第23話

花屋に入ってきた女性客はスーツを着ており、少し気の強そうな印象の女だった。


女は店の中を一通り見回した後、すみれに目を向け、


「麻生さん・・・って方、いらっしゃいますか?」


と言った。


「麻生は私ですが。」


すみれは真っ直ぐに女の顔を見て笑顔で言った。


透真は自分は邪魔になるかなと思ってその場から少し離れた。


女は自分たちから離れた透真の方を少し見てから、すみれの全身をチェックするように頭から足元まで見た。


そしてすみれを軽くバカにしたように鼻で笑い、


「麻生悠一郎さんの・・・奥様、ですよね?」


と確認した。


「そうですが・・・あの、お客様・・・?」


すみれは花を買いに来た客ではないと気が付きどう対応していいか迷って、すぐに言葉が出てこなかった。


「いつ別れてくれますか?」


女は唐突に切り出した。


すみれは店内で話すこともできないし、他に来客があっても困るのでどうしようかと思った。


すみれは店の奥のテーブルスペースに何も置いていないことを確認し、そこに女を案内し、しばらく待つように言った。


女をテーブルスペースに案内したすみれは事務所に店長を呼びに行った。


透真は奥のテーブルスペースにい女の方を見た。


女はすみれが入って行った事務所の方を見ていた。


女は気を抜く様子は一切なく、いつでもすみれに食ってかかりそうな、攻撃的な目をしていた。


程なくしてすみれは店長と一緒に事務所から出てきた。


少し事の成り行きを話していたのだろう。


店に出て来た店長も、女の方をチラリと見てから、「ここで話したら?彼女が気にならないなら。」とすみれに言っていた。


すみれは店長に


「すみません、じゃあ。」


と言って、女の待つテーブルスペースに行った。


透真のところまでは二人の話し声はほとんど聞こえなかった。


何も知らない人が女とすみれの姿を見ると、仕事の打ち合わせをしているように見えるだろう。


店長は透真に声をかけた。


「ノアくん、すみれちゃんが今日の分の花、出来てるって。」


すみれと女の姿をぼんやり眺めたいた透真は店長の声で我に返った。


「すみれさん、大丈夫なんですか?なんか、ただのお客さんじゃないみたいですね・・・」


透真は心配そうに店長に聞いた。


店長も詳しい事は聞いておらず、わからないと言った。


そして透真に心配しないようにと気遣って言った。


すみれと女の様子が気になっていたが、透真はバーに出勤しなくてはいけない時間になり、すみれが作った花を受け取って店を出た。


透真は花屋を出てすぐに、電話をかけた。

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