第31話

すみれ達夫婦がセックスレスであることが、健吾には理解出来なかった。


「ねぇ、紫?すみれさんと旦那さんは、何で結婚したの?付き合ってたんじゃないの?」


透真は紫に小さな声で聞いた。


透真はすみれが悠一郎と上手くいっていないことを聞いて、不謹慎だけど嬉しいと思ってしまった。


「付き合ってたというか・・・」


紫はすみれと悠一郎が出会った経緯を話しだした。



すみれの家族は日向を失ってから、とても静かに暮らすようになった。


すみれの母親はもともと花が好きで、 父親が仕事で不在がちな家に花を飾り、子供達が寂しく感じないように明るく楽しく暮らすようにしていたが、日向が突然死んだことにより生きる気力を失ってしまった。


すみれの父親は、早く家族で暮らしたいと思ってはいたものの、すぐには仕事の都合がつかず、単身赴任をしたままの生活が3年ほど続いた。


連休があったり、ゴールデンウィークや正月などの連休には帰ってきてはいたが、時々しか顔を合わせない夫婦の関係はどんどんとぎこちないものになっていった。


自分の妻にできだけ明るく接しよう、元気づけようと頑張る父親は行動は、そばで見ていたすみれには空回りしているだけのように見えた。


うまく気持ちが噛み合わない夫婦はの溝はどんどん深まり、すみれの父親は自分の家族とどう接していけばいいのか、わからなくなった。


父親も色々悩んだのだろう、家には帰ってくるものの、家にいても母親やすみれとあまり話さなくなった。


それはただ家族が負った心の傷を、時間がか癒してくれるのを待つのが良いと父親は考えたのかもしれない。


そんな両親の姿を見ていたすみれは、「自分がしっかりしなといけない、日向のためにも自分がお母さんを元気にしてあげないといけない」と思うようになった。


すみれは母親を元気にしたくて、元々好きだった美術系の大学に進学し、色彩心理学やカラーセラピーなど、色が人に与える影響について勉強した。


大学に通い始めてしばらくした頃、花屋でアルバイトを始めた。


そのアルバイト先である花屋が、今もすみれが働くあの花屋だった。


すみれがアルバイトを始めた頃の花屋は、店長とその妻である百合子の二人で切り盛りしていた。


すみれは百合子にとても気に入られ、大学生のアルバイトであるすみれに花屋に必要な知識をどんどん教えていった。


フローリストだった百合子はカルチャーセンターで開催する教室や、ワークショップなどは大学の勉強に差し支えない時は全てすみれをアシスタントとして同行させていた。


また技術のレベルに応じて、アレンジメントやブーケを作るレッスンを受けさせ、すみれは百合子の右腕のようになっていった。


すみれが大学を卒業する少し前に、百合子は結婚式やイベントなどの会場を花で装飾する会社を立ち上げた。


すみれは大学を卒業すると、百合子の会社に就職した。


就職してすぐはフローリストの見習いとして百合子の下で修行し、2年ほど経った頃から小さな装飾や、リメイクなどを任されるようになった。

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