第73話ーーデート気分でGO

 本日は100階層を目指すらしい。

 予定では80階層だったのに、何故変更したのかと不思議に思っていたんだが、これは説明されてビックリな内容だった。なぜなら100階層ボス部屋には、地上へと戻るための転移魔法陣が現れると言うのだ。そんな情報は協会の端末情報のどこにも示されていないし、噂すら聞いた事がなかった。

 クソ忍者曰く、「もし周知してしまうと、無理をしてわざわざ100階層まで行こうとする者が必ず生まれてくるのを防ぐためだ」との事だった。確かにそれを知っていたら、無理してでも行こう企んで、大怪我を負ったりする者が続出しそうだから納得だ。だけど、それなら噂レベルの話がもっと出ていてもおかしくないと思うんだけど、100階層近くまで行けるシーカーには、協会から説明と口止めがあるらしいのと、隅の方に出現するので気付かない人もいるという話だ。


 そして今はクソ忍者の説明を先輩と2人で聞いている、2人で!!

 初めて先輩のスキル詳細を教えて貰ったのだが、攻撃よりも守りや支援に特化傾向なので、攻撃力強めのスキルが多い俺と相性がいいだろうとの事だった。

 気になるスキルはというと……


 ◆

 武器全般(Lv6)……この世に存在する全ての武器を使いこなす事が出来る。

 格闘術(Lv3)……格闘攻撃の際に攻撃力が上がる。

 結界術(Lv5)……全ての攻撃を防ぐ結界を張る事が出来る。レベルによって大きさ強度は変わる、最大レベルに達した際はいかなる攻撃も最低でも1度は必ず防げるだろう。継続時間は5時間。

 回復術(Lv3)……対象を視界の中心に起き、回復の念を送る事により怪我などの回復を行える。最大レベルに達すれば、あらゆる病や欠損もたちどころに正常へと治すであろう。

 支援魔法(Lv5)……(敏捷upLv5)―対象者の敏捷速度を1.5倍に引き上げる。継続時間50分。

 ……(力upLv5)―対象者の力を1.5倍に引き上げる。継続時間50分。

 ……(魔法攻撃力upLv5)―対象者の魔法攻撃力を1.5倍に引き上げる。継続時間50分。

 魔力譲渡……魔力を対象者と接触する事により譲渡する事が出来る。

 魔力庫……使用していない魔力を常時魔力庫に保管する事が出来る。

 空間魔法(Lv2)……(アイテムボックスLv5)―異空間に干渉し、物を保管する事が出来る。空間内には生物を保管する事は不可能。50m四方の空間容量。

 ……(気配察知Lv4)……半径400m以内の魔力を放つ生物を感知する。

 自然魔法(Lv4) ……(ライトMAX)―光源を生み出す。大きさ威力は調整可能。攻撃力はない。継続時間10時間。

 ……(光線Lv6)……光の線6本前方に撃ち出し対象を攻撃する。最大射程距離60m。

 ……(浄化Lv3)……アンデッドを攻撃する力場を生み出す。30m四方の範囲。

 ……(隕石Lv5)……上空から隕石を5つ落とす。

 身体強化魔法(Lv6)……自身の全てのステータスを1.6倍に引き上げる。継続時間60分間。

 敵意察知(Lv7)……自らに向けられた敵意を察知する事が出来る。自身を中心とした700m以内。

 相互活性(Lv6)―半径600m以内にいる仲間と認識している者と己の熟練度を上げやすくする。

 状態異常耐性……いかなる状態異常も受ける事はない。

 鑑定不可……いかなる鑑定も受け付けない。

 鑑定(Lv8)……鑑定を行う事が出来る。

 物理耐性……あらゆる物理的攻撃を半減させる。

 魔法耐性……あらゆる魔法攻撃を半減させる。

 ◆


 うん、支援職寄りで打たれ強い護り手って感じだ。

 物理・魔法耐性はクソ忍者の持つスキルの上位互換らしい。通常スキルだと最大でも20%カットのようだ。

 自然魔法なるものが唯一の攻撃魔法っぽいけど……ただ自然魔法なんてこれまでに確認されていないから、この後どんなスキルが生えるのかはわからないんだよね。

 でも1年以上先にダンジョンへと潜っている割には全体的に熟練度が低いのが気になるところだ。

 ただ色々能力は高い。

 回復魔法も通常のというかこれまで発見されている回復魔法は病気までは治せなかったはずだけど、回復出来るみたいだし。

 アイテムボックスというのは魔法袋のスキル版であり、上位互換のような物らしい。どうりで先輩パーティーの荷物が少ないわけだよ。

 そして状態異常耐性だよ、レベルなんてなくて最初からMAX状態だったんだって!俺の苦労を考えたらめちゃくちゃ羨ましい!!


 勇者のスキルは人によって発現するものが違うので、スキル構成の理由はわからないが、最近の研究ではその人の性格などが反映されているかもしれないとの話があるらしい。だから多分、先輩の優しさが滲み出た結果って事だよね!


 そして相互活性なるスキルがあるので、俺と2人での修行を行うとの説明を受けたわけだけども……なぜ金山さん田中さん秋田さんの3人は一緒じゃないのか?っていう疑問が生まれると思う。俺的にはクソ忍者という邪魔者はいるものの、2人での方が嬉しいけれど、先輩的には友達だろうし疑問が尽きないよね。

 その答えは、お互いに特殊職という事で命や身柄を狙われやすいために、とりあえず力を付けた方がいいためだという事だ。いや、わかるんだけど……わかるんだけど、なんか微妙なんだよね〜。それでなぜ3人を外す必要があるのかわからないし。


「あとついでに横川に人を守る力をつけさせるためだ。如月くんは守る事に特化しているし、支援魔法行使による熟練度上げにもいいだろう。ただ横川はまだ未熟なために大勢を同時に守る事は出来んので、まずは2人でというわけだ」

「そういう事ですね……納得しました、よろしくお願いします」


 俺の護衛能力アップのためだったのか!?

 さすが師匠ですね!

 ……でもなぁ、それだと能力アップしない方がいつまでも2人で訓練出来るんじゃない?って思ったけど、めちゃくちゃ睨んできているから頑張りますっ!


 81階層から90階層までは、まるでジャングルのような大きな木が生い茂る場所だ。そしてタイムスリップしたかと疑ってしまうような、小型肉食恐竜が空に地に木にと跋扈している。魔法を放って来る事はないが、スピードや力はかなり早く強く、ロックゴーレムほどの防御力を持つ皮らしい。更には生い茂る木々は切り倒す事も燃やして灰に変える事も出来るが直ぐに元の状態に戻ってしまうので、視界は悪いままだ。


「右前方から敵3で300m!左後方から2は400m来てるよ!」

「はいっ」


 先輩の指示を聞いた俺はすぐさま分身や召喚獣たちに指示を出して戦闘を行う。

 先輩の支援魔法は強力だが、俺自身に掛けられてしまうといつもの感覚が狂って戦いにくかったので、召喚獣たちにだけ掛けて貰っている。また結界術を掛けてしまうと訓練にならないという事で、使わずに先輩自身も戦っている。


 最初は分身を前線と召喚獣を前線に出して、先輩と2人結界に守られながら、キャッキャしながらデート気分で進むつもりだったんだけど……そんな事が許されるわけもなく、結界は禁止された上に、音もなく消えたクソ忍者に追い立てられたモンスターたちがあらゆる方向からとめどなく襲いくるのを必死に凌いでいるのが現状だ。

 上空だけは大鷲にある程度任せっきりにはしているけれど、大きさゆえに小回りが効かずに結構な数を素通りさせてしまうので上空の警戒も必要となりてんてこ舞いだ。


 立ち止まっていても終わらないので、じりじりと前へと進みながら迫り来るモンスターたちを斬り伏せながら進む。

 先輩の攻撃力は弱いなんて思ったけど、光線だっけ?とにかく光の筋はまるでビームのようで、光と名がつくだけあってスピードも早く、モンスターの身体をガンガン撃ち抜いている。ただ隕石は俺の炎爆と同じで、着弾と同時に周りを巻き込んだりするので分身たちが巻き込まれて時折消えたりしているのが、若干の問題点だ。

 最初に分身を巻き込んでしまった時の先輩の慌てっぷりは凄くて、殺してしまったかもとへなへなと崩れ落ちそうになっていた。そのためにそれからというもの本体である俺は腕章を巻いたり、分身発動前に外したりと忙しかったりもする。


「そろそろモンスターの数が減ってきたようなので、リポップする前に一気に移動しましょう」

「うん、トラちゃんに乗っていい?」

「どうぞ、落ちないように気を付けて下さいね」


 現在92階層で、91階層でも同じようにモンスターの襲撃が収まった時に急いで階段へと走ったのだが、俺の走る速度と先輩の速度はかなり違う。そこで解決策として思いついたのが先輩のトラ騎乗だ。ただ経験として難しいと伝えたのだがさすが先輩だ、直ぐに俺よりもよっぽど上手に乗りこなすようになった。

 ただ、クソ忍者たちのように指示を出して言う事を聞かせるなどは出来ないようだ……安心した、もしそうなったら召喚主としてのプライドが……ね?心做しかトラの顔が嬉しそうなのは、俺の召喚獣だからなのか、それとも違うのかはわからない。


 そして階段に着いたら、先輩からの回復魔法と手を繋いでの魔力譲渡……最高のご褒美ですよっ!

 魔力も怪我も自力で回復出来るけど、黙ってます!!

 これに関しては今のところ師匠の密告もないので、優しさだと思っている。


 戦闘は自分の事だけを考えて跳び回りながらというわけにもいかないので、神経も使うし結構しんどいけど……しんどいけど楽しいです!!

 いつもこういう修行ならいいんだけどな〜


 おうっと、見えない場所から小石が飛んできた……

 早く行けって事ですね。


 さあアピールタイムは中断だ、次へと挑みましょうか。

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