空(そら)の時間

作者 天音 花香

空の中に生れ落ちるように、私は跳ぶ!

  • ★★★ Excellent!!!

 陸上部で走り高跳びに挑む少女が主人公の、切ない恋愛小説だ。主人公には気になる男子がいた。しかしその男子は、転校して違う中学校に行ってしまう。それでも主人公は、空を見上げて男子生徒を思い出していた。しかし、そこに男子生徒が死んだという知らせが届く。主人公はそれを認めなかったが、男子生徒の方が幽霊になって主人公の前に現れる。そして、幽霊と主人公の奇妙な生活が始まる。
 ある時幽霊は、主人公に一緒に走り高跳びをやってみたいと言う。主人公は跳んだ時に見える、一面の空が好きだった。それはまるで空の中に投げ出されて、時間が止まったかのような感覚だった。そしてその反面、刻々と表情を変える空のことも好きだった。そんな「空の時間」を共有した二人。徐々に惹かれていく二人の前に、主人公の幼馴染の男子が近づいてきて……。
 変わっていく周囲と、変わらない主人公。
 自分の感情が周囲と同じように扱われることが、嫌だった。
 変わりたくない。変わらない。変わったのは、周囲の方だ。
 そんな自分に、居場所なんて――。
 そんな主人公に、幽霊がかけた言葉とは?
 そして、何故主人公のもとに、幽霊として現れることになったのか?

 痛くて危ういほど揺れ動く主人公の心の動きと、それを見守る幽霊の心の機微が、とても切なく、愛おしい作品です。また、主人公が走り高跳びで感じている感覚が、美しく表現され、心の動きと重なり、相乗効果を生んでいます。
 切ない中学生の恋愛ということでしたが、最後は清々しさが残ります。

 是非、御一読下さい。

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