3話3Part 運命の曲がり角現象...的な?③
......そしてなにより望桜にとって 例の青年·餅月或斗に、先日の件でお詫びとして昼食を奢ってもらうこととなった望桜。当初は外食の予定だったが、諸事情で家を空けられなくなった或斗の都合により、或斗の自宅で昼食をとる事になった。
それ自体には特になにもなかったのだが、問題は......
......その或斗の同居人が、絶賛嫌われ(?)中の瑠凪であるということ。予定の土曜日を 純粋に嬉々として待てない望桜と、客人の来訪を心待ちにしている瑠凪。土曜日には一体どうなるのやら......
......そして土曜日がやってきた。待ち合わせ場所は神戸ポートタワー。或斗曰く、同居人と観光に行くので望桜がそこで待っててくれれば、こちらから迎えに行くとのこと。望桜の家からはあまり距離は無いため、そこまで苦でもない。
「お待たせしました」
「おー!遅かったじゃねえか或斗!......と?」
時間通りに来た或斗......と同居人であろう美女。或斗は長いGパンにスニーカー、上にTシャツというカジュアルスタイル、同居人の彼女はノースリーブの上にジーンズ生地の上着を肩からかけており、膝上丈のミニスカという服装だ。......ほんま或斗は顔が整ってるし、彼女もめっちゃ美人なんだけど!
「ボクは沙流川太鳳でーす!好きなように呼んで〜!」
「おお!MINEで言ってた同居人か!」
「はい、こいつのことは気軽にニー「その呼び方はやめようねあるきゅん」
「あるきゅん......」
「その名前で呼ばないでください!......あの、なんとお呼びすればいいですか?」
「うーん、望桜でいいよ」
「わかりました、望桜さん」
望桜は顔では余裕をもっているつもりだが、心の中では興奮と不安がひしめきあってる。
......だって或斗がかなり可愛い。いや、ふつうにかっこいいんだけど、そこにプライドが高そう......ってか高いだろ、って所とちょっと童顔入ってるとことか可愛い!太鳳も普通に美女!最高だな!けど今日ほんとに大丈夫なのか??
「ところで、或斗達はこっちに来てどのくらい経つんだ?」
「そうですね......約3年?と言った所でしょうか?」
「へえ〜......そのことなんだけど、俺こっちに来てまもないから或斗達が良ければこの街案内して欲しいんだが......」
「ボクは別に構わないよー!」
「人と街を散策したりするのは楽しいですし、ちょうど俺も主様に何か買って帰ろうと思っていたところなのでむしろ大歓迎です。では行きましょうか」
「ある......だな!」
「おー!!」
─────────────そして或斗達の自宅へ......
「ただいまぁー!」
「ただいま戻りました」
「お邪魔しまーす」
僕の部下が帰ってきた。或斗と太鳳、それにあと1人誰かが......どこかで聞いたことがあるような声もした。誰だろう?
「どうぞ〜......て、望桜じゃん!なんで望桜が来んのさ!!」
「え......え......」
「え〜!!」
「あれ?人が多い方が良いって、言ってなかったっけ?るったん」
「う......」
またこいつは......太鳳は昔から人の揚げ足を取るのが大得意だ、ひょっとしたらそこらの大悪魔より悪魔かもしれない。そしてなんで望桜が......
「俺は昼食の用意をしてきますので、その間ゲームでもしてお待ちください」
「はーい!!」
「わかったぜ」
「うう......なんで望桜が」
(なんか悲しくなってきた......ベルゼブブが13代目魔王である望桜に会えるようちょっとだけ手を貸したら、あとはもう無干渉でいようと思ったのに......)
結構長くなるけど、もともとベルゼブブと僕は師弟関係、僕が下界に堕ちてきて、サタナエル率いる総計100万の魔王軍の軍勢が30万くらいにだった時から親交があって、んでその時から魔法陣の書き方を教えたり、魔力弾道の高速展開の方法とかを教えてるうちに師弟関係になった。
その時まだ生まれたばかりだったベルゼブブが属する蝿蟲族(グロースインゼクト)と親交のある一族であった毒驢族(ギフトエーゼル)の頭領であり、ベルゼブブの世話係だったアスタロト。そしていつしかその師弟関係であったことと親交のある一族の次期頭領によくしてあげてたってことで、蝿蟲族と毒驢族は魔王軍の傘下にすんなり入った。
そこから更に仲良くなって、いつしかアスタロトが僕の直属の部下になった。その関係でアスタロトの下についていた精霊族(ヒンメルガイスト)とその頭領サルガタナスも傘下に入った。そこから勇者軍に負けて、また負けて、更にまた負けて、それでも悪魔は兵を募って挑む。それはこの世界の平和のため。その理由は"あいつ"から託された僕しか知らない事で、まだ誰にも明かせないこと。
......その暗闇に包まれたままの下界の戦争に異世界の人間が召喚されて、また状況がややこしくなった。正直一旦魔王軍から身を引いてる僕らとしては、この世界をさらに混沌に陥れたこの13代目魔王 緑丘望桜には関わりたくない。異世界の人間が召喚されるっていう噂が流れ始め、その噂に確証があるってわかった時から一旦身を引いて、その世代が終わって忘れ去られた頃にまた戻るつもりだった。
だから心苦しいけど異世界人間魔王時の幹部であるベルゼブブの僕に関する記憶を消して、こっちの世界に引っ越してきた。というのも、ゲートに強く念じると行きたいところに連れていってくれるっていう伝承があるから、それを試して"戦争から一時的に身を引けて、且つ住んでる間は平和に過ごせる場所"って念じたらここが行先になってた。だからアスタロトに餅月或斗(もちづき あると)、サルガタナスに沙流川 太鳳(さるがわ たお)、そして自分に桃塚 瑠凪(ももつか るな)って名前を考えてもらって、住み始めたのが3年前。
この間偶然ベルゼブブに話しかけられたから、とりあえず望桜に確実に会える事を伝えておいて、そこではい終わりー!だったはずなのに......
「なんでぇー、なんでー!!」
「まーいーじゃん!!わるいひとじゃないんでしょ?」
「うう〜......」
「あ......」
どうしようもない感情を表すのにとりあえず呻いていると、或斗が小さいが声を上げた。なにかあったのかな。
「すみません......ちょっと牛乳が足りないですね......ちょっと買ってきます。おいニート!貴様は今のうちに奥の部屋を掃除しておけ!」
「だからニート言うな!」
「では行ってきます」
財布と最低限の荷物を持ってスニーカーの紐を軽く結ぶと、太鳳への指示とこちらに対する言葉を捨て台詞に、或斗は玄関から走って出ていった。
「あ〜......太鳳は......」
「ボクもちょっと片付けてくるね〜」
「えっ......」
太鳳も報告をしてから奥の部屋へと行った。
......え、まって厄介事の種である望桜と2人きり?
「......なあ、2人がいないからちょっと聞きたいんだが」
「な、なに......?」
「瑠凪は俺の事嫌いか?なら話しかけたりするのは辞めるが......」
「えっ......別に嫌いじゃ......ないけど......」
萎れた大型犬のように僕が座っている横に座ってきて、質問してきた。嫌いかと言われれば別に嫌いじゃないんだけど、こちらからすれば関わればめんどくさい事になるのは目に見えるから、関わりたくない。 でも悲しまれるのは......
「そうか?でも常に反応が冷たいから悲しいんだよな......」
「それは......まあ......その......」
「嫌いなら嫌いで結構だが、もしそうじゃないなら......改めてよろしくな!」
「えっ......うん、よろしく」
「......」
「......望桜?」
望桜の表情がちょっと微笑みが混じった顔になったかと思うと、急にうずくまって黙り込んでしまった。ここまできたらもういっその事関わるのも仕方ないかな、と思ってうんって返事したけど......こっちの世界の人間って脆いから、もしかして死んじゃった?でも悪魔とのハーフになったって聞いてるけど......
「......やったー!!俺お前と仕事以外のろくな会話したことなかったから嬉しいなーって」
さっきまでの空気が嘘のように軽くなった。望桜の顔は晴れ渡り、真夏の昼間特有の陽射しと部屋の照明が相まって、余計に嬉しそう見える。え?さっき僕なにをよろしくされたの?ただ今までと同じじゃなくて挨拶を返したり、冷たくするなっていうよろしくだよね?
「......そうだっけ」
「そうだよ!」
「......そっか、ごめんね?」
僕は面倒ごとは嫌いだから避けてたけど、偶然にここまで引っ付かれてちゃ、もう関わるしかないよね......だってバイト先は同じだしベルゼブブには声かけられるし、挙句の果てには或斗といつの間にか知り合いになってるし。
「......うっ」
「え?もしかして今度こそ心臓発作が......救急車......!」
「胸がくる......し......」
「ちょっと大丈夫!?スマホっ、スマホさっきどこ置いたっけ??」
「ちが......」
「何が違うの!?苦しそうじゃん、救急車呼ぶよ!?ちょ、スマホは......ほんとどこ置いたっけ??」
「か......」
「か?」
「可愛い......」
「......は?」
「可愛すぎて胸がっ......胸が......!」
「お前......人の気も知らないで......」
「あははwwごめんてw、え、ちょ、その頭の上に構えてる手は一体......」
「いっぺん死ね!!」
「いだっ」
「可愛いって言うな!俺はどっちかと言われればかっこいいって言われたいの!」
「そっかぁー......でもあれ?さっきのあんまし痛くなかったような......?」
「なっ、悪かったな貧弱で!!もーいい!確か冷蔵庫にチョコあったはずだから食べてくる!」
瑠凪は頭の上に構えた拳を、望桜の脳天めがけて勢いよく振り下ろした。途端にちょっと強い痛みと衝撃が走る。望桜が感想を正直に伝えると、瑠凪はまた怒りだした。そんな少年の怒号と青年の呻き声が聞こえる中、自室の掃除をしていた太鳳は、リビングの様子を見て......
「うるさいなぁ......」
と呟いたのは、よもや誰かに聞こえただろうか?
─────────────To Be Continued────────────
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