第81話ーー横になって3秒で眠れる、あの小学生が羨ましいです

 あれから5日経っているが未だ孤児院には帰っていません、なので学校にも行けていない。

 アマとキムには10日を過ぎた時に、学校始まっても当分行けないかも?とは連絡していたんだ。その時は『大変だな』とか『頑張れよ』って俺を心配するような内容の返事が着ていたんだけど、今日のLINEは『お前のせいで俺も修行に変わった』『俺も当分滝に打たれる事になった』という意味不明のものに変わっていた。その理由とは、どうやら俺が帰ってこない事で、高校2年生の3学期は期末試験意外は出席しなくともさほど問題ない事が伊賀の師匠さんたちにバレたらしい。そして先ほどの言葉通りの結果となったようだ。

 うん、そんな事実を俺は知らなかった……そしてその事から推測出来るのは、俺も当分帰れない事が決定したという衝撃の事実だったよ。


 ではまだ日間賀島で漁猟でもしてんのか?って話なんだけど、それも違う。

 俺が今いるのは、大須に突発型ダンジョンが出現した為にそこに突入しているのだ。なぜこうなったかと言えば、昨日武術班の新たな人員が日間賀島へと渡ってきて、ようやく交代出来るとなったのまではよかった、ようやく帰れるとほっとしていた。もう魚は見飽きたし、食事にも飽きてきていたしね。

 で、帰って来る途中にハゲヤクザのスマホが鳴り響いたと思ったら、大須に突発型ダンジョンが出来たためにそのまま直行しろとクソ忍者から連絡があったのだ。そして慌ててやってきた東さんたちパーティーと合流し準備を整えたところで、クソ忍者も合流し突入したというわけである。

 メンバーは前回の突発型ダンジョンの時と同じプラス先輩だと思ったけど、どうやらあの喧嘩を売ってきた盾職2人は違う人に代わっているようだ。ちょっとほっとした……何かギスギスしそうで嫌だったんだよね、それに先輩にまたちょっかい掛けて来そうだし。今回は金山さん田中さん秋田さんもいないからね。

 まぁ世界的トップパーティーの一員のはずなのに、いくら油断していたとはいえ俺なんかに負けるようじゃダメだよね。交代は致し方ない事だと思う。


 このダンジョン内は遠くに山が見え、木々や湖、川などがある巨大なフィールドだ。烏を飛ばして見てみたが、壁というか突然何もなくなる虚空のようモノに半円状に囲まれているようだ。そしてその場所までは約10時間掛かったので、烏のスピードを時速60kmと換算すると約600kmとなる。モンスターの姿はどうやら木々の間に隠れているのか、未だに発見していない。

 あまりにも広く、この様子では時間がかなり要するであろうと推測される為に、食材をいくつも新しく搬入し、入口から10kmほど北に進んだところにベースキャンプを設置する運びとなった。


「東たちはここでしっかりとしたベースキャンプを作成、我らは如月くんと共に上空より様子を伺う。連絡に付いては横川の分身を一体残していくので、何かあった場合にはそれに伝えよ」

「はっ、かしこまりました。ご武運を」

「では横川、大鷲と分身一体を出せ」

「はい、召喚大鷲、分身!」


 いつものようにクソ忍者の指示に従い大鷲が空へと飛び立つ……

 うん、もう慣れた。その内クソ忍者が呼んだら出てくるんじゃないかとさえ思ってる。


「うどんを出せ、何かわかるやもしれん」

『うどん、師匠がお呼びだ出てこい』

「遠く北に見える山の中腹に扉がありますが、それを開くためには4箇所にいる鬼の軍団を倒し、それらが落とす宝玉を嵌めねばなりません。またそれら軍団は同時にしか出現致しませんので、それぞれに人員を配置して同時に将を倒す必要がございます」

「なぜそこまでわかるのか根拠はあるか?」

「いえ……わたくしに何故だかとしか言いようがありませんが、としか」

「あいわかった、情報に感謝する」

「うどんちゃん凄いね!」

「へへへ……それほどでも」


 何だろう、この置いていかれた感。俺の召喚獣のはずなのに、何故か俺以外で話が進んでいるし。うどんにそんな能力があるなんて初めて知ったんだけど!?何か悔しいから、やはり退魔の方法を考える事も必要かもしれないな……


「っ!!全ては主様あっての能力でございますっ!!」


 こっちをチラチラ見ながら突然叫び始めたうどん……

 明らかに俺の思考を読んだな。


「横川よ、そううどんを虐めてやるな」

「横川くん?うどんちゃんを虐めちゃダメだよ〜」

「い、虐めてなんかいませんよ!!」

『お前狙ったろ!』

『そんな事はございませんよ〜』

『じゃあ虐められてなんかいないとちゃんと言えよ』

「主様には虐められていませんのでご安心下さいませ〜」


 最悪だ、やはりきつねとは性悪なようだ。先輩に懐くように擦り寄りながら、チラっと俺を見て笑ったような気がするし。先輩に俺をオススメしている様子もないから、いつかギャフンと言わせてやりたいところだが、何があるんだろう……やはり退魔が出来る陰陽師jobを持っている人でも探した方がいいのだろうか、まぁこの辺はゆっくり考えていこう、うん。

 ただこの能力は捨てがたいんだよね、確かに。もしここの仕組みとか分からなかったら、消耗するだけでいつボスに辿り着けるかわからなかっただろうし……だけど、それはそれ、これはこれだ。

 今に見てろよ!この性悪キツネが!!


「よし1度戻り、マッピング出来る者を乗せて上空を1周するぞ。その後横川の分身を俺に8、山岡に8、近松に8、残りを如月くんと横川の2人と共に指定場所へと向かい、タイミングを合わせて同時討伐を行う」

「はい」

「それとな、全ての分身はあれらには見せるな、少し離れたところに進んでから分身して帯同させるからそのつもりでいろ……それと、如月くんと横川、今うどんからもたらされた情報は絶対に漏らさないようにな」


 今や分身レベルは38だから、俺と先輩に付くのは13体って事になる。でも何で見せないんだろうか?不気味に見えるからかな?……わからないけど、従っておこう。


 その後東さんたちパーティーの1人を大鷲に乗せ、約3日間掛けて広大なダンジョンのマッピングを行った。

 そして出来上がった地図をうどんに見せながら、もう一度空を飛びどこに鬼の軍団がいるかを聞き取るという作業となった。それによると、ダンジョン入口を中心として、左右均等な距離の場所に4箇所で、ベースから約400kmほど離れた所だ。小山・池・草原・森とそれぞれ戦闘場所の環境が違うのだが、属性が違うとかそういうのはないようだ。話し合いの結果、俺には召喚獣のカニがいるという事で池近くのフィールドに行く事が決定した。

 俺たちが各軍団の場所へと向かっている間というか、もう既になんだけど、東さんたちパーティーは扉付近へと出発している。到着次第拠点を築くらしい。俺たちには大鷲がいるけれど、東さんたちは600kmを徒歩で移動しないといけないもんね。


 ダンジョン突入して既に9日、明日からようやく討伐に向かうとなったわけだけど、これ一体何日掛かるんだろうか。そもそもあまり突発型の事例を知らないから、こういうのが普通なのかな?


「突発型はそれぞれ全く違うから何とも言えん。前回北ダンジョン近くで入ったアレのように数時間で終わる事もあれば、これまでで報告されている中で1番長いのは4年だったかな?」

「ええ、イタリアシチリア島に現れたものですな。確か犠牲者が200名を越した最悪の突発型と記録されておりますな」

「その時もこのような広大なダンジョンだったはずです。そして謎が解けずに消耗戦となり……」

「明日から各箇所に向かい討伐が終わり、山の扉を開けたとしてもすぐにボス部屋があるかどうかもわからん。故にあと何日掛かるとも断定は出来ん。今考える事は、如何に怪我をしないように戦うかのみにしておけ」

「わかりました」


 クソ忍者の言うように、前回が簡単に終わってしまったから軽く考えていだけれど、そうでもないようだ。あと前回の事から宝箱出ないかな?とかフィールドに眠るお宝探しはしないのかな?とか思っていたけど、そんな余裕もなさそうだしね。

 ってか、うどんがいなかったらシチリア島の悪夢再びってなったわけか……ますますなんか悔しい!


「よし、明日から向かう。横川の分身を見張りにして各々しっかり身体を休めよ」

「「はっ」」

「「はい」」


 テントは2つ、1つは女性組、1つは男性組……つまりクソ忍者とハゲヤクザと同じところで眠るという事だ。

 楽しくない……

 テントとか昔はテンション上がったのにな……


「早う寝んか」


 怒られた……

 言われてすぐに眠れるほど器用じゃないんだよね。

 ってか、徹夜で修行とかしょっちゅう行っているせいで、身体を酷使しないと眠れない身体になってしまった。


「わかった、2人で稽古をつけてやろう」


 くっ、顔を背けて横になっていたのにまた思考を読まれただと!?


「小僧は真面目じゃのう」


 違う!

 クソっ!俺のバカっ!!

 寝たフリをしておけばよかったのに……


「全力で掛かってこい」

「近松を起こすのもしのびないからな、九字をきる程度で治るようにしといてやる」


 ぎゃあああああああああっ!




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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コロナ蔓延で大変な事となっておりますが、皆様ご自愛くださいますよう。

少しでも皆様の心を楽しませる事が出来たら幸いと思っております。

((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

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