐘音と聖火崎だったが、途中から聖火崎が徐々に押され始めた。
──────────────To Be Continued────────────
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