✨16話1Part 学校にて
「よっと......おーい!呼び出しに遅れたのは悪かった。でもまだ居るんだろ?」
聖ヶ丘學園屋上、すっかり暗くなった中で
『ちょっと、早く見つけなさいよ!』
「いや、見つからねえんだってば......!」
あまりにも探すのが下手な望桜に待ち飽きた
『1番西にある倉庫の中にいるみたいなのだよ』
「うえ、マジか......!ってかお前それ早く言えよ!」
『これでも早く伝えられた方なのだよ!......やっとさっき会得して......うぅ......』
「あーわかったわかった!!すまん!探すの下手な俺が悪かった!!」
次に
「よっと......うわ、本当に居た」
「お、やーっと来た......!」
「るせえ!み、見つけにくいところにいるお、ぉお前が悪い!!......で、俺、を呼び出したのはお前だな?名前は......?」
倉庫の中に居た少年を見やった瞬間に望桜は胸が踊る感覚に襲われた。......こいつ、可愛い......!!
その感覚からくる顔のニヤケを必死に押さえ込みながら、望桜は少年に名を尋ねた。
「あ、なんか変な変換のやつ使って送っちゃってたから、分かりにくかったでしょ?ごめんね?」
「ああそうかよ!!......てか名前!!なんて呼べばいいのかわかんねえじゃねえか!!」
「あ、妾はファフニールっていうんだ!よろしくね!!......ていうか、
「へ?いや、えーっと......」
『望桜、会ったことあるのかい?』
「さ、さーて......」
倉庫の中に潜んでいた、望桜を呼び出した主の招待は......魔界から来たらしい飛龍の子·ファフニールであった。ファフニールは望桜が扉を開けるや否や中で立ち上がり、自身の目の前に立つ望桜の方を深緑の瞳でじっと眺めている。
ファフニールの言葉に唖然としている望桜の様子から、どうやら自分と会ったことを忘れているらしいと思ったファフニールは、自身が先程まで毛布代わりに使用していたフード付きの上質な生地でできたロングコートを見に纏い、フードを目深に被った。
「あれ、もしかしてこれでも分かんない?なら......」
そしてそれでもぱっと来ないという望桜の様子を見かねて、敬服の体制をとった。
「......!」
「......再びお目にかかることが出来て光栄です、13代目様」
「......え、ひょっとして......?」
「私、南方攻略軍の頭領としてシーツリヒターへと派遣された魔王軍幹部、ウァプラと名乗らせていただいていた者です。第拾参弦聖邪戦争の際は我が力が及ばず......申し訳ありませんでした」
『「ウァプラ!?」』
ファフニールの言葉に望桜と聖火崎はただ驚くことしか出来なかった。......あいつ、てっきり死んだかと......!と、聞いた瞬間に2人は思ったのだ。
それもそのはず、なぜならウァプラは第拾参弦聖邪戦争の際に2番目に早く打ち倒された魔王軍幹部であり、当時の聖剣勇者にて地上に堕とされたあと、心臓を抉り取られるというなんとも惨い殺され方をしたはずなのだ。
「お前、無事なのか......?」
「ちょっとちょっと、なんで生きてんのよ!!」
「あれ
「してねえから!!ってかなんで生きてんの!?まじで!!」
「ちょっとその死んでて欲しかったみたいな言い草、結構傷つくんだかんね!!」
「そっか悪かった!!ってか、心臓......」
「私見たのよ!?こいつが"鎧の聖剣勇者"に胸に聖剣を突き立てられて、死ぬところを!!」
「あー......ちょっと痛いけどなんとか生きてた、てへ☆......あっ!!」
あまりの驚愕の事実に下フロアで待機していた聖火崎が屋上に乗り込んできて、望桜共々ファフニールに大声で問い質している。その2人に若干気圧されながらもファフニールは自身のここ1年を話そうとして、いきなり血相を変えて望桜にしがみついた。
「おわっ!!」
「
「え、え、え、」
「ちょっとなんで脱ぐのよ!!」
「左足に大元があるんだから仕方ないかんね!!」
そしてそのまま軍服のズボンを下ろし始めた。望桜は慌てふためき、聖火崎はその下に短いジーンズを穿いていたことを確認して心から安堵の溜息を漏らした。
「これ......!」
「あん時の葵雲と一緒じゃねえか!」
ファフニールの両足、特に左足に濃く現れている時雨色の紋様を見て、2人はさらに驚愕した。
───『術者が最初にやれって命令したことを、死ぬか精神崩壊するまやり続けるんだよ、無理矢理にでも止めない限り。あの魔法で長時間操られ続けた人は、最終的に精神が崩壊して、ほんと生きてる人形みたいになる......』────────
葵雲......アスモデウスによって一同が襲われた時の、瑠凪の言葉を思い出して顔面を蒼白させる(元)魔王と勇者。その間にも紋様は濃いものへと変化していく。
「「リストレイント·コントローラー......!」」
「こんな変な呪いがかかっちゃってて......お願い
「いや、そうしてやりたいが解き方が......」
「"補正"があるでしょ?それを使えば......げほっ、ごほっ」
「望桜、水かなんか持ってきてやった方がいいかもしれないわ。でもこの学校、トイレ位しか水道がないのよ。トイレのじゃちょっと......」
......ズ、ズズズ......
「っ......!ねえ、早く!!げほ、がはっ......!」
「わあってるけど......!一体どうすれば............あ、」
その瞬間、望桜は約150年前、自身がまだただの日本の男子高校生だった頃の、そして魔王として召喚された当日のことを思い出した。
......あの時、部屋でごろごろしてたら、目の前にいきなり"小悪魔"が現れて......
───『やあ、緑丘望桜くん!!僕は××××、君を"下界"という世界の"魔王"として召喚士に来た小悪魔だよ!』
『お、おわ......夢みてえ、これ現実か......?痛っ』
『そんな事しなくても、これは紛うことなき現実さ!!』
そうだ、"小悪魔"がいきなり目の前に現れたんだ。そしてなんか頓珍漢なこと言い出して......でも俺はあの当時なんか娯楽に飢えてたから、急に居なくなったらとか隣のクラスの山田がどうとか考えずにその誘いに乗ったんだった......!
それで俺が頷いたのを確認して、"小悪魔"は目の前にゲートを開いて......いや、あの時俺はまだゲートとか知らねえから、なんだあれって怪しがって眺めてたんじゃなかったけな......
『唐突ながら君は今日から"魔王"だ!悪魔を束ねる、悪魔の王......!』
『うだでえええ!!!悪魔、本物の悪魔に会えんのか!?』
『うだで......すごい?......まあそうだね!本物の悪魔には会えるよ!彼らは元々は××だったけどね......とにかく、これに飛び込むんだ!!』
『おうよ!......おが!!わーちっとそどさ行っでぐっべや!!』
『おー津軽弁?』
『知らね、とりあえずこれにとびこみゃいいんだな!!』
『そそ......あ、ちょっと待って、その前に君に"補正"を授けてあげよう!まず......』
『"補正"?んだそれ......』
『......で、最後が"部下にかかってる呪いや魔術を強制的に解ける補正"!方法は......』
『説明が速い!!』
『......ね!』
『終わっちまった!!』
そうそう、説明が物凄く速かったんだよな......
『っと、そろそろ時間かな?そーい!!』
『うわ、ちょ、お前!!』
その後背中を思いっきり押されて、そのままゲートに飛び込んじまった。
『安心して!"補正"のトリセツは置いとくからさ!!』
『家電かよ!!!』
『だから、まあ頑張ってよ!!』─────────
「おい聖火崎」
「何よ」
「......ちょっと無こう向いとけ」
「は......分かったわ、さっさと済ませなさいよ」
そう言って聖火崎に反対側を向かせ、ファフニールの頬を自身の両手でがっちりと捉えた。......この方法だって、"トリセツ"に書いてあったんだもんな。
「......ちょっと失礼」
「けほ......んむ、はふ......」
「......はーっ......」
「......ん?」
そして聖火崎が顔を伏せている間にファフニールに望桜が何かをし始めたのだが、微かに漏れている息、少量だが発生している水がぴちゃぴちゃなるような音に聖火崎は顔を顰めた。
これも"呪い"の解除のため、解除のためなんだから......と意識を逸らそうとしても辺り一面真っ暗、気を逸らそうにもなかなか逸らせず、ますますいらいらしてくる聖火崎。......こんな時に何してんの?
「ん、むぅ......はふ、ん、ぅ......」
「......はー......」
「......ちょっと、望桜!この緊急時に何し......」
そう言って聖火崎が振り返った先には......
「あ?」
......ファフニールの口に自身の右手の人差し指を第2関節辺りまで突っ込んで、何やら全神経をそこに集中させてますよ......って雰囲気を醸し出している望桜の姿が。それを見て聖火崎は少し拍子抜けしてしまった。......や、別にそういうのを想像してたわけじゃないんだから......!!
「人工透析だよ人工透析」
「じんこー、とー......せき......?」
「ほら、肝臓がもうダメになってしまった人とかのために、定期的に体内中の血液を一旦外に出してから機会でろ過して体内に戻すやつだよ」
「それがどういう......あー、そういう事ね!」
「そ。"呪い"という名の
「よくそんな芸当ができるわね......」
「俺も仕組みは知らねえよ。ただ"補正"だっつって俺を召喚した小悪魔が言ってたからな、使えてよかった」
そう言って望桜は飛龍の子供の左足をさらりと撫でつけた。......確かに紋様が薄くなり、彼の息も先程よりはだいぶ穏やかなものに変わっていて。その様子に2人はどこか自分達の子供を愛おしく眺める夫婦のような表情を浮かべ、やっと気が置けるようになったと安堵のため息を漏らした。
「......はー、帰るか」
「そうね......」
ギギイィィ......
「望桜!水持ってきたよ!!」
「「遅い!!」」
その直後に天然水のペットボトルを抱えて屋上にやってきた
──────────────To Be Continued──────────────
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