第101話ーースキルに苦しめられるのは仕様なんですか?

 さて白虎の強さはともかくとして色々聞いてみると、どうやら能力的には水氷属性特化のうどんのようなものだとわかった。

 つまり、サイズはどれほどにでも変更可能であるし、人型にもなれる。うどんより優れているのは、初めての人型になる際も新たな魔力を必要とせずに、己の力のみで出来る事くらいかな?……まぁその魔力も元はといえば全て俺のなんだけどね。

 ただスキル確認したところ、レベルなどないようなんだよね……つまりあの弱さでMAX状態。必要なのかな?


 全てがわかったところで、別空間に居たのを解いて貰って、先輩たちが居る元の場所へと戻る事となった。

 とりあえずは子猫ほどの大きさになって貰ってね。


「あっ、横川くん、織田さん、うどんちゃん!!」

「ご無事でしたか。突然姿どころか気配さえ消えましたゆえに肝を冷やしましたよ」

「すまぬ、横川の新たなスキルを確認しておった」

「ほう、それはいかような?」

「これです」

「子猫??」

「わー可愛いっ!!」

「四神の白虎だそうですよ、これでも」

「はっ?四神!?」


 白虎を説明したら、鬼畜治療師も師匠と同じように口を開いて固まったよ。

 うん、この反応が普通だよね……

 それに引き換え先輩は、子猫を俺の手から受け取って頬擦りしてるよ。


「ねぇ横川くん、この子の名前はなんて言うの?」

「白虎って自ら名乗ってましたね」

「あっ、主様……是非我に名を付けて頂きたい」


 先輩の目がキラキラして、俺を見つめています。

 これはアレですよね……うどんの時のように名付けさせて欲しいって感じだよね。


「先輩、なんかいい名前ありますか?」

「いいの?じゃあね……びゃっこだから、だっこ……うーん、どんぶらこ……違うな」


 やはり当たりだったみたいだけど、なんか変な言葉を呟いているよ。

 白虎が先輩の言葉を聞いて、悲壮感漂う顔をしてる……俺をそんな目で見てもダメなんだ、願ってくれ、まともな名前である事を……すまん!!


「どんぶら……どん兵衛……みどり……タヌキ?……タヌキか……」


 えっ?明らかにトラに対してタヌキですと?

 もしかして狐がいるから、タヌキとかありだと思っているのかな?


「先輩、あと3匹ほど他にも召喚獣が現れるようです」

「あっ、そうなんだっ。うどんちゃんとこの子だけじゃないんだね。じゃあ、タヌキはダメだね」


 うん、やはりタヌキで決定しそうだったようだ。危ない危ない。


「うーん、ハクではどうかな?白虎の白を取ってハク」


 意外とまともな気がする……うん、うどんとかタヌキよりマシだろう。


「さすが先輩ですね、ではお前の名前はハクだ」

「我の名はハク。ありがとうございます」


 うどんのように「安易」とか言わずに受け入れてくれたようだ、良かった。

 そしてそのうどんは、明らかにつまらなさそうな顔をしているよ……先輩がタヌキとか呟いていた時は嬉しそうな顔で笑っていたのに。こいつ、変な名前仲間にしようと企んでやがったな。


「ハク、人型になってみよ」

「主様のお師匠様、かしこまりました」


 こいつもやはり師匠には何かを感じるようだ。すぐにサッと先輩の腕から飛び降りたと思うと、光に包まれた。


 光が収まって出てきたのは、白い髪の毛でボーイッシュな髪型、全身を青色のチャイナドレスに身を包み、指までを覆う手甲をした、20前後に見える美しい女性だった。スリットからチラリと見える白く長い脚、強調するように突き出した胸……けしからん身体をしている。


「キレー!!」

「先輩の方が綺麗ですよ!」

「へっ?……あっ、ありがと」


 確かにハクは美人だし、スタイルもいいけれど……うん、先輩には負けるよね。その事を言ったら、顔真っ赤にされちゃったけど……その姿も可愛い!!


「その姿を見るに、人型の時は格闘術を嗜むのか?」

「はい、そうでございます」

「ふむ、ではその武を見せてみよ」

「主様、よろしいでしょうか?」

「うん、力を見せて欲しいな」

「かしこまりました」


 ついさっきの別空間の出来事のやり直しのようだ。立場は逆だけれど。


「横川は分身を30ほど出して、全てに九字をきらせて魔力を回復しろ。ついでに朱雀も出せ」

「はい」

「うどんは頃合になったら知らせよ」


 まぁさっきの試練を見る限り、朱雀も怖くなさそうだもんね。問題は魔力だけだけど、回復手段はあるわけだし。


 俺は重りを付け直しての修行再開となった。横目でハクの動きを見ていたが、衣装と同じ中華風拳法のようだ。手脚を使って、殴る蹴るなのだが……時折チラリと見える白い太ももが艶めかしいね。


「坊主は何をチラチラ見てるんだい?」

「えっ?な、なにを言ってるんですか?ハクの力はどれほどかと気になって見てただけですよ?」

「ふーん、それにしては目の動きが怪しかったような気がするんだけどね〜」

「な、何を言っているのかわからないです!」

「あんた香織がそこにいる事忘れちゃいないだろうね?」


 鬼畜治療師に見られてたよっ!

 先輩は……うん、目の前のオークと一生懸命戦っているから気付いていないね、良かった。

 気を付けよう……中身は白虎なんだし、うん、ただのトラなんだから見ても仕方がないんだ、うん。


 クッ!!……またスキルに苦しめられるとはっ!!

 純粋に武力を見よう……よし!

 どうやらインパクトの瞬間に相手を凍らせているようで、当たった箇所が割れて欠けている。


「ふむ、それなりにだな。よし、では魔法を使用してみよと言いたいところだが、ここでは相手に不足があるな。よし移動してオーガを敵とする」


 師匠の号令に従い、全員でオーガがいる階層へと一気に駆け抜けて移動した。

 そして再開される修行。

 ハクの動きはというと、圧巻だった。一歩踏み出す度に足元は白く凍り、「ハアッ!」という声をあげると、前方が50mほどが全て凍るのだ。そしてそれをただ砕いていくのみといった戦い方だった。

 さすがは四神といったところだろうか……少し見直した。

 うどんが魔法を用いて人型で戦う様子も確認したけれど、ハクほどの魔法の威力はないようだが、それでもなかなかに強かった。威力ではなく技が上手いって感じかな。


 その後それぞれが魔法なしでの師匠やオーガとの戦闘修行を延々と繰り返し続けていた。

 そして3日経った頃、うどんとハクから魔力が貯まった事を知らされ、朱雀を召喚する事となった。


 朱雀の試練は、『我の力に耐えてみよ』って言って、デカい火の玉を放ってきたんだけれど……最近の修行は魔法を切ったり跳ね返したりする事だったからね。師匠のように刀で斬りかかってきて近接で放ってきたりするわけでも、一見1つにしか見えない魔法なのに、いざ1つを何とか切ってみたら真後ろにもう1つの魔法が迫って来ている事とかもないわけで……つまり単純にデカい火の玉だけだったので、余裕だったよ。あまりにも余裕すぎて、斬撃が飛んでしまって朱雀が「ぎゃああああっ」とまるで白虎のように泣いてしまったくらいだったし。


 そして無事に朱雀も仲間になったわけだけれど、またしても訪れるのは名付けイベントだ。当然名付け親は先輩だ。結果は……


「お前の名前はつくねだ」

「……我が名はつくね……ありがとうございます」


 うん、燃える鳥から焼き鳥と連想しての結果だね。本人は若干不満そうだけれど、素直に受け入れたよ。そしてうどんはめちゃくちゃ嬉しそう……完全に名前は仲間だもんね。


 人型は、赤い髪を肩まで伸ばし、真っ赤なチャイナドレスのこれまた美女だった。大きな金色の弓を抱えており、それは1発でオーガの頭を粉砕するほどの威力があった。また魔法を使用すると、矢は姿を炎へと変えて自由に飛び回り、触れたモンスターを瞬く間に灰へと変えてしまっていた。


 2匹とも試練から考えると、意外にも強い事はわかったけれど……今度は火力過多になっている気がしないでもない気がするんだけど……いいのかな?これ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る