第32話 ヴィエッタという少女と、傭兵のこれから。

「お嬢様……」


青いツナギを着た庭師が、ヴィエッタに駆け寄っていく。


「はぁはぁ。くっ……。ローラ……っ」


苦しそうに胸をさする、ヴィエッタ。


先ほど男たちに嬲られてから、体の調子がおかしいのだ。


「体が火照るのですね? それではこちらにどうぞ。休む場所の用意があります」


目がうつろになったヴィエッタはとことこと、その誘いに乗って、ドアの向こうへと消えていく。


そしてそのまま、部屋の中へ。


ベッドに横になっていると……。



きぃ……。



「ロー……ラ?」


ドアが開く音がした。


しかしそこには、見知らぬ男が。


「君が、レナ殿に聞いていたお嬢さんかね……? なんと美しいっ! まるで粉雪のようにきれいな肌っ。さぁさぁさぁ、こちらに来なさいっ」


ヴィエッタを見るなり、上機嫌になったその男。


年を取り、かなり老練な爺さんが勝手に、しつらえられたベッドに座ったっ!


「はぁはぁ……。くっ。そん……な。何者ですっ!?」


ヴィエッタが驚き、声を上げるっ!


だが、抵抗はできない。


まるで力が入らない上に、そしてどこか……。期待があった。


この醜い男ですらもう……。



「このような若く美しい生娘を私にとはっ! なかなかレナ殿もわかっておられる」


早速と言った風に爺が舌なめずりしながら、ヴィエッタの胸をまさぐっていくっ!


老人にいやらしく小さめの胸を触られ、ビクッとはねる彼女。


「そんな、あの女ぁ……。うぅっ」


その体は、自分が知らないほど敏感でそして……。


「これほど濡れぼそるとは……。これでは苦しかろう。どら少し、軽くしてやろうっ」


そう言うと、ヴィエッタの下半身に手を伸ばした爺っ!


「あっ。あぁっ!? やっ、やめなさっ!? くっぁぁっ」


「ほれほれ……。良いじゃろ? 両方わしを欲しとるわぁ。ふひひっ」


ゆっくりと、胸を回す様に揉み……。


ついには、その白い肌のふくらみ全部を、あらわにされてしまうヴィエッタっ!


そして、老練な動きで2か所を同時に、弄び続けていくっ!


「くぅっ!? あぁ……あっ。アァッ?」


ヴィエッタは自分でも信じられない声を上げ、その指の動き一つ一つに、反応してしまうっ!


そして、爺を押さえようとする、ヴィエッタの腕に一際、力がこもった時……っ!


女は涙を流しながら、こらえた声をあげた。



「はぁはぁ……。レナっ。あの女め……。私を売り払ったのねっ!?」


涙をこらえ、自分の義母。


いや、自分を贄にささげた悪魔の名を叫ぶ。


よだれをたらしながら……。


「少し触っただけでこの様。ふむふむしかし、やはり若い娘はいいのぅ。わしは奴隷をたんと持っておるが、貴族は久しぶりじゃよ。」


ピクッピクッと、小刻みに震える白い肌をもてあそびながら、爺が懐かしそうに昔を思って笑う。


「昔は色んな貴族。いや、元貴族……か。わしが少し、王家に口をきいたせいで可愛そうに、家を失った哀れな元貴族。その娘や息子をたくさん買ってやったもんじゃ。だがやりすぎたからのぉ、それもできんようになった。懐かしいのぉ。ふっひっひ」


ヴィエッタの後ろに周り込みながら、ヴィエッタの体を舐め回す爺。


その美しい、透ける白の素肌には、汚い唾液が垂れていく。


そして、まだ下着の下にある、敏感な秘部を濡らしだす。


「あぁ……だめっ。くぅ、熱……いぃ。なんとかしてっ、あぁ」


「なんじゃあ、もぉ限界か~。若いだけに、仕方のない事じゃな。少し早いが、わしが直々に突く事にしようか。しかしまだ、時間はたっぷりあるというのに。惜しいのぉ」


「くぅ……。んんっ!」


何もせずとも、ビクビクっと震えるヴィエッタ。


苦しそうに唇を噛み、必死に湧き出る欲望を我慢しているのだ。


それを舐めるように見る爺。


これからこのヴィエッタを、長く楽しめるように計画を考え、そして……。



「……まぁ良い。楽しんでから考えるかの。これほど上物じゃ、滅多とないわっ! 後はそうさな、部下でも呼ぶかのぉ。そうすればまた勢いを戻すじゃろ。そしてまた、口で相手でもさせてやる」


そう言ってヴィエッタを腹の――。


汚い策略と、汚職を詰めた肉袋に、薬と快楽におぼれた少女を乗せたっ!


「ほれ、自分でくわえっ」


「はぁはぁ……」


それをぼーっとした顔で見る、ヴィエッタ。


もう彼女は、性欲の虜なのだ。


まともに脳が機能などしてないハズである。


「んっ……あぁ。入って……くる」


歓喜し、快楽の声を上げた女っ!


「ほっ……ほぉっ!? すっ、すごいぞ……君」


それは、この爺も同じだ。


まるで初めてのように、背中に快楽を感じ身震いをしたっ!


「はぁはぁ……。素晴らしい肉感。これはなんと、なんと……表現すれば良い? ほれっ……。ほれっほれっ、どうしたっ! 動かんかっ」


まるでおもちゃをねだるように、動きが止まったヴィエッタを揺らすジジイ。


すると……っ!



ドサッっ!



「ひぃっ」


「それで、あなた……。王家にコネがあるそうですが?」


上から別人が――。


雰囲気が全く違うヴィエッタが、聞いてくる。


顔はまるで、人形のようだ。


美しく恐ろしくそして、心から欲しくなる人形。


「答えなさい、男爵さん。もうあなたは、逃げられませんわよ」


「ひっ……ひぃっ」


男爵はこの時、攻守が交代するのを感じた。


その威圧力は段違いだったっ!


「どうするの? ほら、楽しみたいのでしょう?」


「はっはい……」


ぐじゅり……と、つながった部分が動く度、男爵はうめき声をもらす。


「では、私にあの方……。執政であるロベルト・ヘングマンを、ご紹介いただけます?」


「くっ、あの男は……うぅっ。無理だっ! いくらわしでも……そのっ。それに彼は君にとって、大敵ではないのかねっ!? 偉大なる王家、神聖政権を叫ぶ男だっ!」


快楽を封じられ、半ばヤケになって叫ぶ御老体。


くだんの男、ロベルト・ヘングマン。


彼は、神と王家の合一により、王家臣民を導こうとしていた。


この世界は、王と神は微妙な関係にある。


神にふっと一息で撫でられれば、王の冠がロウとなろう。


そう言われているのだ。


だからこそ各国、神への対応は最も喫緊で、切迫した大ごとである。


娘の誕生日の日、ついに今、ろうそくを消そうとしたその時に、神が欠伸をするとする。


そうなれば王は、踊って退屈を紛らわせに、短パンで馳せ参じなければいけない。


自分の母が息を引き取りそうなきわに、神がでんぐり返しする。


そうなら神の元へとマットをもって、笑顔で補助をせねばならなかった。



「良いのです。あなたはセットさえなされれば。ふふっ」


妖艶に笑い、おもちゃにするように腰を動かすヴィエッタ。


男爵のえも言えぬ顔にゆっくりと……、舌を這わしてやった。


「はっ……はい」


「ふふっ、良い子ね。ありがとう、お義母様」


彼女は笑った。美しい顔で。





「さてさて神様……。あんたが愛したって言うこの、けったいな世界で一日色々あったわけだが」


彼は考える、一人で。


やっと寝床で、一人っきりになれる場所。


今が頭を整理する為の時間である。


ここできちんと、コレからの事を考えなければならなかった。


毛袋……とでも言えばいいのか?


用意されたのは、毛布と呼べるほどたいそうな物ではない。


本当に、毛の袋のような物にくるまり、考えるジキムート。


「まずは地図、か。あれを見る限りはまず、歩いては帰れないだろうよ。唯一北に怪しい何か。ヴェサリオだったっけ? それがあるが」


どうやらヴェサリオはあまり、好かれていないようだった。


がしかし、4柱の教えが絶対のこの世界ならば絶対に、どうあっても通されないだろう事。


それは分かる。


では、忍び込めばいいのかと言うと……。



「あのヴェサリオに寄り添い、集まった都市。あれはお恐らく、相互監視だな。誰かが禁忌を冒さないか見てる。そんな所に単独なんて、無理だ。裏道でも知ってなくちゃあな」


この異世界が教えてくれたこと。


それは神が、自分より他人を愛することは耐えられない、という事だ。


その感情のどこかのに分岐点に恐らく、相互監視が存在する。


「そう裏道だ。裏から行く方法を探るしかねえ。これが、俺の世界に戻る為の、唯一の手掛かりって事になるか。そうなると……取れる手段は限られっからな。それは明日。そう、明日が正念場っ。その為に残ったんだっ!」


この場所でこうして、小汚い毛袋を抱いている理由はただ一つ。


自分がするべき事に最も、この場所が近かったからである。


手に知らず知らず、力が入る。


少し発熱してきた……。


おそらく自分が興奮しているのだろう事を察し、冷静になる傭兵。


そして、何か適当に他の事を考えるジキムート。



「しっかし、今日は色んなモン見れたな。特にこの世界の魔法……。だが俺は、アレは使えそうもねえ。これから1年踏ん張れば、なんとかなるだろうが。その時間はねえんだ。実践投入には全然だわ」


彼はあの後何度か、この世界の魔法を使おうとしてみた。


だがうまく、威力がある魔術にはならなかったのだ。


残念ながら彼も、第7階級程度なのだろう。


「印象に残ったのはあとは、宗教に神……か。神が現実にいるなら、その世界の人間も宗教もさぞや、素晴らしいのかと期待をしたが、どうだよ? へへっ。な~んも俺らの、神のいない世界と、本質は変わっちゃあいない。どこの国のどの世界の宗教でもそうだが、なんで宗教ってぇのは、人を狭める事しかないのかね? 神威(カムイ)だの〝リービア(尊神)″だの」


彼は常々思う。


何かをしてはいけないのなら、なぜ、それはあるのかと。


その答えとして良く言われる事。


それをしない事が重要な事がある、例えば犯罪などだ。


という説には彼はいまだ、納得ができないでいる。


「つまり神は、してはいけない事や犯罪を〝生み出した″んだよな? 無理くりに。でもそうだとするなら神は――。善良なる心の体現者様はそもそも、その行為を生み出せないはずなんだが?」


神は人間に教える為に、その行為を生み出した――。


という事は、神は決して自分がやらない事を〝無理やりに″生み出したことになる。


薬物などがそうだ。


コカインを使わない、自制の心を教える為にわざわざ、神様はコカインの元となるコカを、栽培どころか何もない所から生み出した。


そしてわざわざ調合する方法を〝編み出し″、成立。


合成までして、〝何も知らない無垢だった″サルの目の前に置いたわけだ。


合成をした時点で犯罪だと声高に、人間が叫ぶのにも関わらず。


殺人もそうだし、強姦に窃盗。


自分が決してやらない事を神とやらは、自ら率先して『人間の為だけに』、その方法を生み出した事になる。


「っていう、御託は良いんだよ。エゴを隠したいっていうのは見え見えなんだ、神の影に隠れずに、俺のエゴだっ! ってはっきり言えば良いのによ」


結局これになる。


彼は別に、犯罪を肯定するのではない。


だがそれを、さも神が与えた試練だとかなんとか、そうやって言い逃れる気持ち悪さに、嫌悪を漏らしているのだ。



「神を守ってんだか、自分を守ってんだか分かんねえのは、どの世界でも同じだったなぁ。あの〝アジュアメーカー(蒼の守護者)″と良い、街の奴らと良い」


彼の根底にある、宗教への考えがそこにある。


すると突然ジキムートは、豚鼻を鳴らす。


「……って言ってたら、無視されたな」


その言葉を口にしてから、自分の世界で数少ない、宗教都市。


そこにいながら一度として、勧誘されなくなった過去を持つジキムート。


ちなみに隣でイーズは、大笑いをしていた。


あまりに下品な笑いなので、豚鼻と良いという意味のナイス。


そして、名前のイーズをくっつけた、『豚バ・ナイス』と呼ばれていたという思い出。


「あぁ……。あいつの豚鼻聞きてえなぁ。ふふっ」


遠い眼をする傭兵。


何もかもを、置いてきてしまった。


ささやかながらも必死に、手放さず抱えていた何か。


自分が生きて得られたモノたち。



「異世界、ね。だが、神が愛する異世界ってのは不安だったが、安心したよ。神が人に優しいってのと、人が人に優しくなるのとは全く、関係が無いってのだけは分かった。それだけは満足させてくれたよ。悪くねえ、この世界。クソ神様、サンキュウなっ。ふあぁ」


嫌味を言って笑う傭兵。


騎士団もシャルドネ一家もピエロも、おばちゃんも……。


どれも、自分のいた世界の人間たちと、そう変わらない。


そして傭兵も同じ。


結局は神が居ようと居まいと、人間は変わらないのだろうか?


「あとは……なんだっけ? 言葉も適当に話せるし……字も読めるって事。……あとは、ケヴィンが……騎士にはなれないって事と、マナサーチ……なんであいつら……4色しか、集めねえんだ? あと……の……に。それ……と」


ゆっくりとそして確実に、彼は眠りの中に入っていく。


傭兵の疲れはピークだった。

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