空(そら)の時間

作者 天音 花香

12

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★★★ Excellent!!!

好きって何? 生きるって何? ピュアな問い掛けが空に溶ける。

空を好み徒党を組むことを嫌う孤高の少女・蒼が、微かな想いを寄せていた少年は、事故死の後、幽霊になって蒼の目の前に現われた。

彼の姿は蒼にしか見えず、蒼を通して五感を得る。
それは、すなわち生きているという実感を得るということ。
ゆえに、ずっと行動を共にする。そして蒼を愛おしく想う。

ラストは、蒼の生きる上での純粋な疑問に、霊体の少年が答えを出す。
その答えとは? そして、ふたりの想いの行方は?

何故、少女が空を好んでいたのか……第二十話を過ぎたあたりから、クライマックスです。

バッドエンドの恋愛と受け取れなくもないけれど、
『空の時間』は女性になる前の少女の時間。
澄みわたった空のような読後感が味わえます☆

★★★ Excellent!!!

 陸上部で走り高跳びに挑む少女が主人公の、切ない恋愛小説だ。主人公には気になる男子がいた。しかしその男子は、転校して違う中学校に行ってしまう。それでも主人公は、空を見上げて男子生徒を思い出していた。しかし、そこに男子生徒が死んだという知らせが届く。主人公はそれを認めなかったが、男子生徒の方が幽霊になって主人公の前に現れる。そして、幽霊と主人公の奇妙な生活が始まる。
 ある時幽霊は、主人公に一緒に走り高跳びをやってみたいと言う。主人公は跳んだ時に見える、一面の空が好きだった。それはまるで空の中に投げ出されて、時間が止まったかのような感覚だった。そしてその反面、刻々と表情を変える空のことも好きだった。そんな「空の時間」を共有した二人。徐々に惹かれていく二人の前に、主人公の幼馴染の男子が近づいてきて……。
 変わっていく周囲と、変わらない主人公。
 自分の感情が周囲と同じように扱われることが、嫌だった。
 変わりたくない。変わらない。変わったのは、周囲の方だ。
 そんな自分に、居場所なんて――。
 そんな主人公に、幽霊がかけた言葉とは?
 そして、何故主人公のもとに、幽霊として現れることになったのか?

 痛くて危ういほど揺れ動く主人公の心の動きと、それを見守る幽霊の心の機微が、とても切なく、愛おしい作品です。また、主人公が走り高跳びで感じている感覚が、美しく表現され、心の動きと重なり、相乗効果を生んでいます。
 切ない中学生の恋愛ということでしたが、最後は清々しさが残ります。

 是非、御一読下さい。

★★★ Excellent!!!

青春、甘酸っぱさ、これらがギュッと濃縮されたような作品です。

主人公である少女『立野蒼』が、思春期に抱く心の悩みを抱えながら日々を過ごしていたところ、気になっていた男子『青木澄広』の突然の訃報が。それまでは深い交流もなかった二人のはずが、彼が幽霊となって姿を現したのは、なぜか蒼の前だった。

もうここまでの設定で、切ないです。
ここから二人は生前のときよりも交流を深め、お互いをちゃんと知っていきます。
この二人の恋の行方がどうなるか、なぜタイトルが『空』を使っているのか、すべては最後まで読めば納得できます。

ラストも青春と甘酸っぱさを忘れない、思春期特有の爽やかな終わりに仕上がっており、素敵な物語でした。

純粋な恋愛物語が好きな方、大人な恋愛に疲れた方、この作品はとてもオススメです!