第18話ーー11男!?
メロン狩りでたらふく堪能したあとは、ドライブしたり、喫茶店に行ったりして時間を潰していた……まるでデートみたいだろっ?でも鬼教官のおっさんとの2人なんだぜ……
だから、海方面には意地でも行かなかった。
水着姿のキレイなお姉さんとかは見たいけど、それとイチャイチャしている男は絶対に見たくないからねっ!
何が悲しくて、おっさんと真夏のビーチに行かなきゃならんのだよ。
もう行くところも無くなって温泉旅館に戻って玄関に入ったところ、そこに居たのは如月先輩パーティーの治療師である秋田さんだ。
「……横川くんだっけ?なんで?」
この時居たのが秋田さんだけだったら問題はなかったんだ、教官といる事で勝手に勘違いしてくれそうだったし。
2〜30人程の同年代と見受けられる人たちが通り掛かった……
「誰そいつ」「どこの家?」「知らんそんなやつ」「組は?」
と、口々に疑問を上げ、大騒ぎになりつつあった。
「風間さんの弟子ということで連れてきたんです?」
「いや、こいつは若の直弟子だ」
有耶無耶のままに誤魔化す事が出来ればよかったんだけど、「教官の弟子か?」という直接的な質問の為に、嘘をつく事は出来ないと判断した教官の答えが大問題となったのだ。
「はっ?なんでこんな奴が直弟子なんだよっ!?」
「えっ!?若って弟子とるの……?」
「なんで私じゃダメなの?ねぇ?なんであんた、どうやってなったの?」
「風間さん、冗談だよな」
「お会いする事さえ、この年に1回くらいしか許されてないのに……」
等など……
教官が言っていた通り、若……ブフッ……ダメだ、若って何度も言われると、おっさんクソ忍者に似合わなさ過ぎて笑えてくる。
大人気なのは間違いなさそうだけど。
「てめぇっ!なんで笑ってんだよっ」
おうっ……
また顔に出てしまっていたいたようだ。
それもこれも、若が悪い、うん、若が……ブフッ。
痛っ!
教官に頭叩かれた。
「ここで騒ぐな、若が直弟子にした事に間違いはない」
教官の叱る声が響いたけど、なかなかざわめきが収まらない。それどころか、一部では泣いたりし始めた女の子もいる模様。
……これ、どうすんの?
「何事だっ!各自割り当てられた部屋で、夕食まで待機のはずだぞっ」
壮年のイカついハゲで着物姿のおっさんが階段上から現れて、怒鳴り声を上げた。
それでもなかなかざわめきが収まらない。口々に「こいつが」とか「納得出来ない」とか言っている。
「何事かと聞いておるっ!風間っ、答えろっ!」
「はっ、ここにおります横川の師匠を問われたために答えましたところ、納得出来ないと……」
「おうっ、そいつか……あい、わかった。ここで声を上げておる者は皆、若のご判断に異がある者と捉えてよいかっ?」
「い、いえ……そう言うわけでは」
「ならば散れっ」
ハゲの人は偉いのかな?
教官も敬語になってるし、周りで騒いでいた人たちも何人かは明らかに"しまった"っていう顔をしているし。
ってか、なんであのハゲの人は、旅館内なのに腰に刀差してるんだろ……ヤバすぎだろ。もしかしてくみおさって、組の長……つまり
そうやって考えると、若というのも、若頭の略とかじゃ……
ヤベー、とんでもない所に連行された……
普段心の中で”クソ忍者”呼ばわりしているのがバレて、今日ここで最後の晩餐的な食事をとらせた後に、簀巻きにして海に沈められるのかな……?
「散れっ散らんかっ、散らぬというのであれば、翻意ありと見なすっ」
わかる、散って欲しいのは俺もだし、ありがたい。
だけど、刀の柄に手をかけちゃダメだと思うんだ。ダンジョン溢れる世界になったとはいえ、日本では決められた施設及びダンジョン内以外では、有事以外での武器の使用は認められていないからね。
でも効果は絶大だったみたいだ、蜘蛛の子を散らすかのように、騒いでいた人たちは消えて行った……みんな俺を1回睨んでからだけどね。唯一秋田さんだけは、ペコりと頭を下げて行った。
「横川と言ったか、若から話は聞いておる、将来有望な者だとな。俺は山岡、一応武術班担当
武闘派
うん、納得の風貌と威厳、イメージ通りだよね。
「横川一太です、よろしくお願いします」
「おうっ、今日は慰労会だ、気楽に楽しんでくれ。ではまた後でな……っと風間もな」
「はっ!事態の収拾、お手数をおかけ致しました」
本当はよろしくしたくないけどね、正直もう帰りたい。
メロン食べさせて貰ったし、慰労と言うのならもう十分です。
「もう17時か、とりあえず部屋に行くぞ。お前の部屋は俺と同じだ」
「2人だけです?」
「いや、あと2人いる」
「もう嫌な予感しかしないんですけど?」
「それは大丈夫だ、2人ともお前は会った事あるはずだしな」
会った事がある人?
そんなの限られて来るんだが……思い当たるとしたら、以前俺たちパーティーを付けていた探索者さんくらいしかいない。あとは若か?……いや、それはないな、もしそうだったら、先程の様子から見て、確実に暗殺される事と間違いない。
「ここだ、入れっ」
色々考えている内に、部屋へと到着してしまったようだ。
覚悟を決めて中に入ると、そこに居たのは予想通りの探索者の人と……どっかで見たけど、誰だか分からない中年男性だった。
「俺を覚えているか?」
「あっ、はい。以前伊東たちパーティーとの依頼の際に、監視されていた方ですよね?」
「そうだ、あの時は名乗らなかったが、山岡だ、よろしくな」
山岡?
ついさっきも同じ名前を聞いたぞ?
「もしかして山岡さんって……あのハ……組長の関係者ですか?」
危ねぇ〜ついハゲって言っちゃいそうになっちゃったよ。
「んっ?親父に会ったのか?」
「ああ、先程玄関でこれが若の直弟子だとバレて、大騒ぎになってな。そこに通りかかられた」
「あぁ〜そういう事か。そうだ、あのハゲの息子だ。まぁ11男だし、妾の子だけどな。それとあれは本人曰く、ハゲではなくて自ら剃っているスキンヘッドらしいから、本人にハゲとか言うと殴られるから気を付けろよ」
妾!?11男!?
あのハゲ……って言っちゃいけないんだっけ?……まぁ心の内ならいいか、あのハゲどんだけ絶倫なんだよ。
法律的には重婚は禁じられているけれど、過去の戦争やダンジョンのせいで、男が圧倒的に少ない時期があった事もあって、妾とかはほぼ公然の者として認められている。まぁ今は男女平等とかで、お金持ちの女性が複数の男性を囲う事も、ほぼ黙認されているけれどね。
男の夢だよね!ハーレム!!
何もせず囲われるだけなのも、ちょっといいなとは思うけれど……あれはイケメンに限るってやつだし。
「おい、何を考えているかは何となくわかるが、帰ってこい」
「言っておくが、複数の女を囲うのは大変だぞ?親父は5人ほど妾がいるが、刺された事もあったしな」
刺されるのは嫌だな、うん。
それと俺は如月先輩一筋だからねっ!妾とかとんでもない話だよ……
まぁ?もしどうしてもと言う女子がいるなら考えないでもないけれど。
「えっと、僕は覚えていないかな?」
もう1人の人にそう言われて、マジマジと見てみる……うーん、どっかで見た事は確実だけれど、わからん。
「最初のステータス確認の時に栄ダンジョンで会ったよ」
「あっ!31万円くれた人だ」
「はははっ、僕があげたわけじゃないけれどね、国の決まりだし。まぁでも合ってるよ、改めて高木だよ、よろしくね」
正直名前なんて覚えていなかったよ、その後のことが強烈過ぎて……そういや坊ちゃん若狭はどうしているんだろう、草履暖めているのかな?
っていうか、ここにいるのは全員探索者協会関係者だ。
一全流とやらは、なんなんだ?
「探索者協会と、このクラン?は関係あるんです?」
「クラン関係者の全員が全員、シーカー系職業が出るわけではないし、シーカーとしてダンジョンに潜るわけではないからね。僕のように探索者協会で働く者もいるし、風間さんや山岡くんみたい能力はあるけれど協会で働く者もいるんだよ」
まぁそう言われたらそうか。
「今回僕がステータスチェックをしたわけだけれど、もう1人いたでしょ?あれは伊賀流の人だしね。それで、将来有望そうな職業という事で本家に連絡をしたところ、指導者という形で送り込まれて来たんだ、まぁまさか若がお見えになるとは思ってもいなかったけれど」
んっ?
伊賀流?どういう事だ?
そう言えば、忍者って本来情報収集とかを得意としてたんだっけ?
「わけがわからないって顔をしているね。うちだけではなく、伊賀や甲賀、風魔や戸隠、大企業関係者など様々な人間が探索者協会にはいるんだ、情報収集の為にね。いくらnewjobだからといっても、施設予約や指導者の派遣とか、妙にスムーズだと、出来すぎているなとは思わなかった?」
確かにそれは思っていた。
「様子を見ていて、友人2人が運のいい事に、これまた稀少jobだったのも良かった。ただまぁ考える事は伊賀も同じだったらしく、友人2人は伊賀に取られちゃったけどね、うちの薬師や鍛冶師はあそこまでのレベルを用意出来なかったし」
あぁ、納得した。
メールの文面が、明らかにアマとキムを誘って来いよっていう感じだったのは、そういう事だったのね。それと、その日のうちに指導者3人が来たのも、それが世界的だとか日本のTOPシーカーだとか、そうなったのも理解出来た。
俺たちはパイだった訳だ、流派同士の。
そして勝手に俺たちはクラン入りが決定しているという事なのね……
ってか、この現代において、忍者の流派がそこまで存在していて、鎬を削っているとは知らなかったよ。
「ちなみにだが、お前のjobとスキル内容は、高木と俺と若、それと組長たちしか未だ知らされていないから、勝手にバラすなよ」
「如月先輩はどこのクランなんです?」
「あれはどこにも属していない、それどころかクランも企業も手を出せない存在だ。フォロー要員は許されているが、ポジション争いも激しいぞ、うちも秋田を送り込めてはいるが……お前惚れているらしいが、大変だぞ」
もし、このクランを脱退したいとか言ったら、スキルスクロールの件もあるし、先程の様子を考えると、無理だろう、大変な事になるのは目に見えている。
それにもし脱退出来たとしても、先程の話からすると、他のクランからの声も激しそうだ。
勝手に俺たちをモノ扱いして、クラン入りさせられているのは納得出来ないけど、秋田さんがいる事だし、せいぜい如月先輩に近付くために利用させて貰うとしよう。
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