第224話ーー何事も陰で支える者がいるって話
迅雷のメンバーと共に名古屋北ダンジョンへと潜り出してから、既に4ヶ月が経った。未だに迅雷は200階層にいるし、俺たちも地上とダンジョンを往復を繰り返している……彼らの食糧の差し入れもあるしね。
本当は7000階層以降の探索をしたいのだが、世界情勢が刻一刻と変わる中、分身を通じて情報を得たり直ぐに転移で戻ってくる事とはいえ、未知の階層の探索では何があるかわからないために潜る事は出来ていなかだたんだけど……久しぶりの新規固定ダンジョンが発生したとの報を受けて、俺たちは調査のために向かう事となった。
今回は俺たちだけではなくて一全の武術班も一緒だ。その代わりというか、じいちゃんとばあちゃんは来ていない。ちなみに俺と香織さんも断る選択肢も用意されていたんだけど、200階層との往復に飽きていたのもあって手伝わさせて貰う事にした……まぁ2人とも次元世界にはいるんだけどね。
最初武術班も一緒だと聞いて、ナル森とかのようにまた絡まれるんじゃないかと思っていたんだけど、さすがに毎年のように夏の渥美での手合わせを行っているせいか、誰1人として文句を言ってくる奴はいなかった……まぁ普通に声を掛けてくれるような人もいなかったけれど。
向かった先は先日突発型ダンジョンが出来た浜名湖だ。
初めて知ったんだけど、突発型ダンジョンと定着型ダンジョンは関連性があって、突発型が出来た場所に定着型が出来る事はよくあるらしい。ただダンジョンの中身だけは、類似性はあまりないらしいけどね。
いつも固定メンバーで潜っているせいか、たくさんの人がいるっていうのは中々新鮮だ。
ただ彼らの大半は潜るのが目的ではなくて、まずはダンジョン前の整備や近隣住民の避難の手伝いとかを探索者協会の職員と共に主に行うらしい。
俺は戦うというかダンジョンの探索面ばかりを見ていたけれど、各流派は探索以外での貢献や協力が大きな仕事としてあるとの事だ。
彼らが整備などをしてくれている間に、俺たちは調査に潜る事となったんだけど……ただ潜ればいいってもんじゃなくて、かなりの仕事があって結構大変だった。
マップの作成に、モンスターは何がいるかの確認、それのドロップは何が出るかもだし、各階層で採取出来る鉱石や薬草などの確認もある。そしてそれを書き留めたりしている人員の護衛やサポートも。
そして1番大変だったのが、久しぶりに次元空間も時空間庫も使用出来ないって所が……
ダンジョンは50階層で、土壁の洞窟タイプの迷路がずっと続いていた。明かりはなく真っ暗なので自前で魔法なりアイテムなりを使用しないと何も見えない上に、落とし穴や踏んだら毒矢が出てくるような罠が山ほど設置されているいやらしい場所だ。しかも結構な広さであり、モンスターとのエンカウント率が高かった。ただモンスター自体は目新しいモノはおらず、すでに発見されている上に大した強さでもないって事は良かったけれどね。特筆すべき事は各階層の隅の方に転移陣があって、1階層にある小部屋で行き来出来るって事かな。ただその階層のモンスターが落とす魔晶石を人数分使用しないと使えないから、行った事のない階層には現時点では行けないんだけど。後日協会支部が設置されたりした際には、きっと各階層の魔晶石が売られたりするんだろう。
そういえばというかなんというか……俺って護衛でのダンジョン探索って、ステータスチェックしてすぐの夏休みにアマとキムをした時以外ないんだよね。
香織さんは何回かあるらしいんだけど。
だからというか、立ち位置だとか動き方だとかを幾度となく師匠たちには指導される事となった。
ただ、これまで俺たちは当たり前のように協会端末を使って、ダンジョンの見取り図やらモンスター情報を得ていたけれど、その裏にはこんなに大変な事があったって知って良かったと思う……もう二度とやりたいとは思わないけどね。
だって違うダンジョンだとはいえ、いつもはたった1日掛からずに潜れる50階層を、3ヶ月も掛けて潜るんだよ?
まさか3ヶ月も掛かるとは思わなかったよ……
まぁ、各階層へ行き来出来るからこそ3ヶ月で済んだんだろうけど、もし毎回自力で戻ったり向かったりとしていたら、どれほどまでに時間が掛かったのかって怖くなるよ。
ちなみにその間にも何回か地上に戻った際にはこっそり俺だけ名古屋に転移して、迅雷へ荷物を届ける作業もあったりして、二重に大変だったりした。
し・か・も、しかもですよ、迅雷のメンバーはずっとダンジョンに篭もりっきりで色々精神状態がおかしくなってきているのか、それとも素が出ているだけなのかはわからないけれど、やれ「インスタント食品じゃないものが食べたい」だとか、やれ「どこどこのケーキが〜」とか、「彼女(彼氏)に手紙を届けて欲しい」「いつまで居ればいいのか聞いて来て……いや、出れるように各流派の御館様を説得してきて欲しい」だとか勝手な事どころか図々しい事ばかり平気で求めてくるようになったんだよね。
まぁ地上に出れないのは少し可哀想だとは思わないでもないけれど、自業自得の所も否めないからなんとも言えない所だ。
まぁ迅雷の事は置いといて、驚く事にその3ヶ月も掛けて作られたマップやら情報は探索者協会へとほぼ無償で提供されるらしい。しかもダンジョン内で得てきたドロップや採取物も半分近くはサンプルとして無償譲渡なんだって。ただ宝箱の中身とかは、さすがに報告だけみたいだけどね。
確かに師匠たちはこれまで階層更新だけではなくて、色々な貢献をしてきたんだろうとは思うんだけど、探索者協会がめちゃくちゃ協力的な事にほんの少し疑問を抱いたりした事もあったんだけど、そりゃあ当たり前だよねって納得したよ。
各流派の協力あっての探索者協会なんだってね。
ちなみに今回来た人員の全ての日当なども一全流が支払うらしい。マップ作成などで潜る人は1日2万、地上勤務の人は1日1万だそうだ。地上に戻る度にマップ作成などの人員が交代するのは何故だろう?勉強熱心なのか、師匠と潜りたいのかな?と思って見ていたんだけど、どうやら日当の事も関係していたようだ。
調査が終わったところで、さすがに7ヶ月も潜りっぱなしなのもどうかという事で、迅雷の面々も地上へと帰還させる事となったんだけど、この時はまだまたすぐに一緒に行動する事になるなんて思いもしなかった……
中国にあるダンジョンが10箇所同時に溢れ出したために、各国へと国連から協力要請が入ったからだ。
アメリカ軍が撤退したためなのか、それとも他の要因があるのかはわからないけれど、飛行タイプのモンスターも見受けられる事や、中国国内の広い範囲での発生している事から、早く処理しなければ世界全体に害が及ぶ可能性があるために、俺たちも要請に答えて向かう事となったのだ。
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