第15話

すみれ達が通された部屋のベッドには白い布がかけられていた。


「・・・・っっっ・・・」


すみれの横で母親が息を呑み、カタカタと震え出した。


すみれは母親の反応がすぐには理解できなかった。


白布がかけられたベッドの脇に、病院て働いている人間ではなさそうな、スーツを着た男が立っていた。 


「桐島日向さんのご家族ですか?」


スーツの男がすみれ達を見て聞いた。


すみれの母親はカタカタと震えながら、首を盾に振ることしかできなかった。


すみれは急に怖くなって、母親の腕につかまった。


「ご確認いただけますか。」


スーツの男は落ち着いた声で言い、ゆっくりと白い布の一部をめくった。


めくられた布の下に少し青白い日向が眠っていた。


「塾の前の横断歩道を渡ろうとしていた時に、バイクが急停止しようとして、濡れたマンホールでスリップしたようで・・・病院に運ばれて時には、もう・・・」


スーツの男は警察の人間で、事故の内容を少しだけ説明した。


だが、細かい事故の内容ははっきりしておらず、とても大雑把な説明だった。


すみれとすみれの母親は、日向のいる部屋から一旦外に出て、近くにある椅子に腰を下ろした。


すみれの母親はすみれの横で泣いていた。


すみれは悲しいはずなのに、日向の身に起こった事が信じられず、涙が出てこなかった。


どこか他人事のような、自分が出ている映画を観ているような感覚だった。


二人はそのまま椅子に座って、いつ到着するかわからない父親の帰りを待った。




「私達が知ってるのは、これくらい。すみれもおじさんが病院に来た後のことはあんまり覚えてないみたい。」


紫は透真に日向の事故のことで知っていることを話した。


透真は黙って紫の話を聞いていた。


「すみれさん、弟と仲良かったんだね。」


透真はすみれと日向の話を聞いて、正直どう言っていいかわからなかった。


家族を失う悲しみや苦しみも経験したことがなく、兄弟のいない透真には、すみれの気持ちを理解するのは難しかった。


ただすみれと仲が良く、すみれに愛されていた日向を羨ましく思った。


「正直、俺らもすみれの気持ちを全て理解しているわけじゃない。」


健吾は少し切なそうに言った。

 

そんな健吾を見て、紫が続けて言った。


「私達はただ、すみれと一緒にいることしかできないのよ。すみれの話を聞いて、一緒に笑ってあげるしか、私たちにはできないの。」


透真は心の底から、相手を元気にしたい、一緒に居たいと思い合える友達がいる健吾と紫が羨ましく、自分もその中の一人になりたいと思った。

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