第159話ーーあなたも一緒です

 進入して直ぐに分身を一体入口に置いてから進んだ。

 人間は無理かもしれないけれど、分身だったら大丈夫な可能性が大きいからね。

 この企みは成功だったようだ、中に入った後扉が閉まってしまっても分身は存在していた。

 肝心の中の様子はというと……奥の方に日本の城が山の上に建っていた。そこに行き着くまでは城下町ではなく田畑のようだ。


「山城落としか……」

「うどん、何かわかる事はあるか?」

「あのお城の1番上にボスが待ち構えているので、向かって倒すだけだと思われます。ギミックなどはないはずです」

「わかった」

「アレってどこかのお城です?」

「わからんのう……ただここから見るに、一太のNINJAと同じく外国人から見た城っぽい感じがするの」


 なんだろう……

 NINJAって俺を拾ったのがアメリカ人だったから、外国人のイメージするTheNINJAになったのかと思っていたんだけど……

 アレかな、ダンジョンを作った?プロデュースしている?まぁどちらでもいいけど、この神様か何かは外国人の日本かぶれみたいなのかな?


「よし、ではいつものように上からざっとどのようになっているかと見て回ってくるか」

「はい、大鷲!」


 うん、師匠の言う通り恒例の行動だね。

 師匠と俺、そしてうどんとじいちゃんが乗ってダンジョン内を1周してみた。

 結果わかった事は、半径300kmほどの円の真ん中に山があってその頂上に高さ100mほどの石垣があり、その上に更にバカでかい城が建っていた。山を何周もするようにとぐろ状に登坂道があるようだ。ただ道とはいうが、そこには山ほどの兵士が待ち構えていたし、道から外れたところにも同じように潜んでいるのが見受けられた。また、城の裾野まで行くに当たっても、その山を囲むように数万と思われる兵士たちが並んでいた。かなり上からしか見ていないのでわからないが、鬼が日本式の鎧などを着けており、大掛かりな合戦といった様子に見受けられる。その強さは手前から3F3E3Dといった感じで奥に行くほど強くなって行くようだ。城へと繋がる橋に陣取っているのが3Bのようなので、1番上にいるボスは3Aなのかもしれない。武装は刀や弓、槍に騎馬といった様々な種類だ。


「種子島の代わりに魔法といったところじゃな」

「うむ、数は数万〜いや、数十万といったところか……」


 そりゃこんなにモンスターがいたら、たった6人とか12人とかで潜っても帰って来れるわけないよね。

 種子島って一体何だろうって思ったけど、時代劇などで鉄砲の事を言っていたのを思い出したよ。


 見て来た概要を全員で共有しつつ、分身を通じて外に待機している近衛の人に情報を伝える。ただ協会などには100分の1程度にまで相手モンスターの情報を弱く伝えて欲しいとの考えもプラスしてね。本当の事を伝えたら、俺たちがそれだけを落とせる事が知れてしまうし、メディアや一般人の人たちも迅雷の武力な疑問を持ってしまう可能性が高いからね。


 まずは山の周りのモンスターたちを攻めるわけだけれど、ざっと見たところでは大将といった体なのか陣幕が張ってある場所が等間隔で裾野に並んでいた、その数12。


「無駄に数がおるのが厄介よのう」

「大将首をとったら、雑兵の動きは変わるのか?試してみんとわからんな」

「ではまず一直線に大将を狙いに行くという事ですかな?」

「まぁどうせ全部屠る事になりそうな気もするし、適当に散開しつつ攻めようか」

「そうじゃの」

「各々疲れたら横川の元へと戻り、次元世界で休息をとるように。特に如月くん、己の力をしっかりと把握するのも仕事だ、今回はちゃんと自ら申告して休むようにな」

「はいっ、一太くんよろしくね」

「ではまずは山の下を掃討する。掃討したら1度休憩とする」

「「はっ!」」

「ゆるりと参ろうかの」


 大将がどうのこうのって言っていたけれど、結局いつものように散開してそれぞれ戦闘する事で決定したようだ。

 先日俺が強制回収した事で、香織さんは自分だけ多く休んでしまった事を謝っていたけれど、この人たちと同じレベルで動ける方がおかしいんだからね、気にしたらダメだと思うんだ。だから師匠の言葉を素直に受け止めて休んで欲しい。俺はスキルのせいで体力が尽きる事はないけれど、眠たさは普通にやってくるから師匠たちとは違う……違うと思う、うん。


「あっ、俺が分身たちとデカい魔法放ってみてもいいです?それなら一気に減らせると思うんですけど」

「あぁそうだな……それが有効なら確かに無駄な雑兵は減らせるな。では奥を北と看做して東西南北4箇所に150ほどづつ分けてやってみよ」

「ふむ、ではついでに我らも6箇所に別れて戦うのはどうじゃ。儂と婆さん、信一と近松の、山岡のとうどん、ハクとつくね、あられとロン、そして一太と香織じゃ」

「あぁ分身を移動させるついでにそうしようか」


 最近魔法系スキルを一切封じて戦う事に慣れてしまっていたけれど、こんな時のために魔法系スキルの規模がデカいやつがあるんじゃないかって事を思い出したよ。


 じいちゃんの決めた2人組みと分身たちを順々に配置して行く。そして全ての準備が整ったところで、分身たちを射程圏内まで前進させ一気に八岐大蛇以来の合技台風をガンガン放ってみた……


 結果……やはりそう簡単には行かないようだ。だけど約4分の1程度は減らせたと思う。それ以上は障壁を張られてしまい無理だった。


「重畳重畳!一太よよく減らしてくれた!」

「各々、戦だ!討ち漏らすなよ!蹂躙しろ」

「鼠!烏!虎!大鷲!」


 久しぶりの召喚獣オールスターズだ。とにかく数が多いからね、少しでも手があった方がいいし。


「さあ香織さん行きましょうか」

「うん、頑張ろうねっ」


 さぁ俺の糧になってくれよ!!


 ……ってええっ!?

 ヤバい、張り切り過ぎたみたいだ。

 飛斬は魔力を刃にして飛ばしている、だから刀を全力で振っても魔法を弾くように刃も弾くと思ったんだ……そしたらまさかモーゼのように正面奥に見える陣幕まで一直線にモンスターたちを切り裂いてしまうなんて、誰が予想出来たのか。


 香織さん……あなたギョッとした顔で俺を見ているけれど、あなたが放った刃も3分の2ほどまで俺と同じように切り裂いてしまい道が出来ているからね?


「……つまらん、見掛け倒しじゃったわ」

「うむ、さっさと終わらせて龍酒でのも交わそう」


 各人からガッカリといった感じの感想が分身を通じて伝えられてくる……

 俺や香織さんでこれだもんね、師匠たちはもっと大変な事になっていてもおかしくないよね。


 この後約2時間で山道の入口から少し離れたところで集合する事となった。ちなみに2時間の内約半分以上はドロップ拾いに精を出していた気がする。刀や弓、鎧一式は鉄や木で出来ていてモンスターが着用している癖に、無駄に古き日本の物を真似ていて違和感しかなかったよ。


 そして誰もが大して疲れてもいないので、このまま山道へと突入する事となったのだが、ダンジョンの不思議仕様で山道以外からは山へと入る事は出来ないようだ。ただまぁやはり大して強くもないので、分身たち600を先頭にどんどん進ませて行く。

 手裏剣とか鎖鎌などが飛んで来ていたので、もしかしたら忍者っぽいのがいたのかもしれないけれど、飛斬の前に消えていったのでわからない。俺たちはそれぞれドロップ拾うのに忙しかったし。


 そして約1時間後、城へと架かる橋の前へと到着したのだった。

そしてそこに待っていたのは、NINJAだった。

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