第4話 借金

 ユーリはリュックの中にあるブレスレットを取りだし、大きな溜息をつく。手に持っているのは、ユーリが作った魅了の魔法を使える星3の装備品である。


 はぁ、どうしよう‥‥‥‥今あるのはこれだけなんだよな

 さすがに、これ売るのは不味いよな~


 

 ブレスレットを手に悩んでいると「そういやギルドがあるじゃん」とその存在を思い出した。今日中にできそうな依頼があれば受けようとブレスレットをリュックに戻してギルドに向かう。


 今日中に出来そうな依頼が無かった時は‥‥‥‥借金するか?


 確かギルドには前借りできる制度があったはずだと思い出す。

 但し一月後に返済が終わらない時は、即奴隷落ちという厳しいものなのだが、急にお金が必要になり借りる冒険者も少なくなかった。



 ギルドの入口である木製の扉を開けて中に入ると、昼過ぎの中途半端な時間帯ということもあり、冒険者らしい男が数人いるだけだった。

 ユーリはまっすぐ掲示板に向かうと、今日中に出来そうな依頼がないか確認する。


 うーん、このイーギル草摘み100個なら出来るかな? いや、今からじゃ無理かな?

 

 暫く悩んだが今からじゃ遅くなるなと諦めて、ギルドで借りることにする。

 三つあるうちの左側の二十代前半くらいの男性が座っている窓口にいく。


「金借りたいんだけど」


 職員はユーリを一瞥すると微妙な顔で書類を出してきた。職員から一通り説明を聞いて血判を押すと契約が成立して、ユーリはお金を受け取った。


「くれぐれも、返済遅れないようにね!」


 職員に真剣な顔で念をおされてユーリも神妙に頷いた。


 ギルドで教えてもらったお勧めの宿で落ち着くと、お腹が減ったなと一階にある食堂で早めの夕飯にする。宿の食事はギルドのお勧めの宿だけあって美味しかった。


 部屋に戻ると今日ギルドで借りたお金の返済について考えた。

 宿代が一泊2000ギル、食事代は夕飯に500ギルくらい、依頼のイーギル草摘みは3000ギル。朝と昼も食べたら残らないだろう。現実を知って冷や汗がでる。


 うわぁ、まずいよ‥‥‥‥このままじゃ奴隷落ち確実じゃん!


 ユーリは頭を抱えてしまった。



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